MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2004年7月号
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交通教育センターレインボー熊本での路上診断
気づくことから安全運転へ

5月号ではシリーズ・高齢ドライバー第1回として、高齢ドライバーの運転行動と意見を紹介しました。今月号では高齢ドライバー特集の第2弾として、全国各地で実施されている高齢ドライバーへの教育の現場を訪ねました。70歳以上の高齢者を対象に3年(70歳の優良運転者・一般運転者は4年)ごとの免許更新時に義務付けられている法定の高齢者講習をはじめとして、どのような教育が実際に行なわれているのだろうか、取材するなかで、その課題などを探ります。

 高齢者講習
東京都小金井市の尾久自動車学校で高齢者講習を受講したのは74歳の牛尾金典さんをはじめとして、瀬川幸子さん、萩原葆生さん(70歳)の3人の方々。高齢者講習は、道路交通の現状や安全運転の知識などの講義、運転適性検査と加齢に伴う視力の変化などについての診断、実車走行による指導を行ない、3時間で終了というプログラムです。
講義は指導員が一方的に話すのではなく、適宜、質疑応答形式を取り入れ受講者自身が考えるように進められます。3人に「日頃、運転している時、何に気をつけていますか?」と質問。運転しやすい軽自動車のワンボックスに乗り換えた萩原さんの答えは、「おだやかにマイペースな運転を心がけています」。続くビデオの視聴では、標識の見落とし、交差点での右直事故、進路変更での衝突、二輪車のカーブ事故の4つの危険場面について、その原因と防止対策を見ます。
講義が終わり、別室に移って適性検査と視力検査。最後に実車による安全運転指導。指導員と受講者3名が1台の教習車に乗り込みます。初めに指導員がコースを案内。S字、クランク、車線変更、右左折、信号機のない交差点の通過などが盛り込まれているコースを走ります。コースを1周すると、受講者が順番に運転を交代し、指導員から運転指導を受けて終了です。
高齢者講習は適正検査、視力検査、実車運転指導などの診断、評価的側面があるので、高齢ドライバーにとっては自分がテストされていると感じがちだ。尾久自動車学校会長の塩地茂生さんは、「高齢者講習に喜んで来ていただけるケースは少ないと思う」と認めます。だからこそ、教習所の高齢者に対する対応が大切になるとして、同校では高齢者専用の講習室を作りました。「来校した時の良い雰囲気や応対の仕方がいい結果を生むのではないでしょうか。最初に私たちに好感を抱いていただければ、その後説明することを好意に受け取ってくれます」と、塩地さんは高齢者講習の対応に細かな配慮をしています。
また、同校講習部長の尾保生さんは、高齢者のカーライフに合ったアドバイスをするように心がけているそうです。「例えば、『次にクルマを買い替えることがあったら周りが見やすいクルマにしましょう』『遠回りでも危なくない道を走りましょう』など、高齢者が知りたい情報を提供していくことです。『いいことを聞いたな』と思って帰っていただく。その中から1つでも2つでも何か気づいてほしい。交通安全教育とは生活安全教育だと考えています」。

 第18回高齢者および婦人交通安全の集い
熊本県の交通教育センターレインボー熊本では、5月26日に「第18回高齢者および婦人交通安全の集い」が開かれました。この集いは、地域の女性、高齢者を対象にクルマを楽しく、安全に運転し、交通安全を身近に感じてもらうことを目的に年2回開かれています。年々、高齢ドライバーの比率が高まっており、この日も大津地区を中心に参加した20名のうち高齢者が18名を占めました。プログラムは、交通指導員講話、高齢者のための安全運転アドバイス、熊本セントラル病院の協力による健康診断、四輪シミュレーター、今回から取り入れた実技体験(路上診断)という構成。実技体験(路上診断)では参加者が運転中、インストラクターが道順を示しながら、注意点があればアドバイスしていきます。

 シルバードライバードック
高齢ドライバーの運転を、人間ドックに見立てて振り返り、安全運転につなげようという高齢運転者の安全運転講習は、埼玉県では埼玉県警察本部と(社)埼玉県指定自動車教習所協会および(財)埼玉県交通教育協会の協催でシルバードライバードックが開かれています。5月17日に行なわれたレインボーモータースクール和光の同ドックには、朝霞・和光・志木地区のシルバー人材センターの会員16名が参加しました。クルマの点検と運転姿勢の基本を行なった後、停止している2台のクルマまでの距離の確認。参加者がそれぞれに距離を答えて、距離感覚の誤差を自覚します。次に実車で視覚・車両感覚の体験。左パイロンに幅寄せ―右パイロンに幅寄せ―前方パイロンにつめる―後ろパイロンに寄せる、の4つの課題を交代で体験します。この後は法規走行でコース内を周回。教室に戻って指導員がまとめを行ない、適正診断票と修了証を交付して、3時間の講習は終了しました。

 シニアドライバーズスクール
再教育の機会として、(社)日本自動車連盟(JAF)、(社)日本自動車工業会、(財)全日本交通安全協会の主催で実施しているのが50歳以上を対象にしたシニアドライバーズスクールです。5月29日に神戸市中央区ポートアイランドで開かれた同スクールには22名が参加しましたが、そのうち65歳以上の高齢者は6名。午前10時から午後4時までの講習は、日常点検の方法、運転姿勢、スラローム走行、昼食をはさんでブレーキング、交差点の右折方法と信号機がなく見通しの悪い交差点の通過方法、狭い場所からの脱出と、盛りだくさんのプログラム。ブレーキングでは滑りやすい路面でのABSの装備されているクルマと装備されていないクルマでのブレーキ体験も入れるなど内容の充実ぶりがうかがえました。

SJ7月号では各教育現場の講習の様子や参加した高齢者の声も紹介しています。
尾久自動車学校での高齢者講習

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