世界初のカーナビ「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」高精度なガスレートジャイロを搭載
開発の背景
1970年代、自動車技術の飛躍的な進歩と道路環境の整備にともない、モータリゼーションが急速に発展しました。
増大する自動車交通や行動圏の拡大によって渋滞が引き起こされ、無駄な燃料消費、運転者の体力や神経の消耗、さらには時間的ロスなどの多くのエネルギーロスを強いられている状況を鑑みて、Hondaは大掛かりな設備や外部施設に依存せずに自動車自身が自車位置情報を獲得する完全自立航法に目を向け、その開発に取り組みました。
まだGPSによる位置情報が入手できない時代に、Hondaは新たに自動車量産用として開発したジャイロセンサーと距離センサーによりクルマの移動する“方向”と“距離”を検出することで、道路上の自車位置を電子データとして置き換えることに成功。その自車位置データをディスプレイ画面上に重ねた地図に表示する“ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ”を完成させました。
歴史的意義
このシステムがもつ自車位置を地図上に表示する技術は画期的な技術として1981年に世界初の地図型自動車用ナビゲーションシステムとして誕生しました。
この技術は後に、燃料消費量データやルート情報から省燃費ルートの提供を可能とし、環境に配慮した走行ルートを提供するシステムにもつながっています。
また、現在では、自車位置情報プローブデータとして情報センターに集約し、情報取得が可能な車車間で渋滞情報として共有することで渋滞を避け、効率的移動の実現に役立っています。さらに、自車位置情報の検出技術は安全走行を実現する先進的な交通輸送システムとしてのITS(Intelligent Transport System)技術の発展にも寄与しています。
このように“ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ”によって実現された基礎技術は今日、GPS情報などを用いることによってより詳細に、自車位置を検出するまでに進化しています。
受賞歴
2017年3月2日 IEEEマイルストーンに認定
http://www.honda.co.jp/news/2017/c170302.html
2015年3月25日 第8回電気技術顕彰「でんきの礎」
http://www.honda.co.jp/news/2015/c150325a.html
技術の特徴とシステム説明
技術的特徴
地図型自動車用ナビゲーションシステム
CRTに走行軌跡、現在位置マーク、方位マークを表示し、その前面に透過性地図シートを設置することで、地図上に自車位置を表示。
ジャイロセンサーとスピードセンサーによる慣性航法
新たに自動車用に開発したガスレートジャイロセンサーとタイヤ回転からの距離センサーにより、“方位”と“移動量”を検出し、16ビットCPUで現在位置を計算。
位置誤差をドライバーが認識し、修正することができるマップマッチング
CRT表示された走行軌跡と透過性地図シート上の道路を照合することで、ドライバーが容易にその誤差を認識した場合は、その誤差を修正可能とした。
この3つの技術は現在のナビゲーションシステムにおいても基本技術として確立され、世界的な標準となっています。
進化への取り組み
1990 「デジタルマップナビゲーションシステム」を商品化
当時の最新のエレクトロニクス技術と融合させることによって、日本全国を網羅するデジタル地図のコンパクトディスクへのデータベース化や、自車の走行軌跡とデジタル地図との照合を自動的に行うマップマッチング技術を導入。
オペレーションフリー化を図り、高精度で実用性の高いナビゲーションシステムを実現。
1994 「ホンダ・ナビゲーションシステム」を商品化
自車位置を正確に把握することはもちろん、ルート案内や音声ガイドなどによる目的地までの的確な経路誘導機能、充実して情報検索機能を合わせ持ったヒューマンフレンドリーなシステム。2倍速のCD-ROMドライブをナビゲーションシステム本体に内蔵し、地図データや各種データベースの高速な読み出しを可能にした。さらに航法装置には自立航法装置である軽量・コンパクトなジャイロセンサーとGPSを組み合わせたハイブリッド航法方式とした。
1997 新世代「ホンダ・ナビゲーションシステム」を商品化
精度の高いナビゲーションの技術を応用して居眠り運転等の際発生するクルマの不自然な挙動を検知し、ドライバーに音声と画面表示で警告する世界初のホンダ独自のシステム、「ふらつき運転検知機能」とインターネット通信方式を採用し、双方向コミュニケーションを可能にした双方向通信「インターナビシステム」を開発。
2002 音声認識対応カーナビゲーションシステム(同時に、新双方向情報ネットワークサービス、「インターナビ・プレミアムクラブ」を開始)
音声認識機能による音声操作/音声案内を全面的に採用。カーナビゲーションの基本操作はもちろん、エアコンやオーディオの音声操作、音声メモ、ハンズフリー通話をも可能にするとともに、予防安全への貢献として、ふらつき運転検知機能とカーブ予告による走行アシスト機能も充実。
2003 音声認識Honda・HDDナビゲーションシステム(同時にフローティングカー情報システムを世界で初めて実用化)
従来のHonda・ナビゲーションシステムに比べてデータ容量が2倍以上となり、データの書き換えが可能となったほか、検索・ルート探索時間の短縮、表示能力の向上など、ナビゲーションシステムとしての基本性能を高めた。
同時にフローティングカー情報システム*を駆使した世界初の新双方向情報ネットワークサービスを実用化した。
*車内センサーで得られる走行速度等を情報管理センターに送信することで、交通流動等の道路交通情報を生成するシステム。
2004 インターナビVICS車線別情報の提供と、気象情報をリアルタイムで提供するインターナビ・ウェザーを世界で初めて実用化
2005 出発時刻アドバイザーを発表
精度の高いナビゲーションの技術を応用して居眠り運転等の際発生するクルマの不自然な挙動を検知し、ドライバーに音声と画面表示で警告する世界初のホンダ独自のシステム、「ふらつき運転検知機能」とインターネット通信方式を採用し、双方向コミュニケーションを可能にした双方向通信「インターナビシステム」を開発。
2006 日本初 Google Earth™を利用したフローティングカー情報の提供
自車位置を正確に把握することはもちろん、ルート案内や音声ガイドなどによる目的地までの的確な経路誘導機能、充実して情報検索機能を合わせ持ったヒューマンフレンドリーなシステム。2倍速のCD-ROMドライブをナビゲーションシステム本体に内蔵し、地図データや各種データベースの高速な読み出しを可能にした。さらに航法装置には自立航法装置である軽量・コンパクトなジャイロセンサーとGPSを組み合わせたハイブリッド航法方式とした。
2007 世界初 豪雨地点予測情報、地震情報、主要道リアルタイム地図更新を発表
2008 省燃費ルートやETC割引ルート等をサーバー上で導き出し、配信する「インターナビ・ルート」サービスを開始
ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータによって実現された基礎技術はさらに、環境・予防安全領域の技術発展に大いに貢献しているとともに、将来の自動運転技術の実現にも期待されています。
関連リリース
1981年12月17日 「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」を発売
http://www.honda.co.jp/news/1981/c811217.html
1981年08月24日 「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」を開発
http://www.honda.co.jp/news/1981/c810824.html
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テクノロジーホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ