POINTこの記事でわかること
- 変革期にあたり、Hondaはグローバルブランドスローガン「The Power of Dreams」を再定義
- 創業以来追求してきたHondaらしさを社内外に広める活動を強化
- 世界中の地域での活動を映像で紹介する「Worldwide Honda」を通じて、Hondaのフィロソフィーや想いをグローバルに共有
100年に一度と言われる大変革期にあるモビリティ業界。Hondaはこれを第二の創業期ととらえ、2023年にグローバルブランドスローガンを再定義しました。これに合わせ、2025年に世界各地の取り組みを通してスローガンに込めた想いを伝える動画プロジェクト「Worldwide Honda」をスタートさせました。今回は、ブランド・コミュニケーションセンター センター長の千田隆作(せんだ・りゅうさく)にスローガン再定義の背景を、そしてプロジェクト担当者である近藤智子(こんどう・ともこ)に「Worldwide Honda」の狙いや舞台裏について話を聞きました。
変革の時代にHondaが目指す方向性をスローガンで表現
Hondaは2023年、グローバルブランドスローガン(以下GBS)を「The Power of Dreams — How we move you.」に再定義しました。これは、Hondaがこれからも人々の心や社会を動かす存在であり続けるための決意表明でもあります。2001年に設定した「The Power of Dreams」に副文「How we move you.(夢の力であなたを動かす)」を添えた背景にはHondaを取り巻く大きな環境の変化がありました。
本田技研工業株式会社 経営企画統括部 ブランド・コミュニケーションセンター センター長 千田隆作
GBS再定義は、世界中のさまざまな部門や地域、そこにいる1人ひとりの仲間がその内容を理解するだけに留まらず、自らHondaらしさを体現できる「状態」を目指していくことに狙いがあります。
Hondaの提供する「モビリティ」は、単に人が移動するための道具ではなく、「時間や空間といったさまざまな制約から人々を解放(Transcend)し、人の能力と可能性を拡張する(Augment)」という素晴らしい価値を持っています。
Hondaには、この普遍的で本質的な価値を持つモビリティを更に進化させることで、「自由な移動の喜び」を世界中に拡げていきたい、という強い想いを持った人たちが集まっています。Hondaで働く1人ひとりが夢を持ち、強い想いと個性がぶつかり合い、多様な知と多様な夢が相互に作用し合うことで、大きな価値を生み出す「創造(Create)」に繋がっていく、ということをGBSは示しています。
再定義して以降、理解や実践の促進を図るさまざまな活動を行うとともに、ロゴやガイドラインの改定、企業広告の展開、Honda グローバルフォントの制作等のブランドアセットの拡充、グローバルでの実行体制の整備などに取り組んできました。
結果、元々の狙いであった『多くの領域が自律してHondaらしさを体現できる状態』に日々近づくことができていますが、地域や事業を横断した観点での取り組みの強化は引き続き継続した課題の1つであると考えています。
世界の取り組みを通じてHondaを伝える映像プロジェクト「Worldwide Honda」
二輪・四輪・パワープロダクツ(耕うん機や芝刈り機、除雪機など)・航空機など、多岐にわたる事業をさまざまな地域で展開しているHondaは、一貫性がありながら多様な側面を持っています。
2025年4月にスタートした「Worldwide Honda」は、世界各地で開催されるイベントや取り組みを30秒の短い動画にまとめ、それを通して、GBSに込められた想いと、多様なHondaらしさを伝えていくグローバルプロジェクトです。「Worldwide Honda」のプロジェクトメンバーの1人であるブランドプラニングスタジオの近藤智子は、立ち上げの経緯について次のように語ります。
各地域のブランド担当者と議論を重ねる中で、世界各地で展開しているHondaの多彩な取り組みが十分に共有されていないということに気が付きました。しかし、その根底には一貫した想いが存在しているはず――。
これこそが、Worldwide Hondaプロジェクトの出発点です。
本田技研工業株式会社 経営企画統括部 ブランド・コミュニケーションセンター ブランドプランニングスタジオ 主任 近藤智子
Hondaが世界各地で展開している活動の裏には共通のフィロソフィーや想いが込められています。そこで、Hondaの多様な活動をわかりやすく動画にまとめて発信することで、動画を通じて、世界中のより多くの人にHondaの本質や想いを伝えています。
私たちはこのプロジェクトを通じて、世界中の活動を紹介するだけでなく、そこに共通して表れる『Hondaらしさ』を可視化し、グローバルに共有していきたいと考えました。動画制作にあたっては『言葉で説明しすぎないこと』にもこだわりました。映像を通じて直感的に感じ取ってもらえるよう工夫した他、統一的な表現ではなく、各地域ならではの色や個性が映像に反映されるようにも注意を払いました。
例えば、プロジェクトの初回映像として公開した『F1 TOKYO FAN FESTIVAL』では、単なるイベントレポートにとどまらないよう、なぜHondaがこのイベントを開催するのか、その背景にある想いを映像に込めることを重視しました。
日本では、かつてアイルトン・セナ選手の活躍によって国中がF1に熱狂した時代がありましたが、現在は当時ほどの人気はありません。しかし世界に目を向けてみると、Netflixで配信されたドキュメンタリーシリーズや関連映画などの影響もあり、アメリカを中心として世界的にF1人気が高まっています。世界的なF1熱を再び日本の人々にも感じてもらいたい。そのために、普段はサーキットでしか見ることのできないF1マシンを東京の真ん中、お台場の公道で走らせる取り組みを初回映像として選びました。
結果、HondaがF1を通じて届けたい「情熱」や「未来への挑戦」を伝える映像になりました。また、『Worldwide Honda』の映像がシリーズとして増えるにつれて、よりその想いを伝えられるようになってきたと思います。
「F1 TOKYO FAN FESTIVAL」映像のワンシーン
現地の個性と特色を魅せながら、Hondaの想いを伝える
「Worldwide Honda」プロジェクトでは、全体の企画や取りまとめはプロジェクトメンバーが担いますが、映像はすべて各担当地域の現地法人で制作しています。したがって統一されたコンセプトの中に各地域ならではの特色や文化を読み取ることができます。
例えば、インドでは式典の冒頭にダンスパフォーマンスがあったり、ブラジルでは今でも皆から愛されるアイルトン・セナ選手の壁画があったりと、その国ならではの様子を知ることが出来て、私たち自身も楽しみにしています。今後どのような映像が生まれてくるのか、皆様にもぜひご期待いただきたいですね。
(左)インドならではのダンスパフォーマンス(右)ブラジルらしいアイルトン・セナ選手の壁画
「Worldwide Honda」は、Hondaのさまざまなオウンドメディアでの発信に加え、日本国内ではHondaの販売店で放映されている「Honda Cars TV」での放映もスタート。クルマの購入やメンテナンスで販売店を訪れた際、Hondaが世界で展開しているさまざまな事業や活動を知っていただく機会となります。
また、従業員にとっても他国の事例や取り組みを知ることで、1人ひとりが視野を広げ、Hondaブランドを担う一員としての意識を高めていく好機でもあります。
私たちが届ける1つひとつの言葉や行動が、Hondaブランドの顔となり、世界中のお客様や社会との信頼関係を形づくっていきます。
また、他の国・地域の取り組みにも関心を持ってもらいたい。自分の仕事がグローバルの一部につながっていること、そしてHondaが世界中で誇りを持って挑戦を続けていることを実感し、アソシエイト1人ひとりがHondaの一員であることに誇りを持っていただきたいと思っています。
「Worldwide Honda」は、社内外に向けてHondaのフィロソフィー・想いを発信していくプロジェクトとして、今後もさらなる進化に取り組んでいきます。
近年モビリティ産業が大きな変革期を迎える中で、電動化や知能化に代表される新たな領域への挑戦や、それらに伴う従来の枠組みにとらわれない新たな発想や行動、スピードが求められるようになりました。また社長の三部は、各部門・従業員が長年の成功体験から『守り』に入っているのではないかという危機感を強く持っていました。
このような背景からHondaの現在地を「第二の創業期」と位置付けるとともに、創業以来追求してきたHondaらしさを改めて社内外に明示してくことが重要な経営課題となりました。それが、GBSの再定義につながっていったわけです。