レッドブルが22戦21勝の大記録を達成
年間19勝のフェルスタッペンが3連覇
2023年は、レギュレーションによりパワーユニット(PU)開発は凍結されていたため、前年投入のRBPTH001をブラッシュアップした仕様をホンダ・レーシング(HRC)が製作し、レッドブルとアルファタウリに供給。またRBPTは2026年の新規エントラント扱いを受けることを目指し、エントリー名にHondaのネーミングが復活。この年のPU名はHonda RBPTH001となった。
開発制限レギュレーション下では出力を上げる変更や改良は認められないが、信頼性を高めるために行う改良や制御系のチューニングは可能で、信頼性を上げることによって得られる限界余地をどこまで詰められるかが勝負の鍵となる。いわゆる「ポテンシャルの使い切り」だ。そして、コースやドライビングに合わせて、電気系の回生や、それを合わせた出力の有効な使い方をより細かく設定することもパフォーマンスを上げる手段となる。
HRCは、前年に顕在化した不具合の修正と限界点を見極めての使い切り、そして制御系の見直しやよりアグレッシブなPUの使い方を模索し、それらをHonda RBPTH001に施して、実戦に送り出した。
前年、他を圧倒する速さを見せたレッドブルとマックス・フェルスタッペンは、2023年シーズンはさらにその上をいく強さを発揮した。フェルスタッペンは全22戦中19勝を挙げ、シーズン最多記録を更新。第18戦カタールGPのスプリントレースで早々とタイトルを決め、3年連続ワールドチャンピオンに輝いている。そしてチームメイトのセルジオ・ペレスも2勝を挙げることで、全22戦中21勝という圧巻の内容でコンストラクターズ・タイトルを連覇した。この結果は、1988年マクラーレン・Hondaが16戦15勝を挙げた際の勝率(0.937)を上まわる記録(0.954)で、最高勝率を更新する快挙だった。また年間最多勝記録(レッドブル21勝/フェルスタッペン19勝)、シーズン連勝記録(レッドブル15連勝、フェルスタッペン10連勝)、ドライバー年間最高勝率(フェルスタッペン0.864)、年間最多ファステストラップ(フェルスタッペン12回)など新記録ラッシュとなった。
一方で、アルファタウリは苦戦が続いた。F1参戦3年目となった角田裕毅は、不安定なマシンと戦いながら必死の走行を続け入賞回数は6回、最高位は8位、ドライバーズ・ランキングは14位に終わった。
2006年からトロロッソを率いたフランツ・トストがこの年をもって引退した。セバスチャン・ベッテルやフェルスタッペンなど、後のワールドチャンピオンを育てた名将は、Hondaとのジョイントを決断し、2018年からHondaとともに戦ったパートナーであり、Honda F1第4期において苦しい時期に手を差し伸べてくれた恩人でもあった。
そしてHondaはこの5月に、アストンマーティンとのパートナーシップ契約を締結し、2026年からのワークス復帰を表明している。
