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Goodwood 2005

2005年、Hondaの参加マシン
いよいよ、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードの開催が目前に迫ってきた。6月24日(金)~26日(日)の3日間、ヒストリックマシンを愛する人たちが待ちに待った“年に一度の祭典”が開催されるのだ。
このイベントで最も盛り上がるのは、グッドウッドの広大な敷地を貫く全長1.16マイル(約1.856km)のヒルクライムで行われるタイムトライアルである。
今回は、往年の名選手から現役の選手までが新旧の二輪車・四輪車を操って競うこのタイムトライアルに出場するマシンについてご紹介したい。
タイムトライアルに出場する車両のほとんどは、ツインリンクもてぎ内にあるHonda Collection Hallから航空便でイギリスへと送られる。もちろん、ただ輸送されるだけではなく、事前に入念なレストア作業が行われるのだ。レストアのポイントは、「当時のエンジン回転数で走ることができ、当時のマシンの気持ちのよい走りとエキゾーストノートを再現する」こと。
往年の名選手たちに、「当時の気持ちのままで」存分に走ってもらい、その変わらぬ走りとエキゾーストノートを来場された方々に楽しんでもらうことを願いレストアが行われるのだ。
ハード面で重要なのは、エンジンがきちんと高回転で回り、ブレーキが正確に働き安全に走れること。それが、「当時の気持ちのままで」マシンに乗るために欠かせない条件となる。その上で、ハンドリングのバランスなどもじっくりと煮詰めていく。
前話でも触れたが、レーシングマシンは、基本的に参戦するレースを走り切るだけのギリギリの耐久性しか持たないため、エンジンに火を入れることだけでも大変な作業なのである。劣化が進んだパーツを当時と同じレベルに修復し、当時のレースで回していた回転数まで上げて走ることができるようにするには、非常にデリケートな調整が必要なのだ。
また、マシンのペダルの位置やシートの形状などは、そのマシンで活躍した往年の選手のセッティングが保存されており、その状態のまま、できるだけ当時のスタイルでテストを行うのだ。
たとえば、元WGPライダー、フレディ・スペンサーはシートの前側に乗るので、テストライダーも前側に乗って走りのバランスを見ている。また、RC149など1960年代の古い時代のマシンでは、タンクに伏せるような当時のライディングフォームでテストを行う。マシンのハード面だけでなく、乗り方にもこだわっているのだ。
こうした入念なレストア作業は、マシンを梱包する直前まで行われ、イギリスに着くと、今度は現地の気候に合わせたキャブレターのセッティングなどが行われる。
手塩にかけて仕上げたHonda歴代レーシングマシンが、これまでになくたくさん集う2005年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード。それでは、タイムトライアルに挑むマシンとライダー&ドライバーをご紹介しよう。
二輪マシン(抜粋)
RC116
1966年マン島TTレース優勝マシン(Rider: ラルフ・ブライアンズ)
Hondaは世界グランプリ50ccクラスに、世界初の空冷4サイクル2気筒エンジンを搭載したRC112を投入。RC116はその最終型である。最高出力14PS以上/21,500rpmを誇り、9速のトランスミッションを搭載。1966年に6戦中3勝を挙げてコンストラクターズタイトルを獲得。当時、史上初となる、Honda車によるWGP 5クラス制覇の一翼を担った。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、当時のライダーであるラルフ・ブライアンズ。

RC149
1966年WGP第6戦東ドイツGP・125ccクラス優勝マシン(Rider: ルイジ・タベリ)
世界初の125cc空冷4サイクル5気筒エンジンを搭載したロードレーサー。最高出力34PS以上/20,500rpm。8段変速。1965年日本グランプリで2位となったRC148の発展型。1966年に5勝を挙げ、コンストラクターズ及びライダーズのダブルタイトルを獲得した。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、当時のライダーであるルイジ・タベリ。

RC166
1967年マン島TTレース優勝マシン(Rider: マイク・ヘイルウッド)
2サイクル勢が力をつけたため、Hondaはそれまで4気筒だった250ccクラスに、さらなる高回転を実現した6気筒のRC166を送り出す。最高出力60PS以上/18,000rpm。7段変速。1967年のWGP 250ccクラスで13戦7勝。コンストラクターズ及びライダーズタイトルを獲得し、前年に引き続き2年連続ダブルタイトルを挙げた。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、スチュワート・グラハム。

RC173
1966年WGP・350ccクラスチャンピオンマシン(Rider: マイク・ヘイルウッド)
1967年に8戦中7勝を挙げたRC174の前のモデルで、あまり見ることができない貴重なマシン。専用設計でWGP 350ccクラスにデビューしたRC171の進化版。1966年WGP 350ccクラス10戦6勝。コンストラクターズ及びライダーズのダブルタイトル獲得。空冷4サイクル4気筒DOHCエンジン搭載。最高出力62PS以上/13,500rpm。6段変速。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、ボブ・ヒース。

RC181
1967年WGP第5戦オランダGP・500ccクラス優勝マシン(Rider: マイク・ヘイルウッド)
1967年WGP、ダッチTTレース(オランダ、アッセン)500ccクラスにおいて最速ラップレコードで優勝したマシン。空冷4サイクル4気筒DOHCエンジン搭載。最高出力85PS以上/12,000rpm。6段変速。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、トミー・ロブとデイビッド・ヘイルウッド。

NSR500
1985年WGP第6戦フランスGP・500ccクラス優勝マシン(Rider: フレディ・スペンサー)
1985年WGP 500ccクラスで12戦8勝して、コンストラクターズ及びライダーズタイトルを獲得。ULF(ウルトラライトフレーム)採用車。水冷2サイクル90度V型4気筒エンジン搭載。最高出力140PS以上/11,500rpm。6段変速。フレディ・スペンサーは1985年、500ccと250ccでダブルタイトルを獲得した。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、当時のライダーであるフレディ・スペンサー。

NSR500
1988年WGP・500ccクラス出場マシン(Rider: ワイン・ガードナー)
1988年WGPに出場。V4エンジン及び車体を改良したNSR、5年目のモデル。500ccクラスで2位を獲得。水冷2サイクル90度V型4気筒エンジン搭載。最高出力150PS以上/12,500rpm。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、当時のライダーであるワイン・ガードナー。

NSR500
1995年WGP・500ccクラスチャンピオンマシン(Rider: ミック・ドゥーハン)
1994~1995年WGP 500ccクラスで2連覇を達成。1994年からのインジェクションやPGMサスペンションなどをトライして13戦中7勝した。また、水冷2サイクル90度V型4気筒エンジンが、2気筒ずつ同時に爆発行程を行う“同爆エンジン”を搭載。最高出力180PS以上/12,200rpm。6段変速。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、当時のライダーであるミック・ドゥーハン。

RC211V
2002年WGP第2戦南アフリカGP・MotoGPクラス優勝マシン(Rider:宇川徹)
2002年よりWGP最高峰クラスが500ccクラスからMotoGPクラスに変更され、Hondaは990cc水冷4サイクルV型5気筒エンジンを搭載したニューマシンで参戦。16戦14勝を挙げ、2年連続コンストラクターズ及びライダーズチャンピオンのダブルタイトルを獲得した。最高出力200PS以上。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、現在RC211VでHondaワークスのレプソル・ホンダ・チームからMotoGPに参戦している、ニッキー・ヘイデン。

四輪マシン(抜粋)
RA272
1965年F1世界選手権第10戦メキシコGP 5位入賞マシン(Driver: ロニー・バックナム)
初の国産F1マシンとして、1964年にドイツグランプリでデビューしたRA271の後継モデル。RA271/RA272の両車は、水冷4サイクルV型DOHC12気筒エンジンを横置きにしたことでも有名。最高出力230PS以上/12,000rpm。最高速度は300km/hを超えた。出場するのは、1965年の第10戦メキシコグランプリで、リッチー・ギンサーがHondaに記念すべきF1初優勝をもたらしたマシンと同型車。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、当時のドライバーであるロニー・バックナムの息子のジェフ・バックナム。

Brabham Honda BT18
1966年ヨーロッパF2選手権 チャンピオンマシン(Driver: ジャック・ブラバム)
1965年よりブラバムレーシングチームに新開発のF2エンジンを供給し、1966年にはヨーロッパのF2選手権で11連勝を達成してチャンピオンを獲得した。排気量994cc水冷4サイクル直列4気筒DOHCエンジン搭載。最高出力150HP以上/11,000rpm。最高速度は270km/h以上。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、スチュワート・グラハム。

RA300
1967年F1世界選手権第9戦イタリアGP優勝マシン(Driver: ジョン・サーティース)
F1のエンジン排気量が3000ccに変わって2年目の1967年、F1第9戦イタリアグランプリでデビュー・ウィンを果たしたマシン。水冷4サイクル90度V型12気筒DOHCエンジン搭載。最高出力420PS以上/11,500rpm。最高速度は350km/h以上。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、当時のドライバーであるジョン・サーティース。サーティースは、二輪で7度のワールドチャンピオンに君臨した後、1960年にモナコグランプリでF1デビューを飾り、1964年にはワールドチャンピオンを獲得。1967年からHondaに加入し、RA300デビューレースのイタリアグランプリで優勝、HondaにF1で2勝目をもたらした天才的ドライバー。

Williams Honda FW11
1986年F1世界選手権出場マシン(Driver: ネルソン・ピケ)
F1の燃料タンク容量の新規定に対応した新型車。水冷4サイクル80度V型6気筒DOHC4バルブ・ツインターボエンジン搭載。最高出力1000PS以上。1986年にピケ、マンセルの活躍で、Hondaは初のコンストラクターズチャンピオンを獲得した。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、当時のドライバーであるネルソン・ピケの息子のネルソン・アンジェロ・ピケ。ピケ(ジュニア)は、2003年に史上最年少の19歳2ヶ月で、イギリスF3でシリーズ・チャンピオンを獲得。2004年にはウィリアムズBMW、2005年2月にはB・A・R Hondaのテストに参加した経験を持つ。

McLaren Honda MP4/4
1988年F1世界選手権第11戦ベルギーGP優勝マシン(Driver: アイルトン・セナ)
1988年、Honda は16戦中15勝と圧勝し、最多勝利記録樹立及びコンストラクターズとドライバーズのダブルタイトルを獲得した。水冷4サイクル80度V型6気筒DOHC4バルブ・ツインターボエンジン搭載。最高出力600PS以上/12,500rpm。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、アンソニー・デビッドソン。デビッドソンは、2001年のイギリスF3で佐藤琢磨と熾烈なチャンピオン争いを演じたドライバー。2001年よりB・A・R Hondaに加入し、テストドライバーを務めている。

B・A・R Honda 007
2005年F1世界選手権参戦マシン
B・A・R Hondaの2005年F1参戦マシン。設計を大幅に刷新し、更なる低重心と小型化を実現しながら、2グランプリ1エンジンという新レギュレーションに対応した耐久性を持つHonda RA005Eを搭載。車体はエンジンとの一体化が更に進化、洗練されたパッケージングにより一層の軽量化を実現している。今回のグッドウッドでこのマシンを駆るのは、25日(土)が佐藤琢磨で、26日(日)がジェンソン・バトン。
