CEOメッセージ 三部 敏宏

お客様に選ばれ続ける価値を、
速く確実に届ける

取締役
代表執行役社長
最高経営責任者 三部 敏宏

CEOメッセージ

お客様起点に立ち返り、
厳しい現実を変革の出発点にする

Hondaは創業以来、「人の役に立ちたい」という想いを原点に、自由な移動の喜びを届けてきました。二輪、四輪、パワープロダクツ、マリン、航空機へと事業を広げてきたのも、より多くのお客様の暮らしや可能性を支えたいという想いがあったからです。
その原点は、これからも変わりません。一方で、いま私たちは、これまでの延長線上では乗り越えられない厳しい現実に向き合っています。2026年3月期は、四輪電動化戦略の見直しに伴う損失計上により、株主の皆さまをはじめ、多くのステークホルダーの皆さまにご心配をおかけしました。私は、経営トップとして、この結果を重く受け止めています。
Hondaは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、取り組みを進めてきましたが、将来の損失回避の観点から、北米でのEV3モデルの投入中止を決定しました。しかし、「HondaはEVから撤退するのか」というと、決してそうではなく、地域ごとのニーズや普及スピードに応じてEVを販売しており、北米でも、市場環境やお客様の需要動向を見極めながら、引き続き仕込みを行っています。
一方で、四輪事業の課題の本質は、単なるEV市場の減速だけではありません。本質的な問いは、お客様が求める価値を、適正な価格で、適切なタイミングに届けるものづくりが、本当にできていたのか、ということです。
現在、HondaのHEV(ハイブリッド車)がお客様に選ばれているのは、厳しい状況にあってもお客様と向き合い、技術と商品を地道に磨いてきた結果です。EVをはじめとするこれからの商品づくりでも、この姿勢を貫きます。技術的な課題を一つずつ解消し、お客様が価値を実感できる商品へと着実に進化させていきます。
Hondaフィロソフィーの原点は、人の役に立つことにあります。技術を磨くことも、事業を成長させることも、その先にお客様や社会への価値があって初めて意味を持ちます。今回の経験を通じて、私たちの判断や行動がその原点に照らして十分だったのかを問い直しています。Hondaがこれからもお客様に選ばれ続けるために、事業構造、意思決定、仕事の進め方を見直します。

四輪事業の再構築を通じて、
Hondaの仕事の進め方を変える

インタビュー風景(三部 敏宏)

まず取り組むのは、2030年までに四輪事業の収益基盤を確かなものとすることです。これは、利益を回復するためだけの取り組みではありません。お客様に魅力ある商品を届け続け、将来に必要な投資を続けるための基盤を整える取り組みです。
四輪事業では、回復に向けた取り組みを3つの柱で進めます。1つ目は、経営資源の戦略的再配分です。足元では、Hondaが強みを持つハイブリッド車をさらに磨き、北米、日本、インドなどの重点地域で、お客様に選ばれる商品を広げていきます。ハイブリッド車は最終的なゴールではありませんが、カーボンニュートラルへ向かう過程において、引き続き、お客様のニーズにお応えする価値として、事業を支える重要な技術・商品として位置付け、進化させていきます。
2つ目は、ものづくり体質の徹底強化です。競争力の基準は大きく変わりました。商品開発のスピード、コスト、生産の仕組み、デジタル活用は急速に進化しています。従来の開発期間のままでは、発売時には技術の鮮度が落ちることもあります。お客様に新しい価値を届けるには、開発費、開発期間、開発工数を見直し、より速く、より柔軟に商品を生み出す仕組みに変えなければなりません。設計、テスト、生産準備、お取引先様を含むサプライチェーンまで、ものづくり全体の流れを変えていきます。
3つ目は、外部リソースの戦略的活用です。ソフトウェアを起点に価値が更新されるSDV時代には、IT、通信、エネルギーなど多様な領域の技術が移動価値を高めます。全てを自前で抱えることは現実的ではありません。Hondaが自ら磨くべき領域を見極めながら、外部の技術や知見を柔軟に取り入れ、スピード、柔軟性、コスト競争力を高めます。
地域戦略では、まず、どの市場でも戦えるコスト競争力をものづくりの基盤として整えます。その上で、グローバルで統一した仕様を各地域に当てはめるのではなく、地域のお客様が求める価値と価格から、必要な機能を見直します。そして、各地域で培った知見をHonda全体に還元し、お客様が求める価値と競争力ある価格を両立するものづくりへ変えていきます。
こうした方向性に基づき、四輪事業の再構築を確実に進めていくとともに、二輪や金融が持つ強い事業基盤も、Honda全体の力として生かしていきます。さらに、二輪、四輪、パワープロダクツ、金融それぞれの強みをつなぎ、お客様により幅広い価値を届けることで、Honda全体の持続的な成長につなげていきます。

環境と安全の目標は変えず、
そこに至る道筋を進化させる

私たちが目指すのは、足元の収益回復だけではありません。その先に、Hondaがどのような価値で選ばれる会社になるのか。この問いに向き合い、持続的な成長戦略を具体化していきます。
Hondaは、誰もが「自由な移動の喜び」を享受できるサステナブルな社会の実現を目指しています。その中心にあるのが、環境と安全です。事業環境や技術の道筋は変わっても、2050年に向けて掲げる「Hondaの関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラル」と、「Hondaの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロ」という方向性は変えません。これは精神論ではなく、総合モビリティカンパニーとして果たすべき責任です。
一方で、そこに至る道筋は一つではありません。将来的にはEVが大きな役割を担うと考えていますが、全ての用途が一つの技術に置き換わるわけではありません。地域ごとのエネルギー政策、お客様の使い方、商用・産業用途、暮らしを支えるモビリティなどに応じて、EV、ハイブリッド、燃料電池、カーボンニュートラル燃料、カーボンオフセット技術など、多様な手段を組み合わせていきます。
企業として社会的な責任を果たしながら、お客様に選ばれる良い商品をつくる。その両立こそが経営の役割です。Hondaはこれまでも環境・安全技術を大切にし、長く取り組みを続けてきました。これからも、環境課題に正面から向き合い、自由な移動の喜びを持続可能な形で届け続けます。
安全についても同じです。安心して移動できることは、自由な移動の前提です。次世代ADASやソフトウェア、データの活用を通じて、操る喜びと、安心で快適な移動体験を両立させます。環境と安全を、お客様が日々の移動の中で実感できる価値へ変えていくことが、Hondaの重要な使命です。

環境と安全の目標は変えず、そこに至る道筋を進化させる

技術を、事業と価値創造プロセスにつなげる

Hondaには、エンジン、電動化、安全、知能化、制御技術、ソフトウェア、データなど、長年磨いてきた技術があります。ただし、技術を持っていることと、その技術がお客様や市場から価値として認められることは同じではありません。技術で優れていても、お客様に選ばれる商品や体験として届かなければ、社会に価値を提供し続ける力にはなりません。
私たちは、技術と事業化のつながりを一層強化していきます。技術をどのようなお客様に届けるのか、どのような商品やサービスとして成立させるのか、どのように事業として継続させるのか。その実行力をさらに高めていきます。
総合モビリティカンパニーとしてのHondaの可能性は、地上の移動だけに閉じるものではありません。空、海、宇宙、さらに将来の新しい移動領域まで、人の可能性を広げるモビリティには発展性があります。重要なのは、それを夢のままで終わらせず、お客様にとっての価値、そして事業としての成長へつなげることです。
そのために、仕事の進め方そのものを変えます。お客様の期待を起点に、商品企画、技術、開発、生産、販売、サービス、データによる改善までを一つの流れとして連鎖させ、部門ごとの改善にとどまらず、Honda全体で価値を生み出し続ける仕組みに変えていきます。
社内のデータをつなぐことは、ゴールではなくスタート地点です。その先で、どのような価値を見いだし、お客様に届けるのかを考えることは、人にしかできない本質的な仕事です。AIやデジタルは、人に置き換わるものではありません。Hondaに集う一人ひとりの個性、能力、経験、そして「もっと良くしたい」という熱量をベースに、デジタライゼーションを組み合わせ、新たな価値の創造を充実、加速させていきます。

夢を現実の価値に変えるため、
All Hondaで前へ進む

Hondaにとって夢とは、現実からかけ離れたものではありません。「こんなことができたらいい」「それが実現したら、移動と暮らしが進化する」。そう考え、現実のものにしていく力そのものです。
今までできなかったことをできるようにする。世の中を良い意味で驚かせる。その積み重ねが、新しい価値を生みます。私たちが「The Power of Dreams」に込めているのは、一人ひとりの夢を、人と社会を前へ動かす力に変えるという意思です。夢を形にし、お客様の心と暮らしを動かす価値として届け続けること。それがHondaらしい成長の原動力です。
お客様がまだ気づいていない価値を形にし、社会に届ける会社こそが成長します。夢を現実にすることは、大きな技術開発だけの話ではありません。小さな改善から大きな挑戦まで、あらゆる仕事の中にあります。
その意味で、原点に立ち返るとは、過去のやり方に戻ることではありません。私たちの活動の原点であるHondaフィロソフィーを軸に、人の役に立つ価値を、いまの時代に合う形でつくり直すことです。変えようとしないことが、いま最も大きなリスクです。従業員一人ひとりが「こうすればもっと良くなる」と考え、声に出し、行動に移す。その挑戦を、経営が支える会社にしていきます。
四輪事業の収益基盤の確立と持続的な成長戦略の具体化を同時に進め、総合モビリティカンパニーとして、環境と安全への責任を果たしながら、自由な移動の喜びを持続可能な形で届け続けるために、Honda自身を変えていきます。
全ては、お客様や社会の期待に応え、さらにはその期待を超えて新たな感動を届けるためです。これからも夢を原動力に、Hondaは挑戦し続けます。今後のHondaにご期待ください。

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