シャシー開発競争が激化し、PUの耐久信頼性に影響も
接戦を勝ち抜きフェルスタッペンが4連覇を達成
2024年、パワーユニット(PU)のスペックフリーズ(開発凍結)は3年目を迎え、ハードウェアの使い切りと制御系の熟成のシーズンが続いていた。ホンダ・レーシング(HRC)は前年のHonda RBPTH001に起こった不具合を修正し、信頼性をさらに上げるべく細部の調整を行った。圧倒的な勝利を飾った前年に得たデータから、PUの優位性、特に回生やデプロイなど電気系のアドバンテージは確認されていた。このシーズンから開催グランプリ数は全24戦と史上最多となったが、「昨シーズンも我々は(規定基数が増える前の)3基でやれるつもりでいたので、まったく問題ありません」(角田哲史LPL)と、信頼性面での不安は見せなかった。この2024年シーズンに向けて、HRCが自信を持って投入したのがHonda RBPTH002である。
開幕戦から第2戦と、レッドブルは1-2フィニッシュを決めて絶好の滑り出しを見せた。第3戦オーストラリアGPでマックス・フェルスタッペンのマシンに序盤でブレーキトラブルが発生しリタイアを喫するが、第10戦までに7勝を挙げたフェルスタッペンの連覇は確実視されていた。しかしそれ以降、ライバルの急追とレッドブルの車体の不調が重なり、混戦のレースが続く。
シーズン中に想定外だったのは、激しくなるシャシーパフォーマンス競争から低められる一方となった車高により、縁石などに乗り上げた際の突き上げでPUが大きなダメージを受けることが度々起こったことだ。深刻なダメージでPU交換を余儀なくされたこともあり、セルジオ・ペレス車は第12戦イギリスGPで、フェルスタッペンも第14戦ベルギーGPで規定基数を超えた5基目を投入し、グリッド降格ペナルティを科されている。これは耐久信頼性に自信を持っていたHRCにとっては思わぬ誤算だった。
最終的には、シーズン前半の貯金を活かし、レース巧者ぶりを発揮したフェルスタッペンが4連覇を達成するが、コンストラクターズ選手権でレッドブルは3位にまで落ち込んでいる。圧倒的な優勢から大混戦、そして劣勢となったシーズンの流れは、誰にも予期できないものだった。
アルファタウリは、このシーズンから「ビザ・キャッシュアップ・RB・F1チーム」とその名称を変え、新たな体制でシーズンに臨んだ。F1参戦4年目となった角田裕毅は、9回の入賞を果たしドライバーズランキングは12位。最高位は3度の7位で、粘り強いレースが評価されたが、より上位を狙う角田にとっては不本意なシーズンとなった。
2024年、HondaはF1参戦60周年を迎え、4月開催となった鈴鹿での日本GPでは記念イベントを開催するなど、ファンへの感謝を込めてメモリアルイヤーを祝った。
