経営 2025.10.09

CR-V誕生30周年 世界中で愛され続けるSUVの開発秘話

CR-V誕生30周年 世界中で愛され続けるSUVの開発秘話

 POINTこの記事でわかること

  • CR-Vは、「快適さ」と「自由」を融合したSUVとして1995年に登場
  • CR-Vは、従来のオフロード車中心だったSUV市場に、「アウトドアでも街中でも使えるSUV」という新価値を提示した
  • CR-Vは、2024年に世界累計販売40万台を突破し、2025年に誕生30周年を迎える

「CR-V」は、Hondaが新しい価値観を吹き込んで世に送り出したSUV(Sport Utility Vehicle:スポーツ用多目的車)であり、 1995年の発売以来、世界中で愛されているベストセラーモデルです。2025年に誕生30周年を迎えるにあたり、CR-Vが業界にもたらした革新とは何だったのか。開発秘話を交えて紹介します。

「人」を主役にしたクルマ「クリエイティブ・ムーバー」とは?

初代CR-V 初代CR-V

1990年代、Hondaはこれまで主力としてきた乗用車市場と一線を画するRV(レクリエーショナル・ビークル)市場に参入しました。この時「新発想のクルマづくり」に取り組み、生まれたコンセプトが「クリエイティブ・ムーバー=生活創造車」です。単なる移動手段としてではなく、「クルマは使う人が自らの生活を創造・演出するための道具であり、主人公は『人』である」という考えをベースに、生活をより楽しく大きく豊かに広げていける「生活創造車」を目指し、商品開発が行われました。

クリエイティブ・ムーバーの第1弾は、1994年10月に発売された初代ODYSSEY(オデッセイ)です。乗用車でありながらミニバンの利便性を持ち、生活に新しい歓びをもたらす存在として一躍Hondaを代表する車種に躍り出ました。1995年には第2弾となるCR-Vを発売。日本向けとしてはその後、STEP WGN(ステップ ワゴン)、S-MXとクリエイティブ・ムーバーを発売していきました。いずれも既存のカテゴリに縛られないアイデアと、Hondaらしい自由な発想でつくられたクルマとして多くのお客様に受け入れられました。

アウトドアでも街中でも 「アクティブ・ムーバー」としてCR-Vが目指した提供価値

1995年に登場したCR-Vは「日々の生活から自然まで、快適に、思いのままに使いこなせるクルマ」というアクティブな個性持つクルマを目指して開発され、クリエイティブ・ムーバーシリーズの中で「アクティブ・ムーバー」と位置付けられました。CR-Vという車名には「Comfortable(快適な)」「Runabout(自由に走り回る)」「Vehicle(乗り物)」という意味が込められています。

CR-Vの開発にあたり、開発チームは「Think Right」「Make Light」という理念を掲げました。「時代の流れ」や「明日」をきちんと見つめていますか? と、常にHonda自らに問いかける「Think “Right”」、使う人が「負担」なく「気軽」に楽しめるクルマですか? と常に性能を問いただす「Think “Light”」。開発においてはこの理念のもと、必要とするもの、捨て去るものを、性能のあり方・機能の有益性・サイズの適性など、ハードとソフトの両面から入念に検証して峻別。行きたいときに行きたい場所に、気軽に気持ちよく走れる「新しいアクティブ」の具現化をめざしました。

当時、SUVといえばクロスカントリー4WDタイプの屈強なオフロード車が主流でしたが、CR-Vは、

● 大人5人と荷物をたっぷり積めることを前提とし

● 日常での心地よい使い勝手を中心に

● ビジネスから、さまざまな遊びのフィールドまで

● 季節や時間、道路を問わず

● 誰もが過不足なく気持ちよく使える新しいクルマ

を実現するため、「セダンの快適性」「ワゴンのユーティリティ空間」「クロスカントリーの機能性」「機能と安心の新デザイン」を主要テーマとして追求。モノコックボディ※1の採用により、低重心化、ワイドトレッド※2、ロングホイールベース※3を実現したことで、SUVらしい視界の良さに加え、セダンのようなしなやかな操縦性を両立しました。

また、「のびのび、ゆったり、リビング感覚のインテリア」と「便利さにあふれたカーゴスペース」の創造をテーマに、フラットフロア、センターウォークスルー、フルフラットにもなる多彩なシートアレンジ、テイクアウトテーブルの装備など、アイデアに富んだ数々の工夫を導入し、アウトドアでも街中でも使いやすいSUVとして評価されました。

※1 モノコックボディ:車体を支えるための独立したフレームがなく、フレームとボディが一体となった構造のこと。これにより、高剛性と軽量化を両立した。1990年代頃から主流となり、現在は多くのクルマで採用されている。

※2 ワイドトレッド:左右のタイヤの幅が広く、走行性と安定性に優れ、迫力のある見た目を持つ構造のこと。

※3 ロングホイールベース:前輪と後輪の距離が長く、直進安定性に優れるとともに、車内空間を広くすることができる構造のこと。

多彩なシートアレンジで、便利に使えるカーゴスペースを実現した室内空間。 多彩なシートアレンジで、便利に使えるカーゴスペースを実現した室内空間。

Hondaが世に送り出したCR-Vは、1995年の発売から2025年で30年周年を迎えました。CR-Vは世界160カ国以上で販売され、累計販売台数40万台を突破し、世界的なベストセラーモデルに成長しました。2024年もHondaの世界販売台数1位を獲得しており、北米を中心に世界中で愛されています。

SUVは屈強なオフロード車、という時代に、アウトドアでも日常でも使えるSUVという新たな価値を創ったCR-V。「人」を主人公とするHondaのクルマづくりの思想を具現化し、屋台骨を支え続けるその姿はまさに、Hondaの挑戦の象徴といえるでしょう。

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