POINTこの記事でわかること
- Hondaは二輪電動事業のブランドプロミス「Expected Life. Unexpected Discoveries.」 を発表、また新たなロゴを採用
- ブランドプロミスを具現化するために4つのコアバリューを設定
- ガソリン車で培った強みと電動ならではの価値を掛け合わせ、Hondaにしかできない新たな価値を提供
急速に電動化が進んでいる世界の二輪車市場において、Hondaは長年にわたりガソリン車で培ってきた技術力や知見を活かし、電動バイクの提供に挑んでいます。
2025年11月にイタリアのミラノで開催された世界最大級のモーターサイクルショー「EICMA 2025(ミラノショー)」において、Hondaは電動バイクの二輪電動事業のブランドプロミスと、それを体現するモデル「Honda WN7」を発表しました。そこに込められた「Hondaらしさ」とは? 今回の記事では、ブランドプロミス策定に至る背景や込められた想い、そしてHondaが電動バイクを通じて実現したい未来について紐解きます。
二輪・パワープロダクツ電動事業統括部長 もっと見る 閉じる 三原 大樹
さらに表示Hondaにしかつくれない電動バイクを。新たな市場での挑戦。
Hondaが初めて自社開発のバイクを発売したのは1949年。それから75年以上、バイクを通じて移動の喜びを提供し続けてきました。これまで積み重ねてきたバイク開発の技術やノウハウ、お客様との繋がりはHondaにとってかけがえのない財産です。
1949年に発売されたHondaの本格的な自社開発バイクの第1号「ドリームD型」
Hondaは2021年に「2050年に全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現」を目標に掲げました。この実現を目指して2023年4月に電動事業本部が発足し、バイクの電動化が本格的にスタートしました。発足当初、集まったメンバーたちと共に「Hondaはどんな電動バイクをつくるべきか?」を何度も議論したと、二輪・パワープロダクツ電動事業統括部長の三原大樹は語ります。
「Hondaの電動バイク」を追求するなかで導き出したひとつの答えが、これまでのガソリン車と全く違う“電動らしさ”を追い求めるのではなく、ガソリンエンジンで培ったHondaの強みと、電動だからこそできる新たな価値を掛け合わせることでした。
Hondaだからできる電動バイクとは何か?を検討するにあたり、一度ゼロに立ち返り、「移動とは、バイクとは何か?」「提供したい価値は何か?」「どのような未来を目指したいのか?」といった、根本的なことから議論を開始しました。事業部だけでなくデザイン・開発・生産と領域を超え議論を重ねた結果、導き出したのが「不安や障壁から解放する」「本能と感性を刺激する」「人と社会と共生する」「知性を共鳴させる」という、4つのコアバリューです。
【不安や障壁から解放する】
電動車だからこそ実現できる自由度の高い車体レイアウトやデザイン、制御・運転支援技術によって、ライダーの感じる不安や障壁を取り除き、ストレスフリーで自由な移動の喜びを実現します。
【本能と感性を刺激する】
ICE(内燃機関)車開発の長い歴史で培った高次元の「走る・曲がる・止まる」の基本性能と、電動車ならではの加速性能や静音性、ライディングに集中できる直感的なヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)が、操る喜びを最大限に高め、ライダーの本能を刺激します。
【人と社会と共生する】
無駄を削ぎ落とし洗練されたデザイン、電動車ならではの圧倒的な静粛性により人々の暮らしに溶け込むモビリティを目指します。また、コネクティビティ技術による車車間の協調制御、渋滞回避やより効率的なルート誘導による環境負荷低減にも貢献し、二輪車と人、社会が相互に心地よく共生できるモビリティ社会を創造します。
【知性を共鳴させる】
環境変化に対しリアルタイムで適応する UI(ユーザー・インターフェース)やアップデート機能で、購入後も使えば使うほどお客様にパーソナライズされた二輪車へと進化させていきます。また、Honda が有するデータも活用し新しい提案を行うことで、お客様一人ひとりに合わせたモビリティライフの可能性を拡張します。
「走る」「曲がる」「止まる」の基本性能をはじめとしたバイク1台分としての完成度の高さなどガソリン車で培ってきたHondaの強みを基盤価値とし、電動だからこそできる新たな価値を掛け合わせることでHondaにしかできない価値提供を行う。その実現には、商品開発だけでなく、デザインやUX※などあらゆる分野でのチャレンジが必要であり、且つ、それらのチャレンジが統一した方向性のもとに行われている必要があります。
そこで、この4つのコアバリューを含有する、私たちが提供したい体験を端的に示す言葉=ブランドプロミスとして「Expected Life. Unexpected Discoveries.」(「思うがままの暮らし」と、「思いがけない発見」のある、 心地よさと興奮に満ちた世界を人々と共創する)を定めました。
また、これらの取り組みを一貫した世界観で行うため、二輪電動事業ブランド専用のロゴを設定することとしました。
※ User Experience(ユーザーエクスペリエンス)
EICMA 2025にて発表した二輪電動事業ブランドのロゴ
「Expected Life. Unexpected Discoveries.」に込めた想いとは
二輪電動事業を通して提供したい体験を示す「Expected Life. Unexpected Discoveries.」に込められた想いについて、三原は次のように説明します。
Expected life は「思うがままの暮らし」です。日々の通勤などの移動はもちろん、旅での相棒としてのバイクがもたらす「安心感、扱いやすさ、信頼性」。これは我々が培ったHondaバイクの強みであり、Hondaが世界トップクラスのバイクブランドである所以でもあります。この信頼を電動でも受け継ぎながら、さらに 進化をさせていきます。
そしてUnexpected discoveries は「思いがけない発見」という意味です。 優れた静寂性により社会と調和することで発見する新たな世界、電動と親和性のあるコネクティビティ等を通じて、人とバイクが相互に共鳴していく、そのような意味を込めました。また、こうした体験をHondaやバイクそのものが提供するだけでなく、人々とHondaが共に創り出していきたい、と考えています。
今回定めた「ブランドプロミス」と「4つのコアバリュー」を軸に、Hondaだからこそ提供できる新たな価値を創造し、自由な移動の喜びを創造する電動バイクを提供していきます。そして電動バイク市場においても、2人に1人はHondaユーザーになっていただける世界を実現していきたいと考えています。
「風になる感覚」を世界に届けたい。Hondaらしい感動体験を目指して
2025年11月開催の世界最大級のモーターサイクルショー「EICMA 2025」でHondaはブランドプロミス、そして、電動新ブランドで初のモデルとなる「Honda WN7」を発表しました。
三原は、初めてHonda WN7の試作車に乗ったとき、「ああ、これがHondaのバイクだな」という安心感を覚えたといいます。
自然と笑みがこぼれましたね。ガソリン車と変わらない操作性や発進時の安定性は慣れ親しんだHondaのバイクらしい乗り心地ながら、音も静かで振動もなく、新鮮な感覚でした。
さらに驚きだったのは、さまざまな走行モードや回生量の調整により、走り味が変わっていくこと。難しい操作など一切なく、自分とバイクが一体化して「風になる感覚」は想定以上で、とても驚きました。この感覚を言語化するのは難しいのでとても歯がゆいですが、乗っていただければ必ず納得いただけると思います。
そうした電動バイクの感動体験を、より多くの人に届けることを目指すHonda。ブランドプロミスとともに、これからも変わらず「操る喜び」や「自由な移動の喜び」を提供し続けます。
世界一のバイク大国であるインドでは、既に電動バイク専業の新興メーカーが台頭し始めており、「コストパフォーマンス重視の安い移動手段」として使い勝手のよい電動スクーターが販売台数を伸ばしていました。
もちろん、私たちが培ってきた技術や知見を活かせば、すぐにでも同様のニーズを満たした製品を市場へ投入できますが、本当にそれが「Honda初の電動バイク」としてふさわしい製品か。これまでHondaのガソリン車に乗ってきてくれたお客様に対して、真正面からの回答になるだろうかと考えると、それは違うと感じたんです。
私たちがこれまで大切にしてきた信念や培ってきたやり方を、「電動だから」「後発だから」という理由で変えてはならない。電動であっても、「Hondaだからできること」を真摯にやりたい。それが私たちの出した答えでした。