MONTHLY THE SAFETY JAPAN●2003年4月号
武井正子
順天堂大学スポーツ健康科学部教授

お茶の水女子大学文教育部卒業。平成5年より現職。専門分野は運動教育学。
幼児から高齢者まで幅広く健康づくりの運動についての研究活動を行なう。
平成元年から全国老人クラブ連合にかかわり、「健康をすすめる運動」
推進委員会委員、「シニアスポーツリーダー研修会」の企画・指導、など
「いきいきクラブ体操」のデザイン等を手がける。日本フェルデンクライス協会会長、東京都生涯学習文化財団評議会、東京都健康づくり都民会議委員、
全国老人クラブ連合会評議員、日本交通安全教育普及協会評議員。

バランスの低下が招く高齢者の転倒

高齢者の転倒には、バランス感覚の低下も関わっています、と武井さん。自治体や老人クラブ単位で実施されている高齢者向け体力測定の結果を毎年分析していますが、高齢者は平衡感覚の衰えが顕著だといいます。
「とっさにクルマをよけるなど、バランスよく反応する能力を司るのは脳神経系。これは10歳頃までに最も発達するので、成人後は、よほど刺激を与えない限り低下するのみ。老化と運動不足がそれに拍車をかけます」。
筋力の低下は、姿勢も悪くします。有料老人ホームの後期高齢者(75〜83歳)22名を対象に重心位置を測定したところ、姿勢の悪い人は重心位置がかかと寄りになっていることがわかりました。不安定なので、膝を曲げてあごを突き出してどうにかバランスを取っています。「腹筋、背筋が弱いと、こういう姿勢になりがち」だといいます。
そこで、歩行、軽体操、筋力アップの運動などを1時間、週1回、3カ月実施したが、効果は得られませんでした。「効果が出たのは週3回1時間のペースで7カ月後。大切なのは、頻度と継続。同じくらいの年齢の仲間と励まし合いながら、日常的に続けていくことも大切」。そのため、老人クラブの健康活動の中心となるシニアリーダー養成にも力を入れています。

SJ4月号では、高齢ドライバーの体力維持の問題や、子どもたちの運動不足など、いま武井さんが気になることについてもおうかがいしています。


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