イノベーション 2023.10.09

「事故のない社会を実現したい」。安全で楽しいモビリティを目指して

「事故のない社会を実現したい」。安全で楽しいモビリティを目指して

クルマだけではなく、様々なモビリティを開発しているHondaに惹かれて入社した中塚。入社時から事故のない社会を実現することを夢に、二足歩行ロボット「ASIMO」のソフトウェア開発を経て、念願だった安全運転支援システムの開発に携わります。現在は安全運転支援システムの応用など次世代の研究・開発を担当。システムの量産に向けた開発がつい最近完了したという中塚のこれまでの歩みや、夢をかたちにするための秘訣とは。

中塚 正之(なかつか まさゆき)

本田技研工業
電動事業開発本部 BEV開発センターソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部
先進安全・知能化ソリューション開発部 先進安全システムSW開発課
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システムで事故のない社会をつくる

はじめに、中塚さんがHondaに入社したきっかけを教えてください。

中塚
中塚

工学の分野で人の役に立ちたいと思ったのが最初のきっかけです。その中でも特に、魅力を感じていたのがモビリティ、つまり乗り物でした。モビリティは、移動をより速くすることで「最も貴重である“時間”をつくり出す」ことができると思うんです。そんな考えから、クルマだけではなく、バイクや船外機、ジェットなど、様々なモビリティをつくっているHondaに興味を持ちました。調べていくうちに本田宗一郎の哲学に触れ、「この人がつくった会社で働いてみたい」と思ったのが、入社のきっかけです。

入社したときはどんな夢をお持ちでしたか?

中塚
中塚

現在仕事として行っていることでもあるのですが、「運転支援システムを使って交通事故を無くしたい」という思いが、一番にありました。乗りものに乗るときの一番のデメリットはやはり事故のリスクなので、事故を無くすことができれば、社会に良い影響をもたらせると考えたのです。

入社前からADAS(Advanced Driver Assistance System、先進運転支援システム)をメディアなどで目にすることが増え始めていたので、様々なモビリティをつくっているHondaでこのシステムを量産したいと考え、Hondaに入社しました。

事故のない社会を実現することを目標に、安全運転支援システムの研究・開発に取り組む中塚

現在はその夢を実現して運転支援システムの研究・開発を担当しているとのことですが、その他にはどういった仕事をしていましたか?

中塚
中塚

入社直後は基礎研究所に配属され、二足歩行ロボット「ASIMO」のソフトウェア開発を行っていました。基礎研究所にいた社員の方々は、ロボットを動かす技術について日々夢を語り合っていて、知的好奇心にあふれた良い所だと思いましたね。

そういった熱量の高さは、入社前の期待通りではあったのですが、「より直接的に社会で役立つものをつくりたい」という気持ちがずっとあり、普段から「運転支援システムを開発したい」と周囲に話していたんです。その後、自動運転車のプロジェクトが立ち上がった際に、そちらに配属してもらうことができました。

念願だった運転支援に近いプロジェクトへの異動が叶ったんですね。自動運転のプロジェクトでは、どのようなお仕事に携わってこられたのでしょうか?

中塚
中塚

自動運転システムを動かすためのソフトウェアの開発を行っていました。また、週の半分は栃木の研究所に出張し、自動駐車プロジェクトのソフトウェア開発にも携わりました。その後、2013年に栃木に転勤になってアサインされたのが、運転支援システムを量産するためのプロジェクトでした。具体的には、ドライバーの体調が悪くなったときにクルマを自動で停止できる「ドライバー異常時対応システム」の開発ですね。

5年ほど前からは、運転支援システムプラットフォームなど次世代の研究・開発を担当しており、システムの量産に向けた開発が、つい最近完了したところです。

現在所属する先進安全・知能化ソリューション開発部にはどのようなミッションがあるのでしょうか?

中塚
中塚

自動運転技術を用いて、自由で安全に移動できる社会づくりをミッションとしています。プロジェクトを進めるにあたっては、個々の機能だけに着目するのではなく、運転支援システムを実際の生活の中でどのように活かし、お客様に価値を提供していくか、マクロの視点で考えていくことが重要だと考えています。

事故のない社会を実現することを目標に、安全運転支援システムの研究・開発に取り組む中塚

まずは「自分が何をやりたいか」を明確に

中塚さんから見て、Hondaという会社の魅力はどういった点にあると思いますか?

中塚
中塚

ボトムアップで物事が決まっていくところはHondaの強みだと思います。現場の社員一人ひとりがやりたいことを実現して、既成概念を壊していくのを是とする文化が社内にありますね。トップダウンで強く物事を決める組織ではないので、社員がモチベーションを高く持って自発的に仕事ができる環境はやはり魅力ですし、組織としての強みにもなっています。私としても、自分の情熱や計画を認めてもらい、夢を実現していけるからこそ、やりがいを感じることができています。

Hondaで仕事をしていく上で必要なことはなんでしょうか?

中塚
中塚

入社当時、ASIMOの開発で一緒だった先輩の一人とよく飲みに行っていたのですが、そのたびに「中塚は仕事を通して何をしていきたいのか」ということを繰り返し聞かれました。自分のやりたいことを何度も突き詰めて考えさせられたことで、当時はまだ漠然としていた「安全な運転システムをつくりたい」という想いを、「自分がHondaでやりたいこと」として、しっかり言語化することができたと思うんです。

先ほど話したように、Hondaの魅力は現場の社員が意思決定していくところにあるので、若手も含めて、社員が自立していくことが求められています。社員の夢を結集させてかたちにしていくところがHondaの強みなので、一人ひとりが持っている夢、目標やスキルを周囲に示しながら研究や開発を進めていくことが、今後も重要になってくると思います。

そして、当時の先輩にそうしてもらったように、自分も若手のやりたいことを明確化してあげる手助けをしていきたいですね。

事故のない社会を実現することを目標に、安全運転支援システムの研究・開発に取り組む中塚

目指すは「タイムマシン」のようなモビリティ

今後叶えていきたい夢はありますか?

中塚
中塚

入社から変わらず、交通事故や運転の不安をなくして、楽しく移動できる社会を実現することが目標です。そして、これは夢のまた夢のような話ですが、タイムマシンのようにワクワクする、自由に移動できて信じられない体験ができるモビリティをつくりたいんです。例えば、新幹線のない時代の人が東京から京都に行こうとしたら、絶対に2時間では着けないですよね。そういった意味では、昔の人が思い描いたタイムマシンにかなり近づいてきているのかなと。

ただ、やはり交通事故や運転の不安といったデメリットは現在も残っています。ですから、そういった課題を払拭し、モビリティのメリットだけを社会が享受できるよう、取り組んでいきたいです。また、不安を減らすだけではなく、お客様が移動をさらに楽しめるようなシステムを開発することも具体的な夢の一つです。

最後に、そうした夢を叶えていくための具体的なアイデアなど、今後の展望がありましたら教えてください。

中塚
中塚

今後はモビリティのソフトウェアについても、スマホやパソコンのOSと同じように、お客様の購入後も恒常的にアップデートができるよう開発を進めます。「売って終わり」ではなく、お客様の運転データから日々アップデートを行い、機能をカスタマイズすることができれば、より安心安全なシステムを提供することができますし、クルマが育っていくような感覚から愛着を持っていただけるはず。そうすることで、その先にある「移動の楽しさ」を実現していけるのではないかと考えています。

事故のない社会を実現することを目標に、安全運転支援システムの研究・開発に取り組む中塚

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