
想いから生まれた「SmaChari」
Hondaは、総合モビリティカンパニーとして、既存の枠にとらわれることなく、心がワクワクするような商品やサービスの創造を追求し続けます。一人ひとりの創造力から生まれる夢のあるモビリティや多様なサービスによって「環境負荷ゼロ」「交通事故ゼロ」を実現するためにさまざまな領域において取り組んでいます。
その一つが、クルマやバイクの免許を持たない、若年層をはじめとして、多くの方が活用されている、最も身近なモビリティである自転車。「高校生の自転車通学をより快適にしてあげたい」、「多くの方に安全な移動手段を提供したい」という想いから生まれたSmaChari(スマチャリ)です。
最も身近なモビリティ「自転車」を取り巻く課題
高校生をはじめとした10代の自転車利用数は全年代の中でも圧倒的に多いのに対し、電動アシスト自転車の利用率は非常に低く、その理由には、電動アシスト自転車のモデルが限られて好みの車種が選べないことや、自転車本体の価格が高額なため盗難の可能性もあり、購入に踏み切れないといったことが挙げられます。
また、自転車乗車時における交通事故死傷者数は、全年齢の平均に対して高校生の年代(16~18歳)は約5倍と非常に高く、そのうち半数を通学中の事故が占めています※1。
加えて、ECサイトの拡大などにより、道路交通法(以下「道交法」という)に適合していない電動アシスト自転車が流通し、摘発事例が発生するなど、電動アシスト自転車に対して国や行政を含めた社会全体の安心・安全ニーズが高まっています。
※1 国土交通省ホームページ「自転車利用環境の整備」内、令和元年 年齢層別人口10万人当たり交通事故死傷者数データ
「後付け電動アシスト化※2」と「コネクテッド化」で、自転車を「進化」させる
SmaChariは、自転車フレームの大幅な加工なく容易に取り付けられる「後付け電動アシスト化システム」と「コネクテッド機能」を採用することで、道交法に準拠した形で既製の自転車を電動アシスト化することが可能です。
後付け電動アシストを実現するために、SmaChariのアシスト制御には新しい手法が求められました。自転車はクランク回転軸のボトムブラケットが交換可能な構造であり、SmaChariのモーターもこのボトムブラケットに差し替えできる形状になっており、自転車のフレームに大幅な改造をすることなく取り付けが可能です。また、バッテリーと制御ユニットも、ドリンクボトルケージの留め穴に取り付ける事ができます。このため、SmaChariのシステムは多くの自転車に後付けすることが出来ます。
電動アシストモーター取り付けの様子

※2 ワイズロードの既製自転車2車種にSmaChariを後付け搭載し販売中
道交法に適合できる、後付け電動アシストシステムを開発
日本国内で後付け電動アシストが実現できなかった最大の理由は、道交法で定められたアシスト比率を保証することが難しかったためです。SmaChariは、どんな自転車に取り付けても道交法に準拠できるアシスト比率制御技術を構築することにより実現することが出来ました。このため、SmaChariシステムを採用した自転車は、電動アシスト自転車として型式認定を取得することができます。
道交法に準拠した電動アシスト制御を実現する技術のひとつが、ギヤ比推定機能になります。
ギヤ比推定機能の概要

これは、車輪で測定された速度と、ペダル(クランク)の回転速度(ケイデンス)を比較することにより、その自転車固有のギヤ比を自動算出し、適切なアシスト出力に調整するとともに、道交法を逸脱する可能性がある場合は、警告を出しアシストを停止する機能です。
Honda独自の快適アシスト制御を採用
SmaChariは、どんな自転車に、どんな人が乗っても、快適な電動アシストの乗り味を提供するために、次の3つの制御技術を採用しています。
スムーズなアシスト制御
多くの電動アシスト自転車は、アシストを開始する判断として速度とケイデンス、ペダルトルク(ペダルを踏む力)を利用しています。しかし、ペダルトルクのみをもとにアシスト開始判定をすると、止まっているときにペダルを踏むだけでアシストが始まってしまい、また、速度やケイデンスを使うと、走り出してからアシストが始まるまでの時間差で違和感を感じる場合があります。
そこでSmaChariの開発に当たっては、自転車が遭遇しうる全ての状況を洗い出し、各状況でアシストをすべきか否かを判定。それらを総合し、どのような状況でも的確なアシスト許可判断が出来るシンプルな論理式(独自のアシスト判定アルゴリズム)を作り上げました。
急発進抑制制御のロジック

この制御を実施するために、従来の電動アシスト自転車に搭載されているセンサーに加えて、新たに加速度センサーを搭載しました。止まっているときの不要なアシストを防ぎつつ、走り出しと同時に機敏なアシスト開始が可能となり、漕ぎだし時の違和感を大幅に改善させました。
4段階のパワーレベルに加え、4段階のレスポンスレベルが設定可能
電動アシスト自転車は、各モデルの個性に応じたアシスト特性を備えており、ユーザーにおいても漕ぎ出しから強力なアシスト力を好む方や、逆に漕ぎ出しの飛び出し感が怖いと感じる方もいます。そこでSmaChariでは、さまざまなタイプの自転車、すべてのユーザーに快適な乗り味の提供を目指しました。
レスポンスレベルを上げると、ペダルの踏み込みと同時にダイレクトにアシスト力が立ち上がり、キビキビとしたアシストが楽しめる一方、レスポンスレベルを下げると、ペダルを踏んだ直後の飛び出し感を抑え、自然でマイルドな安心感あるアシストとなり、同じパワーレベルでも異なる乗り味を実現できます。
SmaChariのパワーレベル

SmaChariのレスポンスレベル

アシストレベル設定

運転状態に応じて自動でアシスト制御を最適化する、AIモード
SmaChariの操作はすべて、専用アプリがインストールされたスマートフォンで行います。
走行中は安全性を考慮してスマートフォンが操作できないように画面をロックし、停止中のみパワーやレスポンスの変更を行える設定としています。そこで、自転車の運転状態から最適なアシスト制御を自動で行う、SmaChariの独自制御技術、AIモードを開発しました。これにより、アプリを操作することなく、状況に応じて常に最適なアシストを実現。このAIモードの動作は、SmaChariの開発スタッフが自ら、2000kmにもおよぶテスト走行で磨き上げたもので、更に数十人に及ぶ様々な人に試作車を体験してもらい、多くの意見と指摘を受けて仕上げたもので、どんな方に乗って頂いても最適なアシストを提供できます。
AIモードをONにしておけば、走り出しや登り坂など強いアシスト力が欲しい場面ではパワーレベルを強くし、平地を一定速度で走るときはパワーレベルを下げるといった、場面に応じた最適なアシスト特性(パワーレベル/レスポンスレベル)の制御を自動で行います。また、人混みや狭い道、旋回中などには「徐行モード」になり、パワーレベルとレスポンスレベルを最低にして不用意な飛び出しを抑えるなど、きめ細かいアシスト特性の調整を自動で行います。
走行モードイメージ

アシスト設定(AIモード)

AIモード制御の一例

SmaChariアプリによるコネクテッド機能
SmaChariは、自転車をスマートフォンアプリとクラウドサーバーでつなげ、従来の自転車の概念を超えるコネクテッド機能を提供します。アカウント登録をし、車両購入時に車両情報をアカウントに紐付ける※3ことで、ユーザー(所有者)と車両、位置情報を一元管理でき、あらゆる道路環境を走るモビリティとしての充実した安心機能や便利機能を実現しています。
ユーザーと車両を紐付けることで、アカウント認証したスマートフォンからのみ電源ONできる仕組みにでき、盗難防止などの機能が向上。位置情報も加わることで、自転車乗車中(走行中)のみ、フレンド登録されたユーザーに共有でき、「家族の見守り」や「待ち合わせ状況の把握」に活用できるほか、走行ログ(走行日・走行ルート・消費カロリー等)がクラウドサーバーに記録され、csv形式でダウンロードすることも可能です。
さらに、ユーザー情報と紐付けた車両情報を継続して管理できるため、購入後もメリットを提供し続けられます。例えば、もしも故障やエラーを検知した場合、ユーザーや自転車販売店に通知されます。自転車販売店は、システム上で車両組立・修理時の履歴などの車両データを管理でき、来店したユーザーに対して、車両データをもとに定期点検などの提案が行えます。(自転車本体の不具合など、SmaChariのシステムが検知できない不具合は対象外)
また今後、新たな機能追加やバージョンアップが行われた場合、スマホアプリなどと同様にオンラインでご購入済みのSmaChariシステムもアップデートが可能。購入後もSmaChariは「進化」を続けます。
※3 SmaChari対応自転車を購入した販売店で実施
アカウント認証機能

スマートフォン アプリ画面
「ツナガル、ヒロガル、進化する。」SmaChariの便利と安心をすべての人に
SmaChariは、適用できる車種を拡大してより多くの方に電動アシストの便利さや快適さをお届けするだけでなく、将来は「お店で選んだ自転車や、今自分で乗っている自転車をSmaChari化」できる世界も目指していきます。
また、近年進化の著しい自動車の安全技術に頼るだけでなく、自転車側から安全技術の進化をSmaChariで実現し、交通事故ゼロ社会の実現に貢献していきたいと思っています。これからのSmaChariの「進化」にも、是非ご期待ください。