Honda R&D Technical Review Vol.34 No.1

Honda R&D
Technical Review Vol.34 No.1

2020 H’ness CB350のスタイリングデザイン
要旨

インドのモータサイクル市場では、2013年頃から350 ccクラスの中型モータサイクルの人気が高まっていた。現地調査をおこない、ターゲットユーザとして、世界の流行を取り入れる、トレンドの変化に敏感な若者と定めた。彼らのコメントを参考に、「キングライディングポジション」をキーワードとした。デザインコンセプトとして「乗っている人が堂々と見えること」、「世界に通用するモダンさがあること」、「マッシブ&シェイプド」を掲げた。それらより、堂々と乗車したライダをしっかり支える、インドユーザに満足してもらう価値と、世界トレンドを感じさせるモダンさをバランスさせたH’ness CB350のスタイリングデザインを完成することができた。

立石 康

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2020 H’ness CB350の開発
要旨

2010年代半ば頃のインドにおいて、中大型モータサイクルが趣味の一つとして楽しまれるようになり、その市場も伸長している。本開発では日常使いから遠出のツーリングまで幅広いニーズを満たすモデルの検討をおこなった。その結果、堂々とした乗車姿勢でゆったりした操縦特性かつ、直進安定性と取り回しの良さを両立した車体、力強い鼓動感を感じるエンジン、ストレス無くスマートフォンが使える先進のコネクテッド装備を備えるH’ness CB350の具現化を達成した。

山本 堪大、若狭 秀智、井口 貴正、小山内 拓也、手嶋 晋太郎、苅安 丈幸

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手動運転補助装置Hondaテックマチックの2020年モデルFITに向けた開発
要旨

身体に障がいをもったユーザーの自立支援の一助となる、手動運転補助装置Hondaテックマチックシステムを2020年モデルFIT用にHonda純正用品として開発した。
従来テックマチックの操作部であるコントロールレバーの取り付け位置になっていた部分に2020年モデルよりスマートフォン用ワイヤレス給電Qiを設置している。Qiの機能をテックマチックシステム車両でも活用してもらい移動の負荷軽減を図った。コントロールレバー機構において、Qi給電のためのスペース確保により消失した車幅方向のスペース、および操作位置直下への取り付け点消失に伴う車両前方向への移動を2016年モデルFITの機構を流用しながら達成した。これにより、省スペースかつユーザービリティの低下を招くことなくコントロールレバー機構を実現した。

清水 隆彦、小山 俊博

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ハンディポータブル発電機EU3200iの開発
要旨

可搬性を備えながらレジャー用途の多様な家電製品が使える新型3 kVAクラスインバータ発電機EU3200iを開発した。本発電機は、2 kVAクラスのEU2200iに三つの主要技術を投入し、サイズ・質量の増加を抑えつつ、高出力化と使い勝手向上をはかった。第一に、小型・高出力の専用エンジンとオルタネータを搭載し、比出力を向上させた。第二に、パワープロダクツ製品初のバッテリレスフューエルインジェクションシステムを採用し、燃料消費を抑えつつ簡単始動を実現した。最後に、樹脂モノコック構造を採用することで質量増加を抑えつつ、従来同等の騒音レベルを達成した。従来製品EU2200iに対しパワーウェイトレシオを15%向上させ、容量79 L・質量26.8 kgと3 kVAクラストップレベルの小型・軽量発電機を実現した。

武石 正憲、小山 浩史、加勢 拓男、山本 康則、平田 光俊、前田 譲治

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2 kWクラス 電動パワーユニットeGXの開発
要旨

小型建設機械のランマやプレートコンパクタなど各種作業機械用動力源として、幅広い作業機に搭載されている汎用エンジンGXシリーズに対し、搭載互換性を持つ2 kWクラスゼロエミッション(大気汚染物質HC/NOxおよび温室効果ガスCO2排出ゼロ)電動パワーユニットeGXを開発した。eGXは、作業機の搭載条件や使用環境を鑑みて、一体型とセパレート型を設定した。なかでも一体型は同出力帯のエンジンとの互換性を考慮し、本体サイズや作業機への出力軸取り付け形状などに互換性を持たせた。耐久性が重要であるモータは、150 m/s2以上の耐振性を達成するロータシャフト支持構造やステータの締結構造を構築しつつフレッティング摩耗対策も実施した。さらに建設現場で想定される耐水性、耐塵埃性を達成するために密閉モータケースとしつつ、内扇ファン、外扇ファンを採用することで定格出力1.6 kWを連続運転できる冷却性を達成した。

神原 史吉、澤﨑 駿佑、山岸 善彦、松永 直樹

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欧州向け防振タイプ刈払機の振動低減技術
要旨

欧州コマーシャルハンドヘルド市場向けに、Honda初の防振タイプ刈払機UMK450E XEETを開発した。本開発では、防振フレームに装備するマウントラバーの形状、およびドライブシャフトの軸受配置に着目して振動低減技術を構築した。マウントラバーは、振動低減、刈払い作業時のスイング剛性、実機自重保持の要求を同時に満足する形状を新規設計した。軸受配置については、ドライブシャフトをダイナミックダンパーとして活用する新たな配置設計手法を構築した。この軸受配置設計により、刈刃やエンジンフライホイールの静アンバランス量に起因するハンドル振動のばらつきを抑制した。新規設計したマウントラバーおよび軸受配置により、欧州コマーシャル市場ユーザの要求を満足する低振動刈払機を実現した。

小池 裕貴、鶴岡 慎吾

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汎用駆動モジュールと走行プラットフォームの開発
要旨

駆動や操舵、緩衝といった走行に必要な機能を集約した汎用駆動モジュールと、それらを統括し、自律移動機能と容易に接続可能な協調制御機能を備えた走行プラットフォームを開発した。本稿では、駆動モジュールの構成、及び、4個の駆動モジュールから成る走行プラットフォームのシステム構成と共に協調制御による操舵性について示した。また、楽天グループ株式会社と共同で、走行プラットフォームをベースとした自動配送ロボットを開発し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成を受け、国立大学法人筑波大学構内で実施した走行実証実験の中で、走行プラットフォームの有効性を確認した。本汎用駆動モジュールと協調制御技術を用いれば、様々な形態の電動モビリティを効率的に作り出せる。

伊藤 淳、増渕 義則

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三次元集電体及び無機バインダーを用いた高目付シリコン負極
要旨

リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化を実現すべく、三次元集電体及び無機バインダーのSi負極への適用検討を実施した。試験実施にあたり小型セルでの試算を実施、通常の塗工電極に対しエネルギー密度の観点で優位性があることを確認した。
6.0 mg/cm2程度の目付け量において作製した電極(密度0.05 g/cm3)を用い、無機バインダーの効果を確認したところ、無機バインダー無し品ではエージング工程2サイクル目まで容量維持率が25%以下まで低下してしまう一方、無機バインダー併用品では、50サイクルの時点の容量維持率が78%であった。次に高エネルギー密度化のため電極プレスをおこない、得られた電極(密度0.17 g/cm3、0.59 g/cm3)を用い同様のサイクル試験を実施したところ、0.17 g/cm3品では未プレス品と容量維持率が同等であった一方、0.59 g/cm3品では容量維持率が46%まで低下した。試験後電極の断面観察の結果、期待通り電極体の膨張収縮が抑制できていた一方、合剤層と集電箔界面間にクラックが存在し、そのクラック量が0.59 g/cm3品の方が多いことを確認した。

田中 俊充、田名網 潔、磯谷 祐二、向井 孝志、池内 勇太

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カーボンリサイクルメタン合成を目的とした二酸化炭素と水蒸気の共電解反応条件の検討
要旨

カーボンリサイクルの高効率化を目指し、再生可能エネルギーを利用した共電解によるメタン合成の検討をおこなった。具体的には、二酸化炭素と高温水蒸気から、共電解により一酸化炭素と水素の混合物である合成ガスを得るための反応条件を検討した。最初に、合成ガス生成に適した固体酸化物型電解セルの特性を理解するために、電解質支持体構造セルと燃料極支持体構造セルの共電解性能を比較した。その結果、電解電流密度、合成ガス変換率ともに、燃料極支持体構造セルが高くなることが分かった。次にこの燃料極支持体構造セルを用いて、固体酸化物型電解セルリアクタの設計指針となる電解電流密度と原料ガス処理量の関係を得た。また、同リアクタの運転指針となる、メタンガス生成の理論モル比に合成ガス組成を合わせるための原料ガス組成を確認した。

毛里 昌弘、柳澤 和貴、牧 美里、吉田 潤平

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防水・防塵フィルタ付水素隔離構造のCFDを用いた設計手法の確立
要旨

燃料電池システムの更なる小型・軽量化に向けて、防水・防塵フィルタ付水素隔離構造を、流体解析を用いて設計するために必要なフィルタ特性値を取得する方法を開発した。フィルタ前後のガスの圧力と濃度を測定し、流体解析による測定内容の再現計算によって、フィルタ特性値を同定した。
同定した特性値は、異なるガス種・流量・濃度条件の流体解析でも汎用的に使えることを確認した。
更に、流体解析モデルの妥当性検証のために、取得したフィルタ特性値を用いて、簡易形状の実験装置と解析結果におけるガス濃度を比較し、極低流量のガス流れ条件においても良好に予測できることを確認した。
その結果、フィルタ付水素隔離構造の流体解析を用いて、より安全かつ小型・軽量な隔離構造を実現するための設計手法を確立した。

佐々本 和也、須田 恵介

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側面衝突におけるBピラーの荷重伝達機構
要旨

米国道路安全保険協会IIHSがおこなっている側面衝突試験に対し、Bピラーの変形量を抑制し、かつ高い荷重を発生することができる技術を構築した。側面衝突ではバリアから受ける荷重の大半をBピラーの曲げで支える必要がある。そこで、バリアからの横方向入力を車体下方向の軸荷重として支えることができる新たな荷重経路をBピラーに作り出し、荷重を衝突初期から高めて曲げ変形の抑制を図った。軸荷重はBピラー断面内に内部機構を追加し、サイドシルへ荷重伝達させることにより実現した。内部機構の構造は机上計算とシミュレーションから定めた。量産のBピラーに内部機構を組み込んだ試作品を製作し、その落錘試験により、Bピラーの発生荷重が2倍に高まり、変形量を1/5に低減できることを実証した。

長谷川 厚、山田 瞳、竹内 亮大郎、藤井 隆之、齋藤 有美

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慣性センサのみを用いた人の運動推定
要旨

慣性センサを用いた人の運動推定は、長時間の計測においてヨー角方向の誤差が蓄積するため、地磁気センサを用いてこれを補正する手法があるが、磁気の乱れる環境下では有効でない。そこで地磁気センサを使わずヨー角方向の誤差を補正する手法を検討した。全身の各リンクのヨー角が時間平均的に同一となる動作を計測対象とし、リンク間のヨー角の差を低減するよう補正する手法を考案した。歩行運動に対し、慣性センサと地磁気センサを用いた推定手法と光学モーションキャプチャで推定した関節角の差のroot mean squareが8.4 degであるのに対し、慣性センサのみの本手法は8.9 degとなり、同等の精度であることを示した。また、長時間の歩行運動計測において、ヨー角の積分計算誤差を同等に抑えることを確認した。

青木 治雄

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