経営 2025.12.22

「ヘルメットをかぶって自分を守ろう」 ホンダベトナムによる小学1年生への認証済みヘルメット寄贈活動

「ヘルメットをかぶって自分を守ろう」 ホンダベトナムによる小学1年生への認証済みヘルメット寄贈活動

 POINTこの記事でわかること

  • ホンダベトナム(Honda Vietnam 以下、HVN)は、ベトナム政府と連携して全世界におけるHondaの目標より5年早い2045年までに交通事故死者ゼロの実現を目指している
  • ベトナム特有の交通事情に対応すべく、HVNは1999年に交通安全の取り組みをスタートした
  • 全国の小学1年生への認証済みヘルメットの寄贈と教育活動を通じて、交通安全意識の向上に貢献している

Hondaは、2050年に「全世界でHondaの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロ」という目標の達成に向け、交通安全に関するさまざまな取り組みを実施しています。この取り組みの一環として、HVNは1999年に交通安全に関する活動をスタート。2018年からは毎年、全国の小学1年生への認証済みヘルメット※1の寄贈と、生徒の保護者への交通安全講習を行っています。今回は、HVNの「交通事故死者ゼロ」に向けた取り組みをご紹介します。

※1 認証済みヘルメットとは:ベトナム政府の国家技術基準に適合し、公式に認証を受けたヘルメットのこと

全世界におけるHondaの目標より5年前倒しで交通事故死者ゼロを目指す

HVNは1996年、二輪車・四輪車の設計、生産、販売、アフターサービスを手掛ける現地法人として設立されました。2002年発売のバイク「Honda Wave Alpha」が多くのお客様に受け入れられて以来、ベトナムのバイク市場におけるHondaのシェアは80%※2以上となっています。

※2 出典:2024年 ベトナム二輪車製造業協会(ホンダベトナム・ヤマハベトナム・ベトナムスズキ・ピアッジオベトナム・SYMの統計)

HVNは設立間もない頃から交通安全への取り組みに注力してきました。具体的には1999年にビンフック省(現・フート省)に交通安全センターを設立して運転教育を推進。2008年からはベトナムの教育訓練省(MOET)・国家交通安全委員会(NTSC)が主導する「子どもの笑顔のための交通安全」という国家プロジェクトに参画しています。

ベトナムの交通安全センターでの安全運転講習の様子 ベトナムの交通安全センターでの安全運転講習の様子

このほかにもHVNは農業従事者向けライディング訓練や、未就学児童をはじめ、高等学校および職業訓練校の学生を対象にした交通安全教育プログラムを提供するなど、設立当初から交通安全に関するさまざまな取り組みを行ってきました。

現在HVNでは、Hondaが目標とする2050年に全世界でHondaの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロおよび、ベトナム政府が掲げる2045年までに道路交通事故による死亡者ゼロの目標に向けて4つの重点分野「評価(Evaluation)」「教育(Education)」「工学(Engineering)」「渉外(External Affairs)」に焦点を当てた「4E戦略」を定め、政府機関とも連携しながら取り組んでいます。これにより、目標達成だけでなく、ベトナム全土で安全な交通文化を根付かせることも目指しています。

<4E戦略の概要>

評価 交通事故に関する調査結果に基づき、効果的な対策を考案する
教育 運転者・歩行者・子どもたちへの交通安全教育を実施する
技術 安全性能の高い車両・ヘルメット・設備等の開発を目指す
渉外 政府関係機関と連携し、交通安全の向上に取り組む

ベトナム特有の交通事情を踏まえた安全運転普及活動

バイクの交通量が多いハノイ バイクの交通量が多いハノイ

ベトナムにおける主な移動手段はバイクやモペッド。バイク所有率は1,000人あたり770台といわれており、1日あたり延べ7,700万台のバイクが走行しています※3。近年、ベトナムは法整備、政策変更、啓発プログラム、インフラ改善などを通じてバイク利用者の安全を大きく向上してきました。しかし、交通事故による死亡率は依然として東南アジア諸国の中でも高い水準にあります。

バイクの普及に伴って課題となっていたヘルメット着用率の低さに対しては、2000年に特定の主要道路・高速道路においてバイク利用者のヘルメット装着が義務付けられるようになり、2007年には対象が全国へ拡大。さらに警察による取り締まりや罰則の強化もあり、運転者のヘルメット着用率は着実に上昇しました※4

※3 出典: ベトナム国家交通安全委員会(2024年9月時点)
※4 出典: ベトナム国家交通安全委員会(2017年12月時点)

子どもを後ろに乗せて走るライダー 子どもを後ろに乗せて走るライダー

運転者のヘルメット着用率は上昇したものの、安全基準に満たない安価な低品質ヘルメットの着用や、ストラップをきちんと締めないなどの間違ったヘルメットの着用方法、同乗者、特に子どものヘルメット着用率が低いといった新たな課題が浮き彫りになっていきました。

研究によると死亡事故の42%、頭部損傷事故の69%がヘルメット未着用に起因※5していたことから、安全基準を満たすヘルメットの着用は死亡事故防止に非常に有効であると考え、HVNは2018年から全国の小学1年生に認証済みヘルメットを寄贈するプロジェクトを開始しました。

※5 出典:WHO公式サイト

このプロジェクトの目標は、安全基準を満たすヘルメットの着用率を100%に近づけることで、バイク利用者のヘルメット着用習慣をつくること。そして研修やコミュニケーション活動を通じて、生徒と保護者の交通安全意識向上を図ることです。バイクの後ろに乗る際、ヘルメットをかぶることを習慣化するために最適な年齢であると考え、ヘルメットの寄贈は小学1年生の生徒を対象としました。

2025年10月2日の寄贈式典の様子。約1,700名が参加 2025年10月2日の寄贈式典の様子。約1,700名が参加

全国の小学1年生に認証済みヘルメットを寄贈

2025年10月、HVNは国家交通安全委員会および教育訓練省と協力し、保護者と児童向けの交通安全研修とヘルメット寄贈式を組み合わせた初のイベントをバンバオ小学校で開催。約1,700人が参加しました。

参加した保護者が研修を受ける様子 参加した保護者が研修を受ける様子

本イベントには、交通安全に対するHondaのコミットメントを表明するため、Honda社長の三部敏宏、副社長の貝原典也も参加しました。

HVNのゼネラルディレクター 荒井清香は、ヘルメット寄贈を小学1年生向けに実施する理由について次のように説明します。

荒井
荒井

小学1年生は思考や習慣が形成される大切な時期であるため、バイクに乗る時に常にヘルメットを着用する習慣を身につけてもらうことは極めて重要です。私たちは、入学初日に子どもたちへ贈られるかわいらしいヘルメットが、特別な思い出となり、バイクに乗る時は必ずヘルメットを着用する習慣が身に付くことを願っています。

HVNゼネラルディレクター 荒井清香 HVNゼネラルディレクター 荒井清香

参加した保護者からは「研修内容が有益で印象的だった」「子どもへの着用指導に役立つ」といった声が聞かれた他、参加した子どもたちからも多くの喜びの声が寄せられました。共催したベトナム国家交通安全委員会や教育訓練省も「ヘルメット寄贈は新学期の重要活動である」とHVNの交通安全活動を高く評価しています。

2008年から小中高すべての児童・生徒に対して交通安全教育を実施してきたHVN。2018年から現在までに、累計1,200万個の認証済みヘルメットを寄贈し、700万人の子どもと保護者に交通安全講習を行ってきました。これにより児童・生徒のヘルメット着用率は2018年以前の37%から2024年には85%※6にまで向上しています。

※6 出典:NTSCサイト、およびHVN・NTSCによる内部調査

荒井
荒井

私たちが長年取り組んできた交通安全の啓発活動が大きく実を結んできており、大変うれしく思っています。これからもこれらの活動に注力するとともに、2045年の交通事故死者ゼロに向けて取り組みを継続していきます。

HVNにとって、1つひとつのヘルメットは「子どもたちの安全な通学を守るという約束」と「子どもたちの夢と将来を支えるという約束」を象徴しています。HVNはバイクにおける交通安全啓発活動に加えて自動車ユーザー向けの安全運転トレーニングも積極的に実施することで、ベトナムにおける交通安全活動の全体をさらに強化しています。

これらの取り組みは、すべての道路利用者に対し、安全かつ責任ある交通行動を促進するというHVNの長年の取り組みの一部です。HVNは、関係機関との協力、寄贈、教育という包括的アプローチを通じて交通安全文化の醸成に引き続き貢献し、ベトナムのすべての人々が安心して移動できる未来の実現を目指していきます。

【Worldwide Honda動画】

Index