Honda SPORTS

第79回 都市対抗野球大会 Honda 硬式野球部

準々決勝

第79回都市対抗野球大会

9月7日(日) 10:00
試合会場:東京ドーム

チーム名 1 2 3 4 5 6 7 8 9
JFE西日本
0 0 0 0 0 0 2 0 0 2
Honda硬式野球部
0 1
0 1 0 0 0 0 1x 3

Hondaまたもサヨナラ勝ち、「このチームは何かある!」と安藤監督


 Hondaとしては快勝ペースで進んでいた試合だった。ところが7回に代打同点2ランを浴びて、一転して悪い流れになりながらも、最後は不思議な神通力を発揮して、この大会チームとして二度目のサヨナラ勝ちでベスト4進出を決めた。終わってみれば、安打数もJFE西日本を下回り、終盤はおされ気味となりながらも、9回に長野久義(筑陽学園→日大)が執念の安打で出塁すると、バントが相手失策を呼び込むという幸運もあって、劇的なサヨナラとなった。


 Hondaの先発は2回戦で好投した角田理生(鎌倉→国際武道大)で、この日もスライダーが切れ味よくコントロールされて、相手打線に的を絞らせない投球だった。6回まではまさに、まったく危なげのない内容といっていいものだった。その間に攻撃陣も、JFE西日本の藤井投手を打ちあぐみながらもしっかりと得点をしていった。2回には四球の長野をバントで送ると、投手の悪牽制球の間に三塁へ。そして、その直後、多幡雄一(星稜→立教大)がしっかりとスクイズを決めて、無安打で先制。安藤強監督の相手守備陣のわずかな動揺を読んだ巧みな采配だった。
 さらに、4回にも、長野がストレートの四球で出ると、今度は岡野勝俊(東京農大二→青山学院大)が主将の意地を示す右翼線の二塁打で迎え入れた。プロ注目の四番長野が警戒されていずれも四球で歩かされた回に、続く打者たちがしぶとく攻めて得点していくという図式は、ダブルクリーンアップといってもいいくらいに打線に厚味が出来ている。


 しかし、「好事魔多し」とでもいおうか、7回、まさかの同点になってしまった。この回、先頭打者に安打を許すと、JFE西日本は代打永井を送り込んできた。ただ、Hondaベンチのデータとしては、長打に対しての警戒はさほどなかった。ところが、出会い頭的に捉えられた打球は一直線で伸びて、右翼席にまで膨れ上がったHonda応援席に突き刺さってしまった。一瞬声を失ったHonda応援席。快勝ムードは一転して、緊張感で包まれた。それでも、その後を角田がしっかりと抑えて何とか流れが相手に傾きかかったところを同点で食い止めた。この踏ん張りが、最後につながったといってもいいであろう。
 8回からは、当初の予定通りこの大会完璧なリリーフを続けている筑川利希也(東海大相模→東海大)を投入した。ただ、同点ということもあっていくらか力みもあったのか、球がやや高めに浮き気味で、初めての四球を与えてしまった。送りバントは封じたが続く打者にも内野安打を許しいきなり1死一二塁のピンチ。しかし、ここで筑川は本領発揮して、力のあるスライダーを打たせて併殺に切ってとった。これで、嫌な流れを完全に断ち切ったといえよう。


 9回も四球こそ与えたものの、最後は二者連続スイングアウトの三振。見事だった。「先発角田がよく投げていてくれたので、悪い投球をするワケにはいきませんでした。押さえていればバッターが何とかしてくれると思っていました」と打線に期待を託した。
 その打線は9回裏、先頭の長野がしぶとく中前へはじき返して出塁。「大学時代もよくあったんですけれど、神宮ヒットというか人工芝のヒットです」と言うが、これも鋭く速いスイングによってもたらされるものである。警戒され続ける中で、この日はチャンスメーカーに徹した形になった長野だが、この日は出塁がすべて得点に結びついてその役割を十分に果たした。
 続く岡野は好球必打でヒット性だったが、相手右翼手の好守備に阻まれた。1死一塁となって手堅く送りを指示したが、多幡のパントを処理した送球が少しそれて走者と一塁手が交錯。一塁手が後逸する間に一塁走者長野は一気に本塁へ走り込んでサヨナラのホームを踏んだ。長野が、「二塁へ到達したときに球がそれているのがわかったので、あとは一気に走りました。安藤監督は本塁へ(腕を)回すだろうと思っていたのでそれを信じて走りました」と言えば、安藤監督も、「あそこは走者が長野なので、何でも出来ると思っていました。球がこぼれたのが見えたときは1回戦のときと同様に、夢中で腕をぐるぐると回していました(笑い)」と言うように、指揮官と選手の信頼も強い。このあたりが今大会でのHonda快進撃の背景にあるのではないだろうか。


 試合後安藤監督は、「このチームの選手たちは何か(不思議な力)を持っています。マネージャー(大角英)がトスで勝って上手く後攻をとってくれたところから、流れはこっちにありました。角田はよく投げてくれましたし、筑川には『任せたぞ』とだけ伝えました。次は、今大会一番の注目投手(新日本石油ENEOS=田澤純一投手)相手となるでしょうが、秘策はあります」と、勢いに乗るチームらしく、チーム全員への信頼を示し、強豪に対しても自信を漲らせた。
 ちなみに、大会前のオープン戦ではHondaが競り勝っている。
 なお、Hondaは準優勝を果たした2004年以来の4強進出となった。