エンジンテクノロジー VCM

※2003年6月発表の情報

ゆとりある走りと低燃費を両立するHondaのVCM

まずはじめに、VCM(ブイ・シー・エム:可変シリンダーシステム)とは 何かをご紹介しましょう。
VCM(Variable Cylinder Management)とは、走行状態によって自動的にエンジンの「3分の1、半分」を休ませ(=気筒休止)ガソリンを節約する技術です。

エンジンを3分の1、半分休ませるため、小さなエンジンのクルマでは充分なパワーが得られません。したがってVCMは、ゆとりある走りを求めながら、ガソリン使用量を節約し、CO2を低減する技術。

燃焼を止めて、気筒休止

VCMは6気筒エンジンに搭載されていて、6気筒のうち、1/3の2気筒、半分の3気筒で燃焼を止め気筒休止を行います。

ハンドル操作でクルマの姿勢を修正する必要があるとき

気筒休止するということは、VCMが働いたときは排気量の少ない、小さなエンジンで走るのと同じ。
だから、ガソリンが節約され、CO2の排出も少なくなります。

VCMはどんなときに働くか。

VCMは、市街地走行から日常的に働きます。
また、特に高速道路のロングドライブで働かせると、大きく燃費低減に貢献することが期待できます。

VCMは、上級セダンのゆとりある走りの楽しさをそのままに、優れた燃費を実現。
環境性能と経済性を向上させるテクノロジーです。

VCMの気筒休止のメカニズム

VCMの気筒休止は、吸排気を行うバルブ(弁)の動きを閉じた状態で止め、燃焼を休止させています。
そのために、Honda独自の可変バルブタイミング・リフト機構VTECを活用しました。

休止のときは、油圧でピンを移動してバルブを押し下げるロッカーアームを分割。
そうすると、カムがロッカーアームを押しても空振りするためバルブの動きが止まります。

気筒休止で燃費がよくなる理由

気筒休止で燃費がよくなるのは、大まかにとらえると、“排気量の少ない、小さなエンジン”になるからです。

それをメカニズムとして解説すると、次の3つの理由になります。

1.休止気筒のポンピングロスがなくなる

燃焼を休止する気筒でバルブを閉じると、その気筒は吸排気をしなくなります。
したがって、エンジンが回る抵抗のなかでもっとも大きいポンピングロスがなくなります。
それが、気筒休止による燃費向上の最も大きな理由です。

ポンピングロスとは

ピストンが吸排気するときの空気抵抗。
特に吸気は、スロットルが閉じていると大きい。

バルブを閉じたら抵抗になるのでは

密閉した空気をピストンで縮めると、 たしかに抵抗があります。 しかし、膨張するとき、縮んだ空気が ピストンを押し返すためプラスとなり、 合計するとロスはほぼゼロになり、 ほとんど損失はないのです。

2.燃焼気筒のポンピングロスも低減

上図のように、3気筒燃焼時はスロットルが開き気味になります。
そのため、燃焼している気筒は吸気しやすくなり、吸気の「ポンピングロス」が低減し、燃費向上に寄与します。

スロットルとは?

スロットル

エンジンの吸気量を調節する弁。 写真は、電子制御スロットルDBW。 水平に黒く見える軸を中心に、 金色に見える円形の弁をモーターで回転させ開閉します。

DBWとは?

ドライブ・バイ・ワイヤの略。電子制御スロットルのことです。 アクセルペダルの踏み込み量をセンサーが検知し、その情報に もとづきスロットルをモーターで駆動します。したがって、 コンピューターにより理想的な制御が可能です。

3.バルブを駆動する損失の低減

バルブを止めるため、ロスが少なくなり、エンジンの仕事効率が上がり、燃費向上に寄与します。

以上の3つの理由から、気筒休止時には エンジンの“熱効率のいい燃焼領域”を使用する頻度が高まることも、燃費向上に寄与します。

4気筒燃焼を加え気筒休止効果を拡大

HondaのVCMは開発当初、3.0L V6エンジンを6気筒、3気筒燃焼に切り替えるものでした。
それを、気筒休止効果をさらに拡大すべく、3.5L V6エンジンで6気筒、3気筒、4気筒燃焼の3段階切替を実現しました。
3段階切替の実現のために、Honda独自の可変バルブタイミング・リフト機構(VTEC)を駆使。
3気筒休止するリアバンクでは、ロッカーシャフトに4つの油圧経路を設けるなど緻密なつくり込みによって実現しました。

V6エンジンリアバンク側のロッカーシャフト

VCMは、Honda独自のVTECをはじめHondaの先進技術を統合することで実現したテクノロジー。
現在V6エンジンで、3段階の気筒休止を行うのはHondaだけです。

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