POWERED by HONDA
RA807E

開発が許されたパートを徹底して磨き上げ
シミュレーション技術で性能使い切りを目指した
2.4ℓV8規定となってもF1のエンジン開発競争はとどまることなく、その最高回転数は2万rpmに達するまでとなった。その歯止めをかけるべく、FIAは翌2007年にエンジン規定をさらに強化。エンジン最高回転数を1万9000rpm上限と定め、エンジン主要パーツの開発が凍結された。一方で、2グランプリ1エンジン規定は踏襲しつつ、前年までグランプリ期間中の3日間すべてを同一エンジンで走行しなければならなかった使用規定を、金曜日の練習走行のみ除外する方向に変更された。これによって耐久信頼性においては余裕が生まれたが、金曜日のセッション後にエンジンを交換しなければならなくなったため、その作業のスピードとクオリティが重要となっていた。
エンジン開発凍結に先立ち、RA807EはRA806Eから若干の改良を受けている。エンジン重量はさらに100gの軽量化がなされ、95.1㎏と規定最低重量ぎりぎりまで削られた。重心高も165.1㎜とさらに4㎜の低減が行われている。ボア×ストロークはRA806Eの97×40.52㎜を踏襲しながら、圧縮比を13まで向上。最高回転数が制限されたことで、開発の主軸はいかに多くの空気と燃料を投入して多くの爆発を発生させるかではなく、1万9000rpmで走行した状況でエンジンをいかに有効に使い切るかという方向へと移行した。またエンジン回転数による出力アドバンテージは期待できなくなったため、フリクション(摩擦)の低減もRA807E開発での重要項目となった。
エンジン本体の開発は凍結されたが、吸排気系と補機類については制限されておらず、この分野の開発は引き続き行われた。具体的にはインダクションボックス、エキゾーストパイプ、燃料系システムなどが対象となったが、排気系は車載上の制限が大きいこと、補機は伸びしろが少ないことから、吸気系を中心に開発を進めた。さらに、ラップタイムシミュレーション技術を駆使し、シフトアップ回転数、ストレートエンド回転数制御設定、ギヤレシオを開催サーキットに合わせて最適化することで、パフォーマンスの使い切りを図った。
RA807Eによる2007年シーズンは、Honda Racing新体制の下で開発製造された車体であるRA107が空力的な問題を抱えていたため、本来の実力を出せないままシーズンを終えた。また、1万9000rpmで使い切るようエンジンの仕様と運用方法を限界近くまで攻め込んだため、耐久信頼性のマージンがかなり削られ、シーズン中に何度かエンジンブローに見舞われることとなった。一方、スーパーアグリに搭載されたRA807Eは躍動している。この年もHondaは前年同様、スーパーアグリにエンジンを供給。開幕戦オーストラリアGPの予選では佐藤琢磨がQ3に進出し、Honda勢最上位の予選10位を獲得した。第4戦スペインGPでは佐藤が8位入賞し、スーパーアグリにとって記念すべき初ポイントを獲得している。第6戦カナダGPでも佐藤がマクラーレンのフェルナンド・アロンソをかわして6位に入賞し、日本のファンを熱狂させるなど、その活躍によってRA806Eのポテンシャルが証明されることとなった。
HondaRA107

SUPER AGURI Honda SA07
