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製品 2021.04.14

e:HEV解体新書(3) サーキットでも「走る喜び」を証明するために ~e:HEV搭載FITの耐久レース参戦記~

e:HEV解体新書(3) サーキットでも「走る喜び」を証明するために ~e:HEV搭載FITの耐久レース参戦記~

e:HEV(イー エイチ イー ブイ)」は、モーターとエンジンを自動で使い分け、日々の快適なドライブをサポートするとても賢いハイブリッドシステム。燃費がいいのはもちろん、さらには走りの楽しさも失わないように作り込まれています。そんなe:HEVを搭載したFITが、耐久レースに参戦。サーキットでの走りでも、“らしさ”を活かせるのか?技術者たちのチャレンジをご覧ください!

 

特集「e:HEV解体新書」

e:HEVの仕組みとは

EV(電気自動車)に近いハイブリッド(Hybrid Electric Vehicle)」という意味から、その名がつけられた「e:HEV」。発電用と駆動用の2つのモーターに、エンジンを組み合わせたパワートレインで、日常走行においては、エンジンの力で発電してほぼモーターのみで駆動、EVのようなスーッという加速の爽快感を味わえます。

さらに、エンジンの得意領域である高速走行時には、エンジンの動力でタイヤを直接駆動するなど、システムが走行状況に合わせて最適な駆動方法を自動で選択。知らず知らずのうちに、快適で高燃費な走りをドライバーに提供してくれる、とても便利なパワートレインなのです。

普段はモーターで静かに走り、 高速走行時にはエンジンも使って 最適な効率と心地よい走りを両立する 普段はモーターで静かに走り、 高速走行時にはエンジンも使って 最適な効率と心地よい走りを両立する
e:HEVの仕組みについて詳しくはこちら

e:HEV 搭載FITで2時間の耐久レースに参戦!

今回e:HEV搭載FITが出場したレースは、栃木県のツインリンクもてぎで開催された「ミニJoy耐」。もともとは、夏に同じくもてぎで開催される7時間耐久レース「Joy耐」を目指していましたが、2020年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催中止に…。しかし、姉妹イベントの“ミニJoy耐”は20年秋に無事開催されたことから、この2時間耐久レースへの挑戦となりました。

「Joy耐」「ミニJoy耐」ともに使用できる車両の種類が幅広く、参加コストを抑えるルールがいくつもあるため、敷居の低さで人気を集めています。2時間の熱く楽しいこのバトルに、なぜe:HEV で参戦するのでしょうか?

“Joy耐用 e:HEV搭載FIT”開発メンバーの3名 左から、四輪事業本部ものづくりセンターの奥山貴也、伊賀上聡、藤川拓也 “Joy耐用 e:HEV搭載FIT”開発メンバーの3名 左から、四輪事業本部ものづくりセンターの奥山貴也、伊賀上聡、藤川拓也
奥山
奥山

「参戦を決めたのは2020年の初めです。きっかけは『Joy耐に新しいパワートレインを積んだクルマで出たい』と、ジャーナリストさんから相談を受けたことです。20年からの3カ年計画で、まず20年の目標は完走。21年にはクラス1位、そして22年には総合優勝を目指すことでスタートしました。でも、活動を始めてみると、一緒にやってきた伊賀上や藤川を始め、一生懸命な若手エンジニアやジャーナリストさんと過ごすうちに、やっぱり、どうせやるなら初年度から勝ちたい、と思うようになりましたね(笑)」

やはりHondaのエンジニア。 “負けるもんか”の精神で臨む奥山ですが、新型FITの開発では車両の動作制御を司る「ダイナミクス領域」を担当。自らが手掛けたクルマをサーキットで走らせる中で、得られるものは多くあると語ります。

奥山
奥山

「レースという“走り”に特化した舞台に合わせた車両を開発して、そのパフォーマンスを確認することは、普段の業務である量産車開発に活かせる面がたくさんあります。今回は、ハイブリッドシステムのe:HEVを使うので、発電した電気をどううまく使っていくかという、エネルギーマネージメントの技術でもフィードバックを得られました」

そのエネルギーマネージメントを担当するのは、新型FITのe:HEVセッティングにも関わった伊賀上聡。e:HEVの強みと、今回用意したレースでの武器を教えてくれました。

伊賀上
伊賀上

「Joy耐に参加するのは実はこれで2回目なんです。前回は、3代目FITでの参戦に、サーキット走行へのセッティングという形で関わっていました。今回はe:HEVでの参戦なので、その長所である駆動モーターによる加速レスポンスのよさと滑らかな走りを活かしたいですね。また、量産車ではドライブ中の燃費性能をアップさせてくれる『ECONスイッチ』を、『バッテリーアシストボタン』に改造したのもポイントです。これを押すことで、バッテリーに貯められた電気を駆動モーターに回し、ここぞというときに加速することができます!」

電気を使う領域が増えるe:HEVだけに、高電圧デバイスが発生する熱の管理も重要。この分野を担当するのは、F1マシンの高電圧ユニット開発に参加した藤川拓也です。

藤川
藤川

「高電圧デバイスの担当として、モーター、インバーター、バッテリーの冷却性能評価を担当しています。コロナの影響で流れてしまいましたが、本来は夏のJoy耐出場を予定していました。モータースポーツが大好きなので、このプロジェクトに参加できたことはとても嬉しかったのですが、冷却性能担当としては正直とても不安でしたね。2モーターハイブリッドで夏のサーキットをガンガン走るなんて大丈夫なのか…って(笑)」

2時間の熱戦、その結果は!?

今回ドライバーを担当するのはモータージャーナリストの橋本洋平さんと石井昌道さん。自動車評論家として長年活躍しながら、自らもレーサーとしてクルマに乗ってきたベテランです。2人とも、Joy耐には10年以上前から参戦しており、そのドライビングに期待がかかります。

左から橋本洋平(はしもと ようへい)さん、石井昌道(いしい まさみち)さん 石井さんはこちらの記事でe:HEVの詳しい解説をしてくれました 左から橋本洋平(はしもと ようへい)さん、石井昌道(いしい まさみち)さん 石井さんはこちらの記事でe:HEVの詳しい解説をしてくれました

しかし、午前中に行われた予選では実力を出しきれなかったのか、31台中25番手とポジションは下位に…。ドライバーやスタッフたちは慌てず作戦会議に入ります。その後、開発メンバーは予選のデータを分析。ドライバーは2人でピットストップでの交代作業を練習するなど、午後の決勝レースに向けてそれぞれできる限りの準備に取り組みました。

午後2時、万全の準備を整えていよいよ決勝レースへ。決勝レースのスタート位置は予選の結果に応じて決まるため、e:HEV搭載FITは後方からのスタートとなりました。

レース前にはスタッフや家族が激励! レース前にはスタッフや家族が激励!

しかし、e:HEVの2モーターを活かした加速により前方のクルマを次々と抜き去り、着実に順位は上昇。そして約1時間経過後に迎えたピットインのタイミングでは、見事なチームワークにより、わずか30秒でドライバー交代を完了!燃費のよさを活かした“給油ゼロ作戦”を採用したこともあいまって、ライバル車よりもピット時間を短くすることができ、予選から大きく順位を上げることに成功しました。

スタートから約2時間後、レースはついにゴールを迎えます。e:HEV搭載FITは25番手から11位まで順位を上げてフィニッシュ! ドライバーもスタッフも、予選からの見事な挽回に大興奮でした。

街でもサーキットでも楽しいクルマ

レース終了後、ドライバーの2人に感想を聞きました。

橋本
橋本

「1時間以上走りましたが、FITの滑らかな走りのおかげで体やクルマにあまり負担を感じませんでした。一方でe:HEV の2モーターを活かした加速はバッチリで、高いポテンシャルを感じましたね。また、ECONボタンを改造した『バッテリーアシストボタン』を使って、コーナーからの立ち上がりなどスピードがほしいときには、ハイブリッドモードで回収したエネルギーを使うなど、エネルギーをどうやりくりするかという今までにはない面白みがこのクルマにはあります。1時間が本当にあっという間。結果も予想以上で嬉しいですが、それよりも運転するのがめちゃくちゃ楽しかったです!」

石井
石井

「順位の目標は決めていなかったのですが、30台以上が走った中での11位という結果には満足しています。予選後のセッティングのおかげでクルマの調子もよく、燃料やタイヤを少し余らせてしまったくらいです。特に加速時の気持ちよさは2モーターのe:HEVならではですね! レースの高速走行用としてエンジン直結モードを使えば、よりパワーを出すこともできるので、まだまだポテンシャルを感じています。FITの走る楽しさ、心地よさを、サーキットで走ってみて改めて感じました」

そして、奥山たちも好結果に顔をほころばせていました。

奥山
奥山

「今日は11月29日、ゼッケン29番で11位!(笑) 予想以上の結果にとても満足しています。ただ、やはりパワーが足りない部分はあるので、2021年に向けてエンジン直結モードを試すなどして、22年までの優勝に向けて頑張っていきます」

日々の研究はもちろん、サーキットでのチャレンジも積極的に行う。エンジニアがこうして“現場”へ出ていくことで新たな課題が見つかり、その解決がよりよいモノづくりへとつながっていきます。

現場を大切にするHondaのエンジニアが磨きをかけるe:HEV、これからの進化にご期待ください!

※新型コロナウイルス感染症対策を実施した上で取材・撮影を実施しています。

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