CR-V

究極のオールラウンダー・CR-V登場。そのデザインコンセプトとは

CR-Vが大切にした「ギャップの両立」

――2025年、Honda初のクロスオーバーSUVとして誕生30周年を迎えたCR-V。「Comfortable Runabout Vehicle」という名前の由来の通り、都市も郊外も快適かつ自由に走り回れるクルマは、日本国内にとどまらず北米や中国を中心に世界で支持を広げ、世界累計販売台数1500万台を達成しました(2025年10月時点、Honda調べ)。そして2022年に6代目のCR-Vが北米で登場。力強さと洗練されたデザインはグローバルでも人気を集めています。そんなCR-Vのe:HEVモデルが、いよいよ日本国内でも販売が開始されます。

CR-V
インタビューの様子
(左から)インテリア担当の須藤大志、エクステリア担当の佐藤淳之介、パッケージ(クルマの骨格や室内空間の設計)担当の岡亜希子、CMF(Color Material Finish:素材や色のデザインや、内外一台分のコーディネート)担当の岩﨑麻里子

――今回の座談会には、エクステリアを担当した佐藤、パッケージを担当した岡、インテリアを担当した須藤、CMFを担当した岩﨑が登壇。彼らはCR-Vの本質をどう捉え、グランドコンセプト「感動CR-V」をどのように定義付けたのでしょうか。

佐藤
まずは、リサーチのためにアメリカへ行きました。そこでの体験がCR-Vの本質を深掘りするきっかけになったんです。実際にCR-Vを使っている人を見たとき、まるでスニーカーやデニムパンツのように気軽に使っていたのが印象的でした。アジアではCR-VがフラッグシップのSUVとして位置付けられているのに対して、アメリカではスタンダードな「日常使いのアイテム」なんだと再認識しました。そこで、気軽に使って日常を誇れる、どんなシーンでも似合って感動できるクルマをつくるべきだと考え、「感動CR-V」というグランドコンセプトを立ち上げました。

リサーチ写真
北米リサーチ時の記録
デザインコンセプト


ここでいう「感動」の本質は、わかりやすい派手なものではなく、じんわりと心の底に残る納得感にあります。「やっぱりこれだよね」という安心感と、「ちょっといいでしょ」とさりげなく自慢したくなる誇らしさ。それを上品に表現することで、本音と建前を気持ち良く両立させることがCR-Vが目指した「感動」でした。

佐藤
そこで大切にしたのが「ギャップの両立」です。例えばエクステリアデザインは「スポーティーなのに機能的な骨格」、パッケージは「安心で快適なのに考えず使える」、インテリアデザイン・CMFは「上品な空間なのに、タフに使える」など、二律背反的な要素を両立させることを重視しました。

佐藤淳之介


このギャップは、初代CR-VのDNAでもあります。「乗用車の快適さとRV車のアクティブさ」というギャップを両立させ、SUVブームを引き起こしたのが初代CR-Vです。時を超えた今もなお、「どちらも欲しい」というニーズに応えようとする姿勢を引き継いでいます。そしてその考え方は、プロポーションや視界といった具体的な造形にも落とし込まれていきました。

岡亜希子

デザイナー協働の本質を問う。チャレンジングなプロジェクトを完遂させた開発体制

Hondaらしいものづくりスタイルへの回帰

――「ギャップの両立」というテーマを設けることで、各領域のコンセプトがずれることなく、一貫性を保ちながらデザインしていくことができたという今回のプロジェクト。実際のところ、どのような開発体制で取り組んでいったのでしょうか。

佐藤
今回のプロジェクトは、快適性・走行性・ユーティリティ・ドライバビリティのすべてを妥協せず、骨格から徹底的に磨き上げ「究極のオールラウンダー」を目指すという、Hondaとしても非常にチャレンジングなもの。そうやって全体を良くしていくためには、異なる領域のデザイナーでも普段以上に協力し合う必要がありました。

デザイナー4人の写真
佐藤淳之介

佐藤
普段、異なる領域のデザイナーの業務エリアは離れているんですが、そこでふと「わざわざ席を離しているのはなぜ?」という疑問が湧き……。領域関係なくデザイナー同士がデスクをくっつけ、意見を自由に言い合える環境にした上でプロジェクトを進めていきました。これは本来のHondaのモノづくりの姿勢であり、原点回帰だったとも言えます。ワイガヤの中からイノベーションを生み出してきた、Hondaらしいベーシックなものづくりのスタイルを、改めて実践できたと感じています。

※ワイガヤ:年齢や職位にとらわれず、新しい価値やコンセプトを創りだす場として、ワイワイガヤガヤと腹を割って議論するHonda独自の文化

須藤
一緒の空間で密に仕事をしていると、僕が描いたデザインに佐藤が「もっとこうした方がいいんじゃない?」と意見をくれたし、その逆もありました。一緒の空間で作業することで、お互いが思うことをその瞬間に言い合える。そこから議論が弾むことで、クルマ一台を通した「ギャップの両立」を至るところに宿すことができたと思います。

開発当時の様子
開発当時の様子
岩﨑麻里子

岩﨑
わかります。エクステリアでボディーを引き締めてマスキュラー(力強く)に見せたいというときも、CMFがカラーの力で躯体をより良く見せるというふうに、足し引きの判断が自然とできましたよね。一般の方々は、カラーがボディーの形状に影響するのは想像しづらいかもしれません。ですがその力は確かにあり、同じ空間で素早く議論することでその力を最大限に引き出せたのではないでしょうか。


そうそう。他にも、プレミアムな雰囲気がありながらも、パッケージングやインテリアデザインで手軽に運転できるようにしたり、外観は大きくても、インテリアのデザインをすっきりさせて扱いやすさと上質感を演出したりして。

佐藤
コミュニケーションが取りやすかったし、提案をすぐにトライし、良ければ採用、違えば元に戻すという迅速な判断ができる環境でしたよね。より良くしたいという気持ちを共有できる、いいチームだったと思います。

CR-V

デザインのアウトプットから見る、エクステリア&パッケージのこだわり

水平基調の視覚効果

――チームが一丸となり、意見を出し合い、形を磨いていったという今回のプロジェクト。従来モデルから水平基調へと転換することで、スポーティーかつファンクショナルなデザインとなった6代目CR-Vは、具体的にどんなデザインのこだわりが込められているのでしょうか。まずは佐藤と岡に、エクステリアとパッケージの観点から紹介してもらいました。

CR-V
開発当時の様子
インテリアのインストルメントパネルとエクステリアのフード。通常であれば別々にクレイをつくり、それぞれで確認をするが、インテリア・エクステリア双方のメンバーで一緒に検証しながらカーブや段差を調整していった

佐藤
特にこだわったのは、「どうすれば運転しやすい視界ができるか」ということです。「爽快なのに安心」「立派なのに手の内」というコンセプトで、岡と一緒にいろんなクルマに試乗して、地道に、愚直に、何度も確認しながらつくっていきました。


今回のCR-Vは、これまでのモデルよりひとまわりボディサイズが大きくなります。それでも初めて乗る人が自信を持って気軽に運転できるよう、ボンネットフードのキャラクターラインがフロントタイヤの位置を感じられるようにし、無意識レベルで運転のしやすさを感じられるデザインに、佐藤も細部までこだわってくれました。

CR-Vボンネット
ドライバーから見えるボンネットフードのキャラクターラインをタイヤの前端の位置と同じくらいに調整したり、道路の白線とボンネットフードのキャラクターラインの消失点を揃えたりすることで、初めて乗っても車両感覚が掴みやすく、運転がしやすくなる
CR-V運転席
ボンネットフードにどうラインが入っていれば、タイヤ位置の認識がしやすくなるかの検証

佐藤
運転中に視界のノイズを減らす配慮も、随所に込めています。例えばフードとインテリアの一体感。5代目CR-Vでは、フェンダーを力強く見せるために線を上げていましたが、6代目では爽快な視界のため、逆に下げています。さらに運転席から見えるインストルメントパネルとボンネットフード後端の線が平行になるように設計することで、視界のノイズを大きく減らしました。

CR-V
CR-Vミラー

佐藤
また、運転席から見ると、ミラーの斜面とAピラーの斜面がさりげなく揃っていることがわかると思います。こうすることで、運転時のノイズを減らすことができます。バックするときのリアフェンダーのミラーへの映り方にも気を使って、“理由はわからないけれど”運転しやすく、見た目はすっきりと上質に感じられることを目指しました。

※Aピラー:フロントガラス横の柱(ピラー)


車体に入る水平なキャラクターラインは、ドライバーに様々なメリットをもたらすのではと考えています。例えばバックで駐車するとき、真っすぐ止めようとしたのになぜか曲がって駐車してしまうことはないでしょうか。車外にある壁や、駐車線など車体のキャラクターラインを基準として合わせることで真っすぐ止めることができるのではないかと考えました。人間は運転中、常にクルマの何かしらの枠や基準となるものを意識しているものだそうです。

佐藤
Hondaが長年取り入れてきた視線誘導(例えば、フロントガラスの左右にある小さな三角形マークなど)の考え方も同様に、ドライバーの無意識に働きかけるものです。こうした基準となる線をボディーに入れ込むことで、自然と扱いやすさを感じられるようにしながら、同時にすっきりとした上質なデザインへとつなげました。

佐藤淳之介
CR-V

リアに込めた革新とアイデンティティの継承


今回の開発のメインは2列でしたが、グローバルカーは3列仕様もあって同時開発しており、3列が成り立つキャビンの広さにしつつ、2列になったときも野暮ったくならない骨格が必要でした。それがかなり大変だった部分です。

佐藤
3列仕様になると、キャビン後部はどうしても広く取らなければなりません。けれど、キャビンは絞ってスポーティーにしたい。とはいえゴルフバックやキャンプ道具が詰めなければ、SUVとしての使い勝手が悪くなります。

CR-V
佐藤淳之介
佐藤「初代から踏襲してきた縦型のリアコンビネーションランプも継承しました」

佐藤
さらにパワーテールゲートやリアコンビネーションランプのために構造を太くしなければいけないという課題もある。これらの要求をすべて満たすために、リアには多くのこだわりが詰まっています。


ここでは「(北米においては)コンパクトSUV。なのに大人がゆっくりくつろげる」という点も実現しています。先代はシートスライドがありませんでしたが、リラックスして座りたいときもあれば、荷物を優先したいときもある。その両方に対応できるように、リクライニングも先代が2段階だったところから8段階に増やし、前後の空間も広々とさせました。

イメージスケッチ
イメージスケッチ
イメージスケッチ


今回は、エクステリアの方向性が「スポーティーでありながら機能的な骨格にしよう」と、最初から決まっていたことが大きな助けになりました。みんなが「かっこ良さってこういうことだよね」と同じ方向を見ることができたからこそ、線を加えたり引っ込めたりする中でも、ブレずに進められたのだと思います。

開発当時の様子
開発当時の様子

デザインのアウトプットから見る、インテリア&CMFのこだわり

“なぜか快適”を実現する
インテリアの細やかな気配り

――続いて、インテリアとCMFの観点からも、デザインにこだわりを込めた部分を具体的に紹介してもらいました。

須藤
インテリアでも、運転のしやすさを実現するため、UXからのアプローチも取り入れながら、機能性とデザイン性の両立を目指しました。例えば、インストルメントパネルとフロントガラスのつながりの部分では、あえて「土手」を設けることでデフロスターの穴を隠し、視界に入るノイズを抑えています。

※デフロスター:フロントガラスの曇り取り用の吹き出し口
CR-Vフロントガラス
CR-V運転席

須藤
HUD(ヘッドアップディスプレイ)の樹脂枠は、光の入り方によってはフロントウインドウに映り込んでしまうため、映り込んだ姿を優先して形状を調整し運転視界を整えています。メーターバイザーの造形も、進行方向が直感的に分かるよう消失点に合わせたラインに。さらに、クルマの傾きや幅の感覚が掴みやすい機能性も考慮しながら、インストルメントパネルやドアに加飾を配置しました。

須藤
こうした細部への配慮の積み重ねが、乗った瞬間に“理由は分からないけれど心地いい”と感じさせる、CR-Vのインテリア体験をかたちづくっています。

佐藤
お客様にどこがどうなっているかをわかっていただく必要はないんです。むしろ、理由はわからないけれど、座った瞬間に「あ、運転しやすそう」と感じていただけること。その無意識の感覚こそが、私たちがCR-Vに求める「感動」への第一歩だと思っています。

須藤大志
CR-V内装
CR-Vのインテリア
CR-Vシート

内側も外側も
上質さとタフさを両立させたCMFデザイン

岩﨑
CMFで目指したギャップの両立は「上質さとタフさ」です。シートには本革を採用していますが、コンソールアームレストやドアのアームレストなどの汚れやすい場所は、同じトーンの合成皮革を使用することで、汚れても掃除しやすく、気兼ねなく使えるようにデザインしました。

岩﨑
本革のシートには横基調の幅広キルティングを大胆に施すことで、革の持つ上質感に力強さを融合させ「上質なのにタフ」というコンセプトを、シートからもしっかり感じてもらえるようにしています。

CR-Vシート
CR-Vメタリックの色見本
キャニオンリバーブルー・メタリックの色見本(中央)

岩﨑
ボディカラーは、地域ごとに色の展開を変えています。そんな中でもグローバルで共通に設定している色としてキャニオンリバーブルー・メタリックがあります。北米ではガンメタ系の色の人気が高いことが調査からわかっていました。そこで、ガンメタを青みの方向にアレンジしたものを新しく開発しました。落ち着きのあるダークブルーに最大限に荒いメタリック粒子を施し、上質でありながらギラりと輝くタフなイメージを融合させています。キャニオン(渓谷)を流れる川は、穏やかに透き通ったきらめきもあれば、天気が悪くなると荒々しい景色も見える。そういう自然の美しさと力強さを落とし込み、キャニオンリバーブルー・メタリックと名付けました。

岩﨑
グローバル共通のキャニオンリバーブルー・メタリックとは異なり、赤系は地域によって異なる赤を設定しています。太陽光や気候・環境の違いで、同じ色でも見え方が変わってきます。粒子感やハイライトの色味の調整で、上品な赤や力強い赤などを表現します。地域ごとの見え方を確認しながら、その地域で感じられる「力強さと上質さを兼ね備えた赤」を実現していきました。

こうした色の調整も、乗る人の感性に響かせるために細かく計算しました。異なる地域のお客様が、一様に「理屈でなくいい色だな」と感じてくれる。そんな「無意識の高揚感」を「感動」として届けたかったんです。

色見本
質感や粒子感、ハイライトの色味などの違いで上品さや力強さ、スポーティさなど、様々なイメージを表現する
CR-V
ボディー下部は、グローバルで様々な個性を作り分けられる部品構成とした。ボディー同色仕様では「都会的・上質」な印象を目指した

オールラウンダーなクルマづくりが自信に。デザイナーたちが目指すこれからのデザイン

未来に向けた一歩先のクルマを

――各領域のデザイナーが一体となって取り組んだ結果、6代目CR-Vは、その本質的なDNAを受け継ぎながら、現代のニーズに応える新たな価値を創造しました。デザインの随所に込められたこだわりからは、クルマに乗るときの「感動」とは、人が無意識に感じ取る快適さの積み重ねによって生まれるものだと伝わってきます。

今回のプロジェクトに携わったデザイナーたちは、今何を思うのでしょうか。最後に、今回のプロジェクトを振り返りながら、今後にかける想いが語られました。

デザイナー4人の写真
岩﨑麻里子 岡亜希子

岩﨑
6代目CR-Vは、すでにグローバルで発売されているものです。日本での発売まで時間差がありましたが、「かっこいい」など市場の反応はポジティブでした。ブレずにやってきたことで、誰にも認められる強い商品がつくれたという実感があります。


CR-VというHondaの歴史あるシリーズを担当できてうれしかった一方で、責任も感じていましたが、チームの想いがブレずに一丸となり推進できたからこそ形にすることができたと思います。みんなで一体となって一つのゴールに向かってつくっていくことの大切さを、身をもって考えさせられました。

佐藤
みんなで決め、積み上げていったからこそできた商品でしたね。今はHondaの第2の創業期ということでアジャイルな開発を求められることも多いけれど、仲間と一緒に「ああでもないこうでもない」と積み上げる開発の楽しさも若手にも伝えていけたらと思います。

須藤
そして次の課題は、CR-Vで得た経験を土台に、エポックメイキングなクルマをどうやってつくるか。さらに一歩先の未来に向けたクルマづくりに、これからも取り組めればと思います。

※アジャイルな開発:開発手法の一つで、短いサイクルで試作と改善を繰り返しながら価値を高めていく進め方。本記事内ではスピードや短納期が求められる開発スタイルを指す文脈で使われている
須藤大志
デザイナー4人とCR-V

――座談会を通じて見えてきたのは、デザイナーたちの「緻密な計算」が、ユーザーの「無意識」にアプローチしていること。人は、あまりにも自分の感覚にフィットするものに出会ったとき、その理由を説明することができないものです。そして残るのは「なぜかいい」という感覚。そしてその「なぜか」の裏側には、ミリ単位までこだわるデザイナーたちの執念が隠れています。「なぜか使いやすい」「言葉にできないけどかっこいい」という体験は、やがて「このクルマで良かった」という深い「感動」へと変わっていくのではないでしょうか?

「理屈を超えた良さ」を実現した6代目CR-V。それは、デザイナーたちがこだわり尽くしたからこそ辿り着けた「感動」の表れです。

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佐藤 淳之介

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