Welcome to the Track! CBR1000RR-R FIREBLADEエンジニアトークWelcome to the Track! CBR1000RR-R FIREBLADEエンジニアトーク

車体

パワーを受け止める、車体を動かす

その、ものすごいパワーを受け止めるフレームというのは、どういうものなのでしょうか。

石川:一言で言えばしなやかなフレームです。ふにゃふにゃではまっすぐ走ることすらできないし、ガチガチでは手応えが感じられず、思い切って攻められません。「枠」としてのフレームをしっかりと作りながら、最適なしなやかさを実現できる構造を試行錯誤しながら作り上げていきました。

小谷野:このパワーですから、誰でも使い切れる、とは言いません。ただ、とにかく「乗りやすい」マシンにしたいというのは、ずっと考えていました。ディメンションとしてある程度の大きさにしたのもそうですし、路面から伝わる「情報」が得られる車体を目指しました。

小谷野 広治(操縦安定性研究担当)

小谷野 広治(操縦安定性研究担当)

1981年入社。NSR250R、BROS、VFR800X、CBシリーズ、X-ADV、CBR1000RRなどを担当。92~09はHRCに在籍、NSRやRC212V等のワークス車両の完成車テストを担当。20代の頃に全日本ロードレースに社内チーム(ブルーヘルメットMSC)から参戦し、8耐も2回出場。

伊藤さんは、まだ旧型のエンジンを載せた状態のフレームでもテストをしていますね。最初から印象は良かったのでしょうか?

伊藤:最初からフロントの接地感は良かったですね。当初懸念したのは、トラクション感が薄れるのではないか、ということでした。

小谷野 広治(操縦安定性研究担当)

小谷野 広治(操縦安定性研究担当)

1981年入社。NSR250R、BROS、VFR800X、CBシリーズ、X-ADV、CBR1000RRなどを担当。92~09はHRCに在籍、NSRやRC212V等のワークス車両の完成車テストを担当。20代の頃に全日本ロードレースに社内チーム(ブルーヘルメットMSC)から参戦し、8耐も2回出場。

リアショックのアッパーマウントがエンジンに設けられている、新しい構造ですからね。

伊藤:ただ、実際には加速時にエンジンの位置をリアショックが押すことで、とても挙動を掴みやすくなりました。従来のユニットプロリンクはどちらかというとスイングアームだけを動かすようなイメージでしたが、この新しい方法にしたことで、かつてないハイパワーを安心して使えるようになったと思います。

石川さんは長年フレーム開発に携わってきていますが、どうですか。

石川:Hondaとして培ってきたフレーム開発のノウハウを全面的に注ぎ込んだと自信を持って言えます。本当に、量産が立ち上がる最後の最後までやり続けていたので、今は「やっと終わったか」という心境です(笑)。

Sekiya's Eye

新設計のフレームには、高速域で車体を安定させながらも、挙動のつかみやすさやハンドリングの自由度を確立する狙いがあるため、従来よりも横剛性を抑制する方向にある。例えばフルバンク時になると、路面からタイヤに入力する垂直方向の荷重と、リアショックが作動するための車体の上下軸に沿った(つまりバンク角に等しい)荷重の方向が大きく異なってくる。
このため、リアサスペンションだけではショックを吸収しきれなくなるので、フレーム自体が横方向にしなってタイヤから入力される荷重を吸収させる考え方が、現在のMotoGPマシンでは主流になっている。さらには車体の応答スピードやライダーへのインフォメーションなどを最適化し、結果的に旋回性を高めていると想像できる。

制御

「万人に受け入れられる」218PS

エンジンとフレームがセットになった状態で乗ってみて、伊藤さん、どうでしたか。

伊藤:もちろん、最初の段階ではいろいろと改善点はありました。でも、「こうすればいいんだろうな」とか「こうしたいのだろうな」ということが、すぐに思い浮かぶマシンに仕上がっていました。それこそテストのたびにあちこち削ったり、締め付けトルクを変えてみたり、本当に細かいところを最後までやっていましたね。

テストライダーとして腕の見せ所だったのではないかと思いますが、伊藤さんのフィードバックは、どんなものだったのでしょう?さすがだな、とか、俺の方がもっとうまくできる、とかありますか(笑)。

細川:これまでの量産車開発ではあり得ないくらいの回数のサーキットテストを繰り返して、とにかくあらゆる仕様を試しましたが、毎回同じような走り方をして、仕様の変わったところに関する的確なフィードバックをいただけるのは、本当に助かりました。

細川 冬樹(開発責任者代行)

細川 冬樹(開発責任者代行)

2000年入社。学生時代は北海道やサーキットを走り回り、「CBRシリーズの開発をしたい」と志し入社。動力研究担当を経て、開発責任者代行としてCBR1000RRの12年モデルから今回の新型モデルまでコンセプト検討・テスト取りまとめを担当。愛車はCB1300 SUPER BOL D’OR 。

電子制御に関しても、ただ「付いていればいい」というのではなく、いかにライダーが乗りやすいものかどうかが重要ですよね。

大越:「公道で楽しく」がコンセプトだった先代から、「サーキット最速」へと方針転換をしたことで、電子制御に求められるものも一段レベルアップしました。ただ、CBR-RRに受け継がれてきた「Total Control」というコンセプトは不変です。「万人に受け入れられる」のは、決して忘れてはいけないことなのです。

大越 悟(制御設計担当)

大越 悟(制御設計担当)

2004年入社。2006年モデルのCB600Fホーネットを担当したのち、CBR1000RR(2008)、NC700シリーズ(2012)、RC213V-S(2015)、CBR1000RR(2017)など主に大型FUNモデルの制御設計を担当。

伊藤:トラクションコントロールやウィリーコントロールといったものだけではなくて、スロットルバイワイヤの開度設定や応答性の調整に相当に神経を使って、一般のライダーがこの218PSをいかに扱えるようにするかというところに、注力しました。突然パワーが出たりしないし、スロットルの「開けくち」から全開まで、スムーズにつながる。同じパワーでも、感じ方が全然違うと思います。

細川 冬樹(開発責任者代行)

細川 冬樹(開発責任者代行)

2000年入社。学生時代は北海道やサーキットを走り回り、「CBRシリーズの開発をしたい」と志し入社。動力研究担当を経て、開発責任者代行としてCBR1000RRの12年モデルから今回の新型モデルまでコンセプト検討・テスト取りまとめを担当。愛車はCB1300 SUPER BOL D’OR 。

大越 悟(制御設計担当)

大越 悟(制御設計担当)

2004年入社。2006年モデルのCB600Fホーネットを担当したのち、CBR1000RR(2008)、NC700シリーズ(2012)、RC213V-S(2015)、CBR1000RR(2017)など主に大型FUNモデルの制御設計を担当。

サスペンションも電子制御ですね。

伊藤:現役バリバリのプロのレーシングライダーだったら、無くても何の問題もないと思いますが、そうでないなら使いこなした方が絶対に速く走れます。開発陣がオーリンズと一緒になって開発を進めてくれて、AUTOモードにしておくだけでとにかく「理にかなった」動きをしてくれるのが印象的です。

レーシングライダーも納得の制御、と。

伊藤:サスペンションに関してもうひとつ驚いたのが、「SP」のオーリンズ製、スタンダートのショーワ製、どちらを装着しても操縦感覚がほとんど変わらないということです。それだけ車体がよく仕上がっている、ということの証明だと言っていいと思います。

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ユニットプロリンクはショックユニットが車体から独立した構成だったので、特に高速域においてはリアサスペンションで発生した荷重が車体に干渉しないという理由から、2002年のRC211Vで開発されて以来、CBRシリーズで使われて来た。今回、リアショックのアッパーマウントをエンジンマウントに変更し、普遍的なプロリンクとしたのは、車体構造の合理化が狙いである。このレイアウトによって、メインフレームの左右を連結するクロスメンバーを廃止する事が可能となり、剛性バランスの向上と軽量化を同時に実現できた。この方式採用の背景には、フレーム解析や成形技術、加工技術の進化もある。

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CBR1000RR-R FIREBLADE 製品説明書 【FACT BOOK】CBR1000RR-R FIREBLADE 製品説明書 【FACT BOOK】

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