Hondaでは多様な個を活かす組織づくり、意欲を持って力を発揮する健康づくりの取り組みのひとつとして、「従業員の健康課題と取り巻く組織の在り方」について座談会を実施。健康課題と向き合いながら、自分らしく働く従業員と、受け入れるマネジメントや同僚、そして産業医で、ディスカッションを行いました。

※所属・肩書・年代は座談会当時

コーポレート管理本部 人事統括部
総務部 総務三課
(和光ビル勤務)
  • 蟹沢 夏帆さん
    20代
  • 糸永 明子さん
    50代
  • 飯沼 健太郎さん
    50代
  • 課長 木原 洋一郎さん
    40代
産業医
(浜松 トランスミッション製造部勤務)
  • 熊岡 浩子さん
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男女ともに健康課題があり、女性は症状がより顕著に現れる

ーーHondaの2022年健康診断問診データ、2023年3月実施の和光ビル 健康推進部門による女性従業員アンケート結果によると、男女ともに健康課題面での自覚症状が見られます。どのような症状でしょうか?

体調が優れず、業務の効率が下がったり、
支障をきたしたことがある
6割以上の人が
業務に支障があると回答
熊岡先生
女性ですと月経前症候群(PMS)や過多月経の問題などがあります。それから更年期の問題も出てきます。男性では、最近、男性更年期が言われています。ただ、中年以降の抑うつ状態は更年期で起こっているのか、それとも本当に抑うつなのかわかりにくいです。また、健康診断の問診時、看護師や保健師に対し「相談されたことがあるか」を確認したところ、ほとんどのスタッフが相談を受けていました。女性は更年期よりもPMSや月経の問題について相談することが多く、男性は「更年期の相談をした」との回答もありました。

ーー問診データで、男性と女性を比較した場合、女性の方が、症状が多いとの結果が出ています。なぜでしょうか?

熊岡先生
わかりやすい原因として月経があります。ほぼ毎月のようにあるホルモンの波によって起こる問題がありますし、ホルモンの増減によって起こる問題もあります。女性は月経や閉経に伴って起こることが明らかなため、女性の方が症状として自分で捉えやすいですが、男性は気づきにくいようです。

ーー女性は月経や閉経があるので意識できますが、男性の場合はそういうものがないから自覚しにくいのですね。

熊岡先生
そうですね。男性の性ホルモンは40代から減ってきます。だから40代以降、いつ男性更年期の症状が出てもおかしくない。女性の更年期は閉経の前後で起こりますが、男性だと40代からずっと、70代でもありえます。

――男性にも更年期があるとのことですが、もう少し詳しく教えてください。

熊岡先生
男性更年期は、40代くらいから症状が出てくると思われます。ただ、症状は、非常にわかりにくく、男性も発汗がすごかったり、ほてりが出たり、疲れやすくなったりするのですが、「年齢かな?」と思う人もいるし「気分かな?」と思う人もいる。「自分って更年期?」とダイレクトに考える人はとても少ないです。精神症状として、うつっぽくなったり、眠れなくなったり、興味を持つことや意欲が低下してくることがあります。それが男性更年期かどうかを確認するには、男性ホルモンを測定する方法があります。泌尿器科で測定することができるので、もし気にかかるようだったら検査することを考えていいと思います。
飯沼さん
男性ホルモンを測定して、仮に少なかった場合、自分で何か対策できることはありますか?
熊岡先生
自覚症状が強い場合は、筋肉注射や錠剤を補充することもあるようです。男性はじわじわと男性ホルモンが低下してくるので、本当に「自分の症状は更年期なのか?」と思える人は少ない。どうしても気になってホルモン値を測定して、ホルモン注射を打つという人もいると思います。男性の場合、泌尿器科あるいは性機能・メンズヘルスを診る医療機関などで受診することになります。大きな病院では性腺機能低下症と診断しているところもあります。男性の更年期に関するガイドラインでは「問題が多ければ治療してもいいよ」となっており、性腺機能低下症に関する診断についての症状や治療が出ています。

ーー男性更年期は自然なことと考えていいのでしょうか?

熊岡先生
歳をとってくると、性ホルモンが低下してくるのは自然なことです。女性のようにガクンガクンと低下せずゆっくりゆっくりなので、自然なことだと受け止めて、何にもしないという選択もあります。

ーー2023年1月に「多様性推進 瓦版」という社内広報誌で男性更年期の特集をしたところ、大きな反響がありました。Hondaは国内の全従業員のうち、男性が約9割を占めていることからも、多くの皆さんが関心を寄せていただいたのだと思います。

熊岡先生
気になっている方はいると思います。男性にしても女性にしても、「更年期ではないか?」と考えるのは、環境が変わる時期だと思われます。職場での立場や環境の変化や、本人であれば、更年期の他にも健康課題があり、ご家族にも健康課題がある。そして、親の介護、子どもの自立、パートナーの存在といろいろな要素があり、どれが一番自分にとってつらいことなのか、自覚している症状の原因が何か、白黒つけるのはすごく難しいですね。その中で抑うつが強い時は、判断する材料のひとつとして、血液検査をして男性ホルモンを測ってみるのもいいと思います。絶対ではないですが、ひとつ否定ができれば、「このストレスはこっちの方かな?」と思えるかもしれないので、考えてもいいと思いますね。
木原さん
知っているか、知らないかだけでも、これからの対応が変わってきますよね。自分も40歳を超えて、更年期の年代に入っているので、やっぱり知っておきたいです。
飯沼さん
私は40代になってから、ジムに通ってもプールで泳いでも全然痩せなくて、これも更年期なのかなと、思うことがありますが、本当の原因はわかりませんよね。男性更年期のことを知らないですし、ただの老化、加齢によって疲れがたまっていると、済ませてしまっているかもしれないですね。
熊岡先生
自分で課題に思えるほどひどいと感じたら、受診して男性ホルモンを測りに行ってもいいかもしれないですね。
<男性更年期セルフチェック>
厚生労働省 更年期症状・障害に関する意識調査

月経や更年期と向き合う従業員、仕事に支障をきたすことも

――蟹沢さん、糸永さんは、女性特有の健康課題に向き合っています。どのような症状ですか?

蟹沢さん
私は、毎月の生理がつらいです。中学の時に生理になってからずっとひどい生理痛で、一番ひどい時は動けないくらい。うずくまって、痛みでどうしようもない……という時も結構ありました。痛み止めでなんとかごまかしたり、体を冷やさないようにしたりしていますが、やっぱり毎月しんどく、仕事に支障をきたす可能性があり、休むこともあります。仕事が全然できないだろうなと思う時は、無理せずに有休や生理休暇を利用して休ませてもらっています。
糸永さん
私の場合は、年齢的な問題です、更年期のホットフラッシュっていうんですか。カーッと熱くなって、ダーッと汗をかく。仕事には全く支障はなく、仕事に集中できないわけでもないので、とりあえず会社に来て、大汗かいて仕事します(笑)。季節に関係なく、時間も関係なく、突然スイッチが入るとブワッと汗が出てくるような……。それが仕事の最中であれ、夜中であれ、いつやってくるかわからないし、出るともう止まらない。今朝もスイッチが入りました (笑)。今は落ち着いています。ここ2~3年はひどく、毎日のように、滝のように汗をかいています。

――症状のコントロール・緩和のために取り組んでいることは?

蟹沢さん
冷たいものではなく温かいものを飲むとか、お風呂に浸かるなどはしています。でもあまり効果を感じないので、結局痛み止めに頼ってしまいます。婦人科には、低用量ピルをもらっていた時に通っていましたが、栃木から現在の和光に転勤してから、まだ病院を探せていなくて……。
糸永さん
私は婦人科に通って漢方を処方してもらい、症状の軽減を図るようにしています。ただ、漢方は体に合うものを見つけるまで時間がかかると聞いていて、自分に合っているのかな?と、思いながら飲んでいます。
熊岡先生
私が勤務する浜松のトランスミッション製造部で、健康推進室が従業員に実施したアンケートから、婦人科で処方される漢方薬や低用量ピルを使っている方が意外といます。低用量ピルが合う人は、効果がはっきりとあるのかな、と思います。

――若者には浸透してきていると思われる低用量ピルですが、アドバイスできることはありますか?

熊岡先生
過多月経や月経痛があるかないか、婦人科を受診すると最初は漢方薬や痛み止めを勧められると思います。低用量ピルは超低用量など、容量がいろいろあるので、婦人科の医師と相談して選択をするとよいでしょう。

生産現場での健康課題との向き合い方

ーー先生がいらっしゃるトランスミッション製造部の製造部門の皆さんは、健康課題にどう対応されていますか?

熊岡先生
月経痛とPMSには低用量ピル、月経痛に関しては痛み止めを使っているようです。製作所では、トイレに行きやすいラインに対し、サイクルタイムが決まっている生産ラインの場合は、ナプキンをたくさん重ねて対応しているようです。現場では若い人でも低用量ピルを処方されている方が意外に多い印象です。

ーー熊岡先生ご自身も健康課題で症状があるとうかがいました。

熊岡先生
以前は臨床医で、比較的最前線の病院の外来で、1日中働いていました。私はもう元気ですが、数年前、子宮筋腫が見つかりまして。閉経が近くなってくると生理が長くなったり、過多になったり、逆に減ったりとかあるんですけど、私は子宮筋腫だから過多月経になって……。外来から出られず、白衣が真っ赤になったこともあります。しかも病院って割と男性が多いので、その中を通って医局までいくのがすごく大変でした。

――健診で「日常生活で支障をきたすほどの月経時の腹痛があるか」という質問に、Honda全社において女性従業員の16%が「ある」と答えています。しかし、浜松のトランスミッション製造部では7%にとどまっています。どのような背景がありますか?

熊岡先生
以前より外部の健診センターで子宮頸がん検診を行い、2018年ぐらいから乳がん検診が加わりました。そこでは、子宮頸がんや乳がんに関する10分ぐらいのミニ講話により知識を得る機会がありました。また、「ヘルスアップ30」という、30歳を迎えた従業員に対して生活習慣病や健診結果の見方などをお話する機会を保健師が設けています。アンケート結果からも、自分で病院を受診している人が多く、受診して、低用量ピルなどを使って症状を軽減している人が比較的多いという印象です。ネットも含め、いろいろなところで知識を得て、受診などの行動に移していると思います。

仲間とのコミュニケーションを通じ、健康課題を受容する職場に

――職場で不調になったとき、どう対処しますか?

蟹沢さん
栃木での現場勤務をしていた際は、トイレが遠い場所にあり、自由に行き来はできるものの、なかなか行けませんでした。自分ひとりでラインを回しているので、あけてしまうと大変なことになってしまいます。ナプキンを変えられず、ずっと不衛生状態という経験をしたことはあります。
糸永さん
私は入社してからずっと間接部門の職場なので、トイレに行けないことはなく、そんなに生理が重かったこともないので大変さはないです。でも、一緒に働いている女性で生理が重く出血量が多い方が、気がつくと……という場面があり、困っている人を間近で見てきました。

ーー職場へ伝えることに、ためらいを感じたことはありますか?

蟹沢さん
生理は恥ずかしいことだと思っていないので、「生理で調子が悪いです」と近くにいる人や上司には都度伝えるようにしています。

ーー上司が男性でも?

蟹沢さん
はい。別にトイレと同じで仕方のないことだと思うので。嫌だと感じる方もいらっしゃるとは思いますが、例えばくしゃみと同じくらい自然な現象です。隠す必要はありません。むしろ知ってもらって理解してもらうことが大事で、隠さずに言うようにしています。自分がいつ生理になるかは、最近はアプリがあるので把握していますが、予期せぬタイミングで来る時もあります。職場で生理になった時に、初日はかなり重くて、薬も準備できなくてウーってなっていると、木原さんをはじめ、周りの方が「体を温めた方がいいよ」とカイロを持ってきてくれたり、温かいお茶を用意してくれたり、「無理しないで帰っていいよ」と言ってもらうこともあります。仕事が残っていて帰りづらい気持ちはありましたが、そう言ってもらえると、すごくありがたいなって思います。
糸永さん
生理の話は、私たちぐらいの年代にはちょっと恥ずかしいことで、外で言うことじゃない……という考えがあります。言いづらさもありますね。
女性特有の症状で体調が優れないときに
職場に伝えている
伝えられない人が6割以上
不調について8割は職場に伝わっていない
蟹沢さん
中学で、性に関する授業の際、男女で分かれて行いました。男性に言ってはいけないものだと、最初は思っていました。でも、だんだん「隠す必要ないのでは?」と考えるようになりました。お医者さんとの会話で「毎月来るものだし、仕方のないことだから」と言うことが多く、隠すことではないという思考に変わりました。実際、体調が悪くなり「どうしたの?」と男の子から聞かれた時に「生理痛で」と答えたら、なんともない反応でした。あんまり不快に思う人はいないのかなと、自分の体験を通して肌で感じてきた部分はあります。たぶん男性は、話してもいい内容なのかがわからないんだと思います。女性の方から大っぴらに話すことではないにしても、自分の体調を普通に話して相手に理解してもらうことが一番いい方法だと思います。

ーー更年期だと周囲に言っていますか?

糸永さん
尋常じゃない汗なので、周りもうすうす気づいています。「どうした?」と心配されますけど「年齢的な症状だから」と言って、その場をいなして仕事しています(笑)。年齢的に女性はだいたい50歳の前後5年、トータル10年くらいが更年期と婦人科でもよく言われたので、みんなも察してくれます。生理痛とちがって、外から見てあからさまに大汗かいているので「大丈夫?」と声かけてもらって、ありがたいなと思います。

上司に不調を伝えられない人もいる。マネジメントは職場の環境づくりを!

ーー和光ビルの健康推進室で行ったアンケートによると、女性従業員の6割の方が何らか健康上の不調を抱えています。また、パフォーマンスが低下し、我慢しているけれど、上司に言えない人も一定数いる。この状況をどう思いますか?

木原さん
この座談会の前に、女性従業員4人くらいに「みんなは職場でどうしてるの?」と聞いてみました。答えは「我慢」です。不調を訴えたことがない。だからこそ、マネジメントがひと言声かけるだけでも全然ちがうと思いました。先ほど蟹沢さんが「恥ずかしいことではなく、仕方のないことで、私にとって自然で普通なこと」と話してくれましたが、実は私も同じで、生理で大変だからお手伝いするという気持ちではなく、目の前で困っている人がいれば「どうしたの、大丈夫?」と声をかける、当たり前のことをしているだけです。そもそも女性従業員が困っていることにマネジメントが気づいていないのではないかと。この座談会を通じ、言えずに我慢している人がたくさんいることに気づくきっかけになればと思います。
体調不調時の対応手段 (複数回答)
6割以上が不調を感じている中、
我慢して働いている人は多数
飯沼さん
埼玉製作所で組み立てラインのチームリーダーをしていた時の職場も男女に関係はありません。女性が交替制でラインに入り、ひとつの工程をやらなくてはいけません。そのため、女性は生理の症状の重たさを言わざるを得ない状況でした。我慢せず、自然と言ってくれる風土があり、言ってくれることで、私としても、要員体制が立てやすく、非常に助かりました。また、周りの男性も、症状の重い人がいることを知っていたと思います。何も言わなくても、自然と調子の悪そうな時を察し、全体で見守るという状況でした。

ーーさらにこのアンケートによると、体調の不調を「言えない、もしくは言いにくい状況」が61.7%、「伝えている」が3.7%、「症状・状況に合わせて伝えている」も14.8%と少ないです。

木原さん
個人の性格にもよりますが、困った時にイチから10まで上司に、もしくは同僚に言えるかというと、やっぱり信頼関係がないと言いづらい。「この人だったらここまで言って大丈夫」「この人に力になってもらいたい」と思える信頼関係が大事です。「困ったことがあれば言ってね」と言われても、信頼関係がないと伝えられない。信頼関係を築くためにも、普段の会話やコミュニケーションの積み重ねが大切です。話して関係を構築できたら、次のステップで「もう大丈夫か?」「もっと助けは必要か?」と、直接的な言葉ではなくても態度で感じてもらえるようになる。そういったマネジメントを心掛けています。
蟹沢さん
体調不良で休んだ翌日「悪かったなぁ」と思わずに、普通に出社して仕事ができる環境を整えていただいていることはありがたいです。
糸永さん
生理痛にかかわらず、具合が悪かったら休むのが当たり前だと思います。その分、元気になったら、最大限にがんばるのが社会人だと思います。
木原さん
短期的には体調が悪くて休んだら次またがんばる……ということになりますが、長期的に見たらお互いの信頼関係や「職場や会社が好きだ」という気持ちの部分に大きく関係してくると思います。本当にしんどいのに休ませてもらえない、放っておかれるような職場だったら、誰ががんばろうと思うでしょうか? みなさん自助努力して、なんとか自分の中でがんばろうとしてくれているんです。でもこれ以上無理なところはみんなで助け合う。「自助努力」と「相互扶助」の考えがベースにある会社であることを思い出して欲しいです。

部下とマネジメントとの信頼関係

――信頼関係を築けていない部下に対し、マネジメントはどのようなアプローチをするのが良いですか?

木原さん
信頼関係ができていないのは、上司、マネジメントが、部下や同僚など周りが見えていないからです。忙しくて集中してしまうと周りが見えなくなってしまいます。私も生産現場に携わってきましたが、昔の課長は会社に来たらまず新聞を読んで、「おお、髪切ったか?」「どうした、体調悪そうだな?」と声をかけてくれました。でも今はみんな忙しそう。メンバーが働きやすい環境を整え、やる気が出るようにするためにも、我々マネジメントにしっかり考える余裕がないといけません。Hondaは人を大切にし、目配り・気配り・思いやりを実践してきた会社です。まず、人が人を見て、何かおかしな「特徴」に気づける余裕が欲しいと思います。もしマネジメントの皆さんの中に「周りを見れるほど余裕ない」人がいたら、直属の上司に「今こういう状況で、メンバーの特徴に気づいてあげられない」「優しく声をかけてあげられない」状況を相談してください。上司に相談できないなら、お近くの人事、総務部門に相談していただきたいです。
蟹沢さん
本当に信頼関係がすべてだと思っています。信頼関係を築くためには、仕事以外の人間関係の近さも重要です。普段からの雑談……プライベートの話とか、髪切りましたとか、何気ない会話がすごく大事なんだなと。
糸永さん
私は昭和の人間なので、例えば信頼関係が築けていない場所にいたら、ひたすら我慢すると思います。もう、言っても仕方がないというか。
女性特有の症状による体調不調を伝えたり
/相談しやすい相手(複数回答)
最多は女性の同僚
一方、相談できる相手がいない人が次点に
木原さん
雑談を大事にして欲しいと発信しています (笑)
蟹沢さん
課内で、木原さんはずっとしゃべっています。私が髪の毛を結んで出社した時は「今日なんか雰囲気ちがうじゃん」とか、髪の毛染めてないのに「髪の毛染めた?」とか(笑)。些細なことに気づいて話しかけてくださるので、いい雰囲気につながっていると感じます。

ーー産業医の立場から、マネジメントに向けてアドバイスはありますか?

熊岡先生
マネジメントはすごく難しいと思います。組織の大きさによってちがうし、みなさん言うように信頼関係によってもちがう。生産現場だと生産のことが第一になってくるので、人を見ることが難しい時があります。それでも、「人」、一人ひとりを大事にしてもらいたいですね。モジュールだと組織も大きいので、マネージャーが全て担うのではなく、チームリーダーやアシスタントチームリーダーをうまく活用し、お互いの健康状態を把握するために「顔色確認」をする。顔色確認と言っても「顔色」しか見ていないことがありますが、顔色だけではなく、顔色からにじみ出るその人の状況を測って欲しいですね。

ーー健康課題は人それぞれちがうということですか?

熊岡先生
にじみ出る辛さ……昨日とちょっとちがうことが誰にでもあります。一つひとつが、一人ひとりちがいます。人間は「ゼロか100か」で割り切れないことを理解しながら、接していただきたいです。

思いやりとセクハラは紙一重!?

――健康課題は個々にある中、理解したい想いがあってもセクハラになるからと声がけを躊躇する人もいるようです

木原さん
言い方や表現をまったく気にしないかと言うとウソになります。例えば「生理か」はすごく嫌な印象になります。会社の中で、女性の健康課題への理解・意識醸成を促す発信がされましたが、課題はまだまだあります。そもそも、男性は聞けるわけがないですし、女性自身も「どう伝えればいいの?」と迷いがあります。
蟹沢さん
「生理なのか?」と、ダイレクトに言われるとデリカシーないなと思いますが(笑)、困った人を助ける感覚で「体調悪そうだけど大丈夫?」と聞いてもらえたら、自分でも「生理痛で」「お腹痛くて」「ちょっと気持ち悪くて」と会話できると思います。ダイレクトな言葉ではなく、普通に気にかける言葉でいいと思います。
糸永さん
「顔色確認」でにじみ出るその人の状況を見られる余裕が、上の方々にあれば良いと思います。
熊岡先生
やはり普段の関係性ですね。「この人、セクハラする人」と自分が思っている人に言われると嫌ですよね。きちんとしたマネジメントだと思えば、普通に会話ができます。関係性が重要ですね。

健康課題と向き合いながら働くために(参加者からのメッセージ)

飯沼さん
女性が健康課題に苦労されているとあらためて認識しました。また、自分においても知らずに更年期が進んでる可能性があり、症状が重かったら病院へ行って、男性ホルモンの検査を受けたいと思います。日頃から男性ホルモンを増やすために、筋肉をつけて運動をするということを心がけて予防していきたいです。
蟹沢さん
生理の辛さは我慢する必要はないので、近くの上司に、言いづらかったら同僚でも誰でも、自分の体調を伝えられる環境を自分自身でも作ることが重要です。生理自体は当たり前で別に恥ずかしいことではありません。男性・女性ともに、「恥ずかしいことだ」という考えをなくし、風邪と同じ感覚で、接してもらえたら一番いいです。
糸永さん
世代のちがいはすごくあると思っていて、私たちよりも下の世代の人は、生理に対しても割とおおらかですが、上の世代は恥ずかしいと考えるところがまだまだあります。みなさんの意識を変えていくのが大切です。それに「生理だから」ではなく、お互いが思いやって仕事ができるような環境……具合が悪いならお休みする、「どうしたの?」と聞いてあげられる、心の余裕が必要だと思いました。
熊岡先生
正しい知識を持つこと、専門家に相談すること、それから自分で情報を得ることが大事です。困っている人を責めるのではなく、助けられる環境が必要です。困っている人は自分が悪いと自責にしたり、他責にしたりすることがあります。フラットに、自分が悪いわけでも、相手が悪いわけでもありません。社会性を持ってお互いに思いやれるといいですね。
木原さん
Hondaは2023年で創立75周年という節目を迎え、75年の中で人を大切にしてきた会社です。マネジメントに限らず、もっと周りを見てください。もしかすると困っている人がいるかもしれません。「大丈夫? 無理しないでね」と言葉をかけてください。男性の更年期や、女性の更年期・生理痛など、いろいろな健康課題がありますが、いつ誰がなってもおかしくありません。もし自分が困った時に周りの人が話を聞いてサポートしてくれる、そんな素敵な会社を作っていくのが私たち、従業員です。一緒にもっともっと愛されるHondaにしていきましょう。