ジョアン・オオルイ Joao Orui

スマートフォン向けアプリの開発を行うHondaグループ Drivemode, Inc.のエンジニア。2010年代半ばからHondaグループのHonda Innovations, Inc.とスマートフォン向けアプリの開発に携わる。現在、VP(ヴァイスプレジデント)として開発とマネジメントに携わる。このプロジェクトでは初期の開発設計にも携わっており、今は開発チームの支援も行っている。

西川 祐史

モビリティサービス事業本部コネクテッド戦略企画開発部のエンジニア。このプロジェクトでは、スマートフォンアプリの開発を担当。ハードウェアの開発を担当する二輪の開発部門とアプリの開発を担当するDrivemode, Inc.をつなぐ役割も担当し、アプリの仕様構築から検証まで一貫して開発を進めた。

小山内 拓也

二輪事業本部ものづくりセンター コンポーネント開発部電装開発課のエンジニア。プロジェクトの企画から携わり車両システム全般を設計。システムの基本となるBluetooth®️ユニットの開発も担当している。

バイク走行中もシンプルな操作でスマートフォンの機能を利用するために

—Honda RoadSyncとはどういう技術でしょうか?

西川:

スマートフォンとバイクをBluetooth®️で接続して、スマートフォンに入っているナビゲーション、電話、メッセージ、音楽を、運転操作を妨げることなく利用できるシステムで、Hondaとグループ会社のDrivemodeで共同開発した独自技術です。

ジョアン:

このシステムは2つの要素で構成されています。ひとつはスマートフォンアプリ。もうひとつはバイク側に搭載されているBluetooth®️を利用するコントロールシステムです。

小山内:

音声の受信と発話は、最近バイクに乗る方の間で広まってきているヘッドセットを使います。システムの操作は、ハンドルスイッチと音声で行います。

西川:

ハンドルスイッチで選択している機能が音声で読み上げられるので、ライダーは耳で聞いて今自分がどのような操作をしているのかがわかります。しかも、運転中によく使うアプリに限定していますから、とてもシンプルです。運転中に交通状況から視線を外すことなく快適にスマホ機能を利用することができると考えています。

—どのようなコンセプトで開発されましたか?

ジョアン:

コンセプトのひとつは、ユーザーが普段使い慣れているスマートフォンの機能を、そのまま使えるようにすること。もうひとつは、直感的なユーザーエクスペリエンスを提供することです。

西川:

運転中にスマートフォンを利用したいというニーズは年々高まっています。これまでHondaでは、大型モデルをメインにApple CarPlayや、Google Android Autoを商品化してきました。今回のシステムは、スマートフォンとともに移動する喜びを、より多くのお客様に提供していきたいという思いで、エントリーモデルを含む多くのモデルに適応できるシステムとしました。

徹底して使いやすくすることで、真に魅力的なシステムに

—開発でこだわったことは?

小山内:

お求め易いこと、シンプルであること、使いやすいことの3点です。シンプルというのは、構成部品自体がシンプル、その部品の中の設計もシンプル、スマートフォンアプリ上のインターフェイスもシンプルにしました。
操作面で特にこだわったのはレスポンスのよさです。今回、シリアル通信という通信手段でハンドルスイッチとBluetooth®️ユニットを繋げていますが、情報を大量に乗せてしまうと遅延が発生する可能性があります。そこで、設計を工夫することによって遅延を感じにくくし、サクサクと使いやすいインターフェイスを実現しました。

西川:

使いやすさにこだわりました。使いにくいと操作に注意を奪われてしまい、運転への集中力が低下してしまいます。今回、使いやすくするために、ユーザー体験をデザインするDrivemodeのUXデザイナーと、Hondaの世界各国のテストライダーのフィードバックを掛け合わせることで、どうすればより使いやすくなるかを徹底的に議論してシステムを構築しました。

ジョアン:

ひとつ一つのボタン操作には、必ず音声フィードバックがあります。何かしらの音声リアクションがあるので非常に使いやすくなっています。

西川:

このシステムの1番の特徴は音声による読み上げとフィードバックですね。どのメニューを選んでいて、次にどの様な操作が可能なのか、非常にわかりやすい。

ジョアン:

ぜひこのシステムを使ってより快適に走行してもらいたいと思っています。

操作系もアプリもすべてオリジナルで開発

—他の同様なアプリとの違いは?

小山内:

使いやすさが違うと思います。このシステムは、我々が設計したハンドルスイッチで我々が考えたユーザーインターフェイスのアプリケーションを操作することができますので、操作した結果を音声でフィードバックする反応速度などすべてに我々のノウハウが入っています。

西川:

システムを非常にシンプルにすることで、日常の足としてバイクを使っているお客様にもお使いいただけることをめざしました。日常使いのバイクをより使いやすくしたいという強い思いのもと、Hondaオリジナルで開発しました。

ジョアン:

より安心して使えるようにするために、万が一アプリが何かしらの不具合で停止してしまったときに自動で復帰するように設計したことも大きな特徴です。停止してしまったアプリの状況を走行中に確認することは難しいですからね。
それから、スマートフォンの画面がロックされていたり、OFFになっている状態でも使えるようにしました。そうすれば、常に使えるので、そのたびにスマートフォンを確認する必要がなくなります。この設計を実現できたことは非常に大きなブレイクスルーポイントになると思います。

便利で楽しく使えるシステムを、身近なバイクのために

—このシステムは、どのような使われ方をイメージしていますか?

小山内:

たとえば通勤時にバイクで帰宅しているとき、家族から何かを買ってきてというメッセージが来たとき、今までは車両を止めて確認して、それでルート変更を考え、目的地に向かってタスクを達成していたはずです。家族からのメッセージが走行しながら音声で読み上げられれば、わざわざ止まる必要がなくなります。目的地がわからなければ、走行中であってもナビゲーションを設定できます。このように、普段使いでも走行中に安心してコミュニケーションできることは有益だと考えています。また、インドやタイのお客様は家族と話すことが多いので、今まで諦めていた、もしくは走行中にスマートフォンを操作するようなことがなくなり、安心してご家族との会話を楽しめると考えています。

ジョアン:

メッセージの送受信、電話の発着信、ナビゲーションの設定や操作、音声での道案内以外にも、音楽のプレイバックコントロールもできますので、日常でのバイクとの時間、あるいはグループでのツーリング、ソロツーリングをより楽しいものにしてくれると思います。

西川:

シンプルに使えることにこだわったインフォテインメントシステムです。Hondaのバイクの魅力をより引き立てるシステムになっていると思いますので、ぜひお使いいただければと思います。

—安全性にも考慮された、とても魅力的なシステムであることがわかりました。ありがとうございました。

*Bluetooth®️およびBluetooth®️ロゴは米国Bluetooth SIG,Inc.の登録商標です。

システムの使い方をアニメーションでわかりやすくご紹介します。 ※海外で制作された映像です。

テクノロジーHonda RoadSync