Hondaは、世界初※の自律行動制御技術を新たに搭載した、ヒューマノイドロボット「新型ASIMO」を発表しました。「新型ASIMO」は、自律性がさらに高まり、人の操作を介在せずに連続して動き続けることが可能となりました。また、知能面、身体面ともに状況適応能力が格段に向上したことで、多くの人が行き交うパブリックスペースや、オフィスといった環境での実用化に、また一歩近づきました。
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ロゴマーク
Hondaは、「技術は人のために」という創業の精神のもと、新しい製品の創造や技術の進化に挑戦しています。ヒューマノイドロボット研究についても、人の役に立ち、人間社会の生活を豊かにするという夢の実現に向けて、ヒューマノイドロボット「ASIMO」の開発を行ってきました。
このようなヒューマノイドロボット研究から生まれるロボティクス技術と応用製品の総称を「Honda Robotics」と定めました。引き続きヒューマノイドロボット研究を続けていくとともに、量産製品への転用や応用製品の実用化にも積極的に取り組んでいきます。
この「Honda Robotics」の考え方を踏まえて今回、ASIMOで培った多関節同時軌道制御技術と姿勢制御技術を応用し、人が立ち入れない危険な場所や、足場が不安定な場所で作業を行う「作業アームロボット」の試作機も公開しました。
- ※Honda調べ(11月8日現在)
新型ASIMO
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新型ASIMO
「新型ASIMO」は、周囲の人の動きに合わせて自ら行動する「判断」能力を備えたことによって、これまでの「自動機械」から「自律機械」へと進化しました。
Hondaは、自律機械としてのロボットに必要な要素を、(1)とっさに足を出して姿勢を保つ「高次元姿勢バランス」、(2)周囲の人の動きなどの変化を複数のセンサーからの情報を総合して推定する「外界認識」、(3)集めた情報から予測して、人の操作の介在なしに自ら次の行動を判断する「自律行動生成」の3つに定め、これらを実現する技術を開発しました。
これらの能力が備わったことで、「新型ASIMO」は人と共存する環境下での実用化にまた一歩近づきました。
知的能力の進化
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お客様へのプレゼンを中断し、お客様に飲み物が 来たことを知らせるASIMO
人間の視覚や聴覚、触覚などに相当する各種センサーからの入力情報を総合的に判断し、周囲の状況推定や、自身の対応行動の決定など、知能化の基盤技術となるシステムを新たに開発しました。この技術により、行動の途中であっても、相手の反応に応じて別の行動に変更するなど、人の動きや状況に合わせた応対が可能となりました。また、視覚センサーと聴覚センサーを連動して、顔と音声を同時に認識することによって、人間では難しい、複数人の発話を同時に聞き分けることが可能となりました。
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人の歩く方向を予測して、ぶつからないように進むASIMO
また、あらかじめ設置した空間センサーからの情報に基づいて、人の歩く方向を数秒先まで予測して、自らの移動予測位置と衝突する場合は、別の経路を素早く生成して歩くことも可能となりました。
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3人が同時に発する言葉を聞き分けるASIMO
身体能力の進化
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時速9km走行時の脚の動き
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両足ジャンプで宙に浮いた瞬間
「新型ASIMO」は、従来よりも脚力をアップ、脚の可動域を拡大したことに加え、着地位置を動作中に変更できる新たな制御技術を取り入れたことで、歩行や走行、バック走行、片足ジャンプ(ケンケン)、両足ジャンプなどを連続して行えるようになりました。このように俊敏に動けるようになった結果、凹凸のある路面でも安定姿勢を保って踏破するなど、変化する外部の状況に、より柔軟に適応できるようになりました。
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凹凸のある路面を踏破するASIMO
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片足ジャンプ(ケンケン)で歩行するASIMO
作業機能の向上
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水筒を握り、ふたを開け、紙コップに水を注ぐASIMO
手のひらに触覚センサー、5指それぞれに力センサーを内蔵し、さらに各指を独立して制御する高機能小型多指ハンドを開発しました。「新型ASIMO」では、これを視覚と触覚を合わせた物体認識技術と組み合わせることで、例えばビンを手に取ってふたをひねる、液体が注がれる柔らかい紙コップを潰さずに把持するなどの作業を器用に行うことが可能となりました。また、複雑な指の動きを必要とする手話表現も可能となりました。
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手話で“家族”を表現をするASIMO
主な仕様
1.サイズ | 身長 | 130cm | |
幅 | 45cm | ||
奥行 | 34cm | ||
重量 | 48kg(従来比 -6kg) | ||
2.性能 | 最大速度 | 時速9km(従来 時速6km) | |
稼働時間 | 40分(歩行時) ※自動充電機能により連続稼働が可能 |
||
3.関節自由度 | 頭部 | 3 | 合計57自由度(従来比+23自由度) |
腕部 | 7×2 | ||
手部 | 13×2 | ||
腰部 | 2 | ||
脚部 | 6×2 |
ロボティクス技術と応用製品の総称を「Honda Robotics」と設定
人を知り、人に学ぶ、「人」研究は、Hondaのものづくりの根源です。Hondaは、ヒューマノイドロボット研究をその重要な柱の一つであると位置づけるとともに、知能を持つ究極のモビリティーである「人」のさまざまな機能の具現化に取り組んできました。
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ロゴマーク
ASIMOに代表されるヒューマノイドロボット研究から生まれるロボティクス技術とその応用製品を今回、「Honda Robotics」と定め、ロゴマークを設定しました。
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リズム歩行アシスト
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体重支持型歩行アシスト
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U3-X
本日発表の「新型ASIMO」「作業アームロボット」だけでなく、既に発表しました、脚力が低下した人の歩行をサポートする「リズム歩行アシスト」、体重の一部を機器が支えることで脚にかかる負担を低減する「体重支持型歩行アシスト」、前後左右や斜めへの自由自在な動きをコンパクトな一輪車スタイルで実現した「U3-X」も、ヒューマノイドロボット研究で培った二足歩行技術やバランス制御技術を応用したものです。
今後もHondaは、移動する喜びや楽しさを拡大する次世代のモビリティーの提案を目指し、「ASIMO」や「歩行アシスト」「U3-X」などにつながるロボティクス研究を続けていきます。また、そのような応用製品の実用化にも積極的に取り組んでいきます。
作業アームロボット
「ASIMO」の技術を応用して開発した「作業アームロボット」(試作機)は、人が作業できないような危険な場所や災害現場などにも、自走式台車に乗せて移動させることができ、不安定な足場や障害物が多く狭い場所でも、遠隔操作で作業対象にアプローチし、安定的に作業を行うことを可能としました。
「ASIMO」の歩行や走行で使われている姿勢制御技術を応用することで、足場を固定できない不安定な場所でもアームの先端姿勢を安定させ、必要な作業出力を発揮できます。また、「ASIMO」で培った、コンパクトなレイアウト構造設計技術と、手足の関節に組み込まれた57個ものモーターを同時に制御する多関節同時軌道制御技術を応用し、配管などが複雑に入り組んだ狭い環境下においても、障害物を回避して対象物にアプローチすることを可能としました。
開発段階では配管のバルブ開閉作業を想定していますが、アームの先端を交換することで多様な作業に応用できるようになります。
主な仕様
1.全長 | 1583mm(アーム長) |
2.全幅 | 338mm(台座部) |
3.奥行き | 391mm(台座部) |
4.重量 | 29.5kg |
5.関節自由 | 10自由度(先端ツール部分含む) |
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作業アームロボット
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作業アームロボット