1986年にデビューしたXL600V TRANSALPは、“市街地から高速道路、そして峠道から未舗装路までオールラウンドで楽しめ、Hondaのデュアルパーパスとして初めて高速走行時の快適性を高めるフェアリングを採用することで、雄大なスケールのロングツーリングを快適に楽しめる中型スポーツバイク”として親しまれました。
その後、2000年にはXL650V TRANSALP、2008年にはXL700V TRANSALPを登場させ、魅力を熟成。歴代のTRANSALPに共通する魅力は、軽量コンパクトな車体を採用することで気楽に乗れ、快適性の高い大型フェアリングを備え、走破性の高い大径のスポークホイールを装備し、舗装路も未舗装路も快適なツーリング性能を持ち合わせていることでした。
今回のXL750 TRANSALPは、市街地から高速道路、峠道から未舗装路まで、オールラウンドで、雄大なスケールのロングツーリングを快適に楽しめる性能を追求。これまで以上に自由で冒険心のあるモーターサイクルライフを楽しんでいただくことを目指しました。
開発のねらい
日常から世界一周まで、どこまでも行ける
ジャストサイズオールラウンダー
開発チームはXL750 TRANSALPの開発コンセプトを「New generation TRANSALP 日常から世界一周まで、どこまでも行けるジャストサイズオールラウンダー」とし、歴代のTRANSALPが引き継いできた、「気楽に乗れる扱いやすさ」と「舗装路も未舗装路も快適なツーリング性能」を高い次元でバランスさせることが重要と考えました。
「日常短距離での扱いやすさと、休日の長距離、高速走行時の快適性の両立」、「舗装路での軽快性と未舗装路の走破性の両立」、「冒険心を掻き立てる豊富で充実した装備」を開発のポイントとし、「雄大なスケールのロングツーリングを快適に楽しみ大切な休日を豊かにする」 夢のような時間を求める人にとって頼れる相棒のような存在となるモデルを目指しました。
スタイリング
親しみやすく頼れるタフネスデザイン
日常の街乗りから週末のレジャーライドといった幅広い使い勝手の中で冒険心を演出するために、FRIENDLINESS & TOUGHNESSをキーワードに、親しみやすく頼れるタフネスデザインを追求しました。
威風堂々としたスタイルに、角張らないタフなデザインで肩肘張らず身軽に乗れるジャストサイズオールラウンダーとし、幅広いユーザーに受け入れられるデザインを目指しました。
ウインドプロテクションと空力性能を高次元でバランスさせた、高速道路での快適なフラッシュサーフェイスの大型フェアリング。最低地上高(212mm)によるオフロードでの走破性を備え、各部にXL750 TRANSALPを感じさせるディテールを備えることで冒険心を掻き立てるアドベンチャースタイルを具現化しました。
ヘッドライト、フロントまわり
夜間視認性を確保しながらコンパクトなデザインを実現したヘッドライトを起点に、インテグレートさせたスクリーンにより、精悍な顔周りの表現とウインドプロテクション、そして空力性能をバランスさせた一体感のあるフロント周りデザインとしました。さらにフロント周りを両サイドから包み込む大型のシュラウドを組み合わせることにより、タフさを強調したアドベンチャースタイルを具現化しています。
テールランプ、リアまわり
機能的で存在感のある専用のアルミリアキャリヤを中心に、立体的な光を演出するLEDテールランプを車体全体とバランス。アドベンチャースタイルに相応しいタフなリヤまわりデザインとしました。
カラーバリエーション
カラーバリエーションは、XL750 TRANSALPの持つスタイルを引き立てる3色を用意しました。※EICMA2022で発表されたモデル情報を元に構成しております。
※画像は全て海外仕様車(試作車)です。市販される量産車とは仕様が異なる場合がございます。
走り・パワーユニット
日常の扱いやすさとパルス感のある
エキサイティングな吹け上がりを両立
XL750 TRANSALPの開発のポイント「New generation TRANSALP日常から世界一周まで、どこまでも行けるジャストサイズオールラウンダー」を、燃費・エミッション・軽量化とともに実現しました。形式・排気量・ボア/ストローク等の基本諸元から、部品詳細に至るまでCAE、CFD等の最新の数値計算技術を駆使し、仕様と形状の最適化を行い、完全新設計のエンジンを開発しました。
- ● 新開発755cc 270°クランク直列2気筒エンジンは、常用域では扱いやすいトルク感とパルス感のある出力特性と、高回転域でのエキサイティングな吹け上がり、軽快かつパワフルな出力特性を目指した諸元を採用しました。
- ● 吸気レイアウトはダウンドラフト構造とし、コンパクトでスムーズな吸気レイアウトを目指しました。
- ● CB750 HORNETと同じ新機構の渦ダクト(Vortex Air Flow Duct)を採用し、スロットル開け口から高回転域まで全域ダイレクトなドライバビリティー特性としました。
- ● エンジンはアイドリングからピーク出力回転にかけて谷のない上昇フィーリングを提供する出力特性とし、吸気経路を構成する外装部品の形状最適化や大径タイヤ採用によるロングレシオ化、TBW設定により、TRANSALPらしい低回転の粘り強さや扱いやすさを高めるとともに、シュラウドを含めたダクト管長をより長くとり、かつボリュームを大きくとることでTRANSALPらしい低中速のパルス感・力感を向上させた出力特性を実現しました。
- ● 450kPaの高燃圧燃料ポンプと微粒化インジェクターを採用し、スロットル全閉から中開度域(3,000~8,000rpmn付近)のスロットルレスポンスを向上させ、ワインディングでのキビキビした走りを提供します。
- ● 特に7,000rpm付近からのひときわ刺激的な吹け上がり感は、大きな魅力の一つです。スポーティーでパルス感のある吸排気音を演出し、さらなるエキサイトメントを提供します。
軽量コンパクト高出力エンジンのために
市街地から高速道路、峠道から未舗装路まで、オールラウンドで雄大なスケールを快適に楽しめるモデルを具現化するために、エンジンは、軽量・コンパクト・高出力であることが必要となります。その3要素を、高次元でバランスさせるために、以下の技術を実現させました。
- ① プライマリードライブギアで、フロント/リア2つのバランサードライブギアの機能を兼用することで軽量・コンパクト化を実現。
- ② 2次振動をキャンセルできる270°クランクを採用。バランサー基本配置を、軽量・コンパクトなフロントバランサー1ウェイト、リアバランサー1ウェイトとしながらも、配置と位相を工夫することで1次振動と偶力をキャンセルできる構造を実現。
- ③ CRF450RやCRF1100等で実績のあるユニカム方式を採用。1カム化によりバルブ挟み角を小さくし燃焼効率を高め、スロットルボディーからインテークポートまでを直線的にレイアウトすることで出力向上に貢献するとともに、軽量・コンパクトなレイアウトを実現しつつフリクションも低減。
- ④ ウォーターポンプをACGカバー内蔵とし、軽量化およびコンパクト化を実施。
- ⑤ CBR1000RR-RやCRF450R、F1等に使用されている熊本製作所内製のNi-SiCメッキを採用。フリクションの低減とピストンの小型化およびクランクシャフトの軽量化を実現。
- ⑥ 車体左右に配置した新採用の渦ダクト(Vortex Air Flow Duct)は吸入気流の速度を高めることで低中速領域の吸入効率を向上させ、力強いトルクフィーリングを実現。加えてエアクリーナー底面に3つめのダクトを設定し、スロットル急開時のレスポンスを向上。
- ⑦ CBR1000RR-Rと同じ高燃圧(450kPa)を採用。高燃圧化による燃焼特性の向上で、低中域のスロットルレスポンスと力強い加速を実現。
- ⑧ クラッチ操作の負担を軽減するアシスト機能と、シフトダウン時の急激なエンジンブレーキによるショックを緩和するスリッパー機能を備えたアシスト&スリッパークラッチを採用。
- ⑨ FLS(F.C.C. LEANING SEGMENT)を採用し、クラッチ引き摺りトルクを従来比30%軽減したことで、クラッチ切れ性能が向上し、軽快なチェンジフィーリングを実現。クラッチディスクへの給油量増加が可能となり、クラッチの高い耐久性と性能をバランスさせました。
* 「アシスト&スリッパー」「FLS」は株式会社エフ・シー・シーの登録商標です。
ライディングモード切替
開発コンセプトの実現のために、「日常短距離での扱いやすさと、休日長距離、高速走行時の快適性の両立」「舗装路での軽快性と未舗装路の走破性の両立」を追求しました。
スロットルバイワイヤー(TBW)を採用し、パワー / エンジンブレーキ / HSTC※ / ABSの制御を連動して組み合わせた4つのモードと、自分の好みで調整できる1つのモードの計5つのモードを用意しました。
ハンドリング・走破性・快適性
安定性と軽快性を両立させ
オールラウンドでの扱いやすさを追求
フレーム
「日常短距離での扱いやすさと、休日の長距離、高速走行時の快適性の両立」「舗装路での軽快性と長距離での安定性と未舗装路の走破性の両立」を達成するために、構造/レイアウトの最適化と各部パーツの軽量化を行い、形式はスチールダイヤモンド(リアフレーム一体型)を採用しました。
フレームは、1:スティフナーの薄肉化 2:メイン/ダウンパイプの薄肉化 3:クッションマウントレイアウトの最適化 4:ピボット形状の最適化 5:高張力鋼管を用いたシートレールの薄肉化を行い、重量は18.3kgまで軽量化しました。(CB500X:20.3kg、NC750X:22.2kg)
使い勝手/ライディングポジション
細い路地や林道でも気軽にUターンできる車格と取り回し性を実現しています(整備重量208kg、ハンドル切れ角42°、最小円半径2.6m)。長距離ツーリングしたくなるタンデム快適性、不整地でのスタンディングもしっくりくる自由度のあるライディングポジションを設定しました。
ハンドリング
日常のコミューティングからオン/オフロードツーリングまでBEST TOTAL BALANCEを目指し、様々な路面環境でも軽快かつ快適に走れるように、ホイールトラベル(フロント200㎜/リア190㎜)・ホイールベース(1,561mm)・キャスター角(27°)・トレール(110.6mm)を設定しました。旅先で見かけたダートに寄り道したくなるオフロードでの軽快性と、最低地上高(212㎜)とすることで、荒れた路面も気にせずに走れる走破性を実現しています。
フロント足まわり
オンロード、オフロードなど、様々な環境でニュートラルなハンドリングとオフロードでの走破性を実現するために、Showa(日立Astemo)43mm SFF-CA※ ストローク200mm倒立フロントフォークと軽量化と強度・剛性バランスの最適化を図ったアルミ鍛造ボトムブリッジ、アルミ鋳造トップブリッジを採用しました。※「SFF-CA」はSHOWA(日立Astemo株式会社)の登録商標です。
リア足まわり
ストローク190mmモノショックダンパー、プロリンクアルミハイブリットスイングアームを採用。ばね下重量低減による、快適性と軽快な操縦特性を実現。剛性バランスの最適化を図り、旋回性能と安定性をあわせ持つ、操る喜びに満ちた乗り味を実現しています。
ブレーキ
ブレーキはフロントにピンスライド2ポットキャリパー、Φ310mmのダブルディスクを採用し、リアブレーキは1ポットキャリパーとΦ256mmのシングルディスクを採用しました。リニアな効力特性で制動時の穏やかな車体挙動を実現し、舗装路から未舗装路まで安心感のあるライディングを楽しむことができます。
防風性能
・スクリーン高さ:防風性能と前方視界の両立を実現。
・スクリーン幅:コンパクトな形状で、風の巻き込みを減らした快適な防風性能を実現。
軽快性
・低速での軽快性と高速での安定性を実現。
アクセサリーフェアリングの効果
・Tall Wind Screen:高速クルージング時の頭の揺れや風切り音を低減し、快適性を向上。
・Deflector A:肩周りの防風性能を向上、衣服のバタつきを抑制。
安心・充実の装備と用品
充実の装備 メーターまわり
豊富な情報を見やすく、直感的に扱いやすい、5.0インチTFT。フルカラー液晶のマルチインフォメーションディスプレーを採用しました。明るく見やすいTFTパネルは、ライディングに集中しつつも、画面からの情報を的確に認識することができます。
オートキャンセルウインカー
車線変更時や右左折終了後に自動的にウィンカー作動を停止させるHonda独自のシステムです。前後ホイールの車輪速センサーが旋回時の前後輪軌跡の違いによる車輪速差を検知することで、旋回、直進などの状態を判別。車線変更や右左折の完了をボディーコントロールユニットに伝えウィンカーを自動的にキャンセルします。
エマージェンシーストップシグナル
急制動をいち早く後続車に伝える機能であるエマージェンシーストップシグナルを採用しています。ABSモジュレーターが走行中に急制動を判定すると、その情報を受け取ったウィンカーリレーがハザードランプを高速点滅させることで後続車などに注意を促します。※エマージェンシーストップシグナルは急ブレーキをいち早く後続車に伝えるシステムです。運転する時は不必要な急ブレーキを避け、安全運転をお願いします。
■ Hondaスマートフォンボイスコントロールシステム概念図
Hondaスマートフォンボイスコントロールシステム(HSVCS)
スマートフォンは現在、“利便性”から“仲間を拡げつながる楽しみ”まで、ユーザーのニーズに沿ってパーソナライズされた情報端末となっています。そして、その世界的な普及に伴い、情報の受け取りやすさや即時性のアップデートが繰り返され、人が移動する際にもそれら情報へのアクセスが必要とされる場面が増えています。
Hondaではこのような現状と今後を見通し、ユーザー自身によって最適化されたスマートフォンの情報リソースをそのまま活用できるシステムとしてHSVCSを自社開発しました。購入に際してスマートフォン(OS:Android、iOS対応※:Bluetooth®4.2以降)にHSVCS専用のアプリケーションをダウンロード。車両とスマートフォンをBluetoothで接続し、音声入力に応答したヘッドセットからの音声ガイダンスに沿ってハンドル左手の4wayスイッチ※を操作することで、走行中ハンドルグリップから手を離すことなく、お手持ちのスマートフォンに搭載されている以下コンテンツの作動を可能としました。各情報はヘッドセットからの音声とシンプルなメーター画面表示によりユーザーに伝えられます。
[利用できる情報]
・ 通話 ・ ナビ ・ 音楽 ・ メッセージ送受信
GPSナビゲーションなどの長時間使用を想定し、USB Type-Cソケットを装備。このHSVCSによって、よりシームレスな情報のやり取りが可能となり、利便性に寄与しています。※iOS対応版は22年10月以降順次適応予定です。
■ Hondaスマートフォンボイスコントロールシステム概念図