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第79回 都市対抗野球大会 Honda 硬式野球部

準決勝

第79回都市対抗野球大会

9月8日(月) 14:00
試合会場:東京ドーム

チーム名 1 2 3 4 5 6 7 8 9
新日本石油ENEOS
0 2 0 0 2 0 0 1 0 5
Honda硬式野球部
3 0 0 0 0 0 0 0 1 4

岡野の先制3ランも届かず、Hondaベスト4で惜敗


 9回、今大会3度目のHondaのサヨナラ劇期待する三塁側の大応援はピークに達していた。1点を返して4-5、なおも一発出れば逆転サヨナラという2死一塁の場面。打席は初回に3ランを放っている主砲岡野勝俊(東京農大二→青山学院大)。期待は高まるところだったが、痛烈な当たりだったものの相手の平馬一塁手のミットに納められ、ベースを踏んでゲームセット。その瞬間、祈るような応援は大きな溜息に変わったが、やがて、今大会のHondaの健闘を称える暖かい拍手となった。
 ミラクルにも近い、Hondaの神通力はついにここで力尽きた。しかし、これまでの戦いぶりはHondaの応援団だけではなく、多くの社会人野球ファンにも感銘を与えるものだった。
 予選では本命視されながら、南関東大会では打線が不振で苦しみ、結果として関東代表決定戦にまわることになった。その追い詰められた土壇場で、打線が爆発して本領発揮。5年連続の本大会出場を決めた。さらには、1回戦では0-5とリードを許しながら、そこから同点に追いつき、9回にランニングホームランでサヨナラ。これで勢いづいてベスト4まで進んだ。


 準々決勝でもサヨナラ勝ちしたHondaは序盤その勢いが、この試合にも生きていた。
 プロ球界はもちろん、メジャーもスポーツマスコミも注目するENEOSの田澤純一投手に対して、Hondaはここまで四番を任されていた長野久義(筑陽学園→日大)を一番に起用。四番には主将の岡野を繰り上げた。初回はそれが当たった。1死からまず川戸洋平(日大藤沢→日大)が左前打して口火を切ると、続く小手川喜常(大分商→立正大)は追い込まれたところで死球。1死一二塁で、岡野は狙いすましたように初球を叩くと打球は大きな弧を描いて右中間スタンドに飛び込んだ。いきなりの3ランだ。
 久々の都市対抗先発となったベテランの坂本保(佐伯鶴城)には大きなプレゼントとなる3点だった。
 立ち上がりから慎重にコーナーを突いていた坂本投手だが、微妙なところでボールが先行し、2回も先頭打者を歩かせた。内野安打もあって2死一二塁となった。九番樋口を浅めの右飛で打ち取ったかに見えたが、慎重にいこうとしすぎた長野久義(筑陽学園→日大)が人工芝に足を取られて滑り、スライディングキャッチみたいになってよもやの落球。二者の生還を許してしまった。それでも、坂本投手は後続をしっかりと投手ゴロで仕留めた。


 1点差。リードしているほうに返ってプレッシャーのかかる展開である。次の1点がどうしても欲しいHondaではあるが、さすがにENEOS田澤投手も回を追うごとに調子を上げてきている。最速は150km/hには届かないものの、147km/hを表示していた。この日はスポーツメディアの多くも、田澤投手と長野のドラフト1位候補対決を話題として取り上げていたが、この対決は長野が4打数1内野安打で2三振。結果的には長野が頭を下げる形になった。「ボクも(田澤投手との対決は)思い切り楽しんでいこうと思っていました。だけど、コテンコテンにやられてしまいました」と負けを認めざるを得なかった。
 1点を何とか守りたいHondaだったが、5回悪夢が訪れた。この回、2死からENEOSの二番平馬(東芝からの補強)がしぶとく食い下がって中前打。続く須藤は3回に早々と代打として入っていた選手だが、坂本投手がストライクを取りにいったところを捉え、左翼スタンドにライナーの逆転2ランを叩き込んだ。局面は一転した。坂本の失投というよりは、相手打者の読み勝ちであろうか。坂本投手は、「ちょっとリズムの悪い投球をしてしまいました」と反省する。


 Hondaは6回1死から筑川利希也(東海大相模→東海大)を送り込んで、反撃を待ったが、8回、逆に1点を許してしまう。筑川投手としては今大会初めての失点となった。このあたりにも、いささか流れの悪さが感じられる。
 それでも、9回何とか反撃に出たいHondaは、7回2死満塁で登板したENEOSの二番手廣瀬投手を攻めて、1死から長野が中前にはじき返して出塁。川戸の一打は併殺かと思われたが、相手失策を招いて1死一三塁となる。これには、今大会を通じて発揮されているHondaの不思議な力をまたしても見せつけるのかと期待された。
 すかさず、三番小手川は大きな中犠飛で三塁走者長野を迎え入れる。これで1点差。しかも打席は、初回に3ランした岡野である。期待は高まったが、ついに及ばなかった。


 安藤強監督は試合をこう振り返った。「2点という差はやはり、こういう戦いでは大きかったですね。9回に長野が出て、失策で続いたときはいけるぞと思ったのですが…。坂本の先発は、昨日の準々決勝を見て、ENEOS打線がJFE東日本の左投手に苦しんでいたので、左投手でいこうということでベテランに賭けました。5回の本塁打は痛かったですけれども、よく投げてくれたと思います。結果としては、初回の3点以降追加点が取れなかったことが響きました。走者は出るのですがあと1本が出ませんでした。それだけ、相手の田澤君から連打するのは難しいということだったと思います」
 そして、今大会全体を振り返って、「南関東予選で苦しんで、関東代表決定戦にまわって、そこから這い上がってきて、1回戦でもいい勝ち方が出来ました。あれで、チームは勢いをつけることが出来ましたし、大会通じての収穫は多かったと思います。ただ、坂本以外の左投手をどう成長させるのかということは今後への課題です。今大会、補強選手なしで戦わざるを得ませんでしたが、右の大砲が一枚でもいればということもありました。しかし、私たちの諦めないという粘り強い戦いぶりは示すことが出来たと思います」とベスト4という結果も含めて、自信を持って胸を張って、収穫の多い大会だったと語っていた。
 これをバネに、チームはさらにステップアップされていくであろう。秋の日本選手権、さらには来年へ向けて、期待は高まる戦いぶりだった。