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RA166E

1986Williams Honda FW11

F1エンジンを革新したテレメトリー・システム導入

RA166Eは、1986年シーズンにHondaがタイトル奪取を狙い、勝利を重ね、念願の最初のコントラクターズ・チャンピオンを獲得したエンジンである。

前年の85年型RA165Eは、すべてが新設計にもかかわらず4勝を挙げる高性能を発揮したが、RA166Eはその改良型であった。さらなる高回転・高出力を追求し、燃費性能と知能化を向上させた、高性能V6ターボエンジンである。

燃焼効率の向上を狙い、RA166Eではボア×ストロークを再検討。79×50.8㎜にさだめ、RA165Eに比べて3.5㎜もロングストローク化した。高回転・高出力を実現し、燃費性能を良くする、このロングストロークの技術はまたしても量産エンジンの技術を応用したものだった。さらに信頼耐久性をもたせるためにエンジン本体の強度向上をはかり、エンジン補器類やターボチャージャーは部品材料まで吟味して改良を加えた。

そしてついに走行中のエンジン各部の状態を検知してデータ通信するテレメトリー・システムが完成し、当時最高レベルのエンジン知能化を実現した。走行中のエンジンのデータが、最前線のサーキットのピットはおろか日本の本田技術研究所までリアルタイムで届くようになった。このシステムはHondaの独自技術だったので、ライバルチームを圧倒する強力な武器になり勝利に貢献した。やがて各チームが次々と同様のシステムを導入し、F1チームの標準装備になっていった。

初のF1ワールドチャンピオンシップを獲得

86年シーズンは、ターボエンジンによる過度なパワー競争を抑制するために、決勝レースの搭載燃料量が220ℓから195ℓとさらに制限されたが、燃料成分とターボ過給圧については無制限だった。したがって決勝レースでは、すべてのチームが燃費を考慮したレース戦術をとらざるを得なくなり、パワー競争が一定程度抑制されたが、反面、予選においては激化することとなった。予選では燃費を考慮することなく、しかも特別な燃料を使い、過給圧を限界まで上げることで、エンジン破壊の危険をかえりみずパワーを向上させることができたからである。このパワー競争の凄まじさは、1500馬力を発生する予選専用エンジンがあったという報道からも分かる。

Honda F1チームは、あくまでも着実に決勝レースの優勝を狙う戦術をとっていたが、それでも予選では過給圧を5.0bar以上に上げ、85%トルエンの特別な燃料を使用して、ライバルたちとパワー勝負を展開した。

このRA166Eを86年の開幕戦から搭載したウイリアムズFW11は、ネルソン・ピケとナイジェル・マンセルのドライブで全16戦中9回の優勝を獲得し、同年のコンストラクターズ・チャンピオンに輝いた。

Hondaの創業者である本田宗一郎が、現役時代に挑戦したモータースポーツで唯一タイトルを獲り逃していたF1王座を、ついにHondaは手に入れたのである。チャンピオン獲得を決めた第14戦ポルトガルGPでHonda F1チームが発信したコメントは「早く本田宗一郎の喜ぶ顔が見たい」との一文で締められていた。

Williams Honda FW11