アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト支援
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2022年11月に行なわれた「第35回アイデア対決・全国高等専門学校 ロボットコンテスト」(通称“高専ロボコン”)の全国大会。個性の光るロボットたちが接戦を繰り広げる会場で、モーションキャプチャー技術を導入した独自性あるロボットで注目を集め、見事Honda賞を受賞したのが、富山高等専門学校(富山高専) 本郷キャンパス Aチームだ。

今回は、富山高専のチームメンバーたちを取材し、活動の様子やロボコンに懸ける想い、さらにそれぞれが目指したい未来や夢に迫った。

学生たちが自作ロボットでアイデアと
技術を競い合う
“高専生の甲子園“
高専ロボコン

“高専ロボコン”は、若きモノづくりの担い手である高専生たちが、毎年設定される競技課題のもと、アイデアと技術力を駆使してロボットを自主製作してその成果を競う、“高専生の甲子園”ともいわれる伝統的な競技大会。Hondaはこの大会に2002年から協賛しロボットづくりに独創的なアイデアや工夫が光るチームに「Honda賞」を贈呈している。
「ミラクル☆フライ ~空へ舞いあがれ!~」が競技課題だった2022年の大会は、自作の紙飛行機をロボットで飛ばし、点数を競い合う対戦形式で開催された。

2022年度高専ロボコン全国大会のレポートはこちら! 2022年度高専ロボコン全国大会のレポートはこちら!

「自分たちが一番作りたいものを」
こだわりと想いを貫いた

富山高専の親子ロボット
「SKY×FAMILY」

富山高専が制作したのは、紙飛行機を飛ばす親子をモチーフにしたロボット。大会では高得点狙いのロボットが多く登場する中、敢えて難易度の高い技術を用いたモノづくりへのこだわりが高く評価され、Honda賞受賞の決め手になった。
そんな富山高専のロボット「SKY×FAMILY」のこだわりポイントや制作に懸けた想いを聞いた。

手前のピンクのロボットが子ども。その後ろで子どもを支えるように配備されているのが親のロボット。

ココが
凄い01
人の動きを
リアルに再現

モーションキャプチャー技術を使って人が紙飛行機を投げるジェスチャーをパソコンに取り込み、ロボットで再現。スナップを効かせた滑らかな腕の動きを可能にするために、腕に使用するバネの数やかかる力の強弱を変えるなど、細かい調整には苦労した。

透明なチューブの中に通された青いアイテムが「フレキシブルラック」。

ココが
凄い02
発想の転換で生まれ変わった
「フレキシブルラック」

透明なチューブの中に通された青いアイテムが「フレキシブルラック」。

紙飛行機の装填数を増やすためには、紙飛行機を射出口に送り出すまでの距離をできるだけ長く確保する必要があった。そこで活躍したのが「フレキシブルラック」。パーツを曲げて曲面を作ることで、直線形状のアイテムよりも射出口までの距離を長めにとることができる。もともと別の用途で使用していたが、発想の転換で活用を思いつき、装填数を1つ増やすことに成功!

ココが
凄い03
コロコロ変わる、
子ロボットの愛らしい表情

地区大会後、全国大会までの期間で機体を一新した際に取り入れたのが子ロボットの表情だ。顔部分にはLEDが配備されており、プログラムで表情が変わる仕様になっている。「真顔、笑顔、悲しい顔」の3パターンでコロコロと表情を変える愛らしい姿は、会場にいた他の高専生からも「かわいい!」と好評だった。

富山高専(本郷キャンパス)
チームリーダー 保江龍聖さん

目指したのは、得点よりも
“見ている人を楽しませること“

見ているだけでも、ほっこりする富山高専のロボット。地区大会では子ロボットだけが投げる仕組みだったものを、全国大会に向けて親ロボットも投げる形に大幅改良した。時間がないことは重々承知していたが、「もっと面白いものを作りたい。得点よりも魅せるパフォーマンスで観客を楽しませたい」というチームの想いが、このハイリスクな大改良という行動に彼らを走らせた。「他の高専さんとは異なるアプローチで全国大会出場を狙ったというのもありますが、親子をモチーフにしたのは、ストーリー性を出したかったからです。実は、地区大会の会場で紙飛行機を飛ばそうとした親子がいて、その姿を見た観客から『がんばれ』と応援の声が上がるなど、会場が温かい空気に包まれたんです。こういうシーンをロボットで再現したいと思い、見ている人が応援したくなるようなロボットに挑戦しました」。全国大会では一部の機構しか動かせず悔いが残る点もあったそうだが、ロボットを見て沸く会場の反応からは、自分たちの想いが伝わったという手応えを感じることができた。

ここが親子ロボット誕生の場所! メンバーがロボット制作に
打ち込む部室を紹介

授業が終わると誰それとなく集まり、話し合いと作業を行う部室。部室の向かいには加工室があり、ロボットの加工や組立を行う大型の機械が完備されている。
ホワイトボードに殴り書きされた文字、出入口に貼られた「電源を切ったか?」と注意事項が書かれた紙や室内に置ききれず廊下に置かれた大量の資材などがある部室の様子からは、ロボット制作に熱中するメンバーたちの姿が浮かんでくる。

「国技館」などユニークな表示があるサインプレート 。

室内には、あらゆる工具が所狭しと並べられている。

危険を伴う作業が発生する加工場。室内各所に安全に関する注意事項が書かれている。

年間活動スケジュール

アイデア出し
どんなロボットを作るのかをアイデア出し
コンセプト決め
各班で話し合い、
製作ロボットの方針を決定
ロボット製作
夏休み期間中も集まり、本格的に製作作業
・機械班:3D CADを使って設計後、加工、組立を実施
・制御班:プログラムを書き、動作を検証
・回路班:モーター基盤を製作
競技練習
最終調整
大会終了後
大会終了後は、部内ロボコンを開催。
後輩の教育や技術力向上に注力。

ロボコンを通じて学んだ、創意工夫と
チーム連携の大切さ

2022年大会の競技課題は、ロボットで紙飛行機を飛ばすという難易度が高いもの。開発の中で特に大変だったのは紙飛行機の装填だった。たとえば重さのあるボールだと上から落として装填できるが、紙飛行機だと浮力が出る分浮いてずれてしまい、うまく次発の紙飛行機を重ねていくことができない。5年生の先輩のアドバイスを受けながらいろいろ試し、うまい装填方法を探すだけでも1ヶ月を要したそうだ。また、活動中はチーム内で情報共有がうまくできず、作業に支障がでる場面もあったが、slackなどアプリを活用することでチーム連携を強化していった。さらに大会会場では、予期せぬ事態も発生。試走場でロボットが暴走したほか、投げる動作をした際にモーターのノイズでロボットの顔の信号が乱れ、急遽会場付近でアルミホイルを購入して対処するなどの緊急対応に追われたそうだ。しかし、どんなトラブルに見舞われても問題解決に向けて迅速に動けたのは、日頃培ってきたメンバー同士の信頼感、モノづくりに懸ける情熱があったから。気持ちを一つにして困難を乗り切った経験は、チームにとって大きな自信につながった。

想いを胸に技術を引き継ぎ、
次世代につ
なげていきたい

また、そうした経験の積み重ねが彼らに教えてくれるのは、エンジニアとしての責任感とモノづくりの楽しさだ。「自分が抜けたらチームが成り立たないということを各々が分かっている。だからこそ、みんな自分の仕事はやらなければいけないという責任感があるんだと思います」(機械班リーダー 渡邉さん)。「普段の学校生活の中では挑戦できる機会がなかなかないので、ロボコンに挑戦することで達成感を得られます」(回路担当 野村さん)。「作ったものが目に見えるようになって動くと達成感があるし、うれしい。ロボット製作は学びに終わりがない。だから楽しいし、続けちゃうんですよ」(制御班リーダー 山本さん)。
そんなモノづくりに魅了されたメンバーが集うチームのこれからの目標は、先輩たちの技術を受け継ぎ、次の世代につなげていくこと。先輩方が培ってきてくれたものを自分たちがしっかり受け継ぎ、新入部員たちに引き継いでいく。その決意を胸に、今日もメンバーたちはロボット作りに邁進している。

若きエンジニアとして挑み続ける
メンバーたちが目指す未来

保江龍聖さん
(4年・チームリーダー、
電気班リーダー)

世の中に面白いものを
生み出したい

ロボットに関わらず、モノづくりを通して世の中に面白いものを生み出したいです。そして、自分がする仕事に対しては、常に愛着や誇りを持っていたいなと思います。

渡邉丈留さん
(4年・機械班リーダー)

今の経験を誇れるような
仕事に就きたい

活動中は大変なことや辛いこともありますが、それでも振り返った時に、「この部に入ってよかった」と今の経験を誇りに思えるような仕事に就いていたいです。

山本哲也さん
(3年・制御班リーダー)

誰かの役に立つものを
作りたい

誰かを助けたり、世の中のためになるようなロボットやアプリを作ること。それが僕の夢です。

竹内一晴さん
(3年・回路班リーダー)

自分が楽しめることを
やり続けていきたい

これまでの3年間、ロボコンに挑戦することが本当に楽しかった。その気持ちを大切にして、自分が好奇心を持って楽しいと思える仕事をやりたいと思います。

池田航太朗さん
(3年・制御担当)

作りたいのは、
人の心を打つもの

ロボコンに参加して、点を取るだけがすべてじゃないことを知りました。点数に加算されなくても、一技術者として人の心を打つようなものを作っていきたいです。

高岡敦士さん
(3年・機械担当)

なりたいのは、何事も
こだわりを持って
取り組める人

モノづくりだけでなく、どんな分野でも一つ一つのことにこだわれる人間になりたい。その結果、誰かに喜んでもらうことができたらうれしいです。

中村祐輔さん
(3年・制御、装飾、
映像担当)

人の気持ちを動かす立場
でありたい

何かを作ることで人を喜ばせたり、人の気持ちを動かせる。そんなことに携われる立場にいられたらいいなと思います。

野村葵さん
(2年・回路担当)

夢は環境改善と人助けに
つながるロボット作り

将来は、労働現場などで苦労している人達の助けになるような、産業用ロボットの開発に携わりたいです。

夢を抱いて、走り続ける
若きエンジニ
アたちの挑戦を
全力で応援したい

「人を楽しませたい」という想いを持って、自分たちのモノづくりを貫き通して会場を沸かせた富山高専Bチームのメンバーたち。

想いが原動力に、そして技術が車輪となって、人の心を動かす。それを実証してくれた彼らの一途にモノづくりに取り組む姿からは、たくさんの人たちを幸せにする未来を感じることができる。

Hondaはこれからも、夢を追い、走り続ける未来のエンジニアたちを応援してまいります。