公益財団法人 本田財団(設立者:本田宗一郎・弁二郎兄弟、理事長:石田寛人)は、2026年の「本田賞」を、多チャンネル型人工内耳の研究開発と臨床実用化、世界的な普及を先導した、グレアム・M・クラーク教授(Professor Graeme M. Clark AC、オーストラリアの医師・神経科学者、メルボルン大学名誉教授)と、インゲボルグ・ホフマイヤー博士(Dr. Ingeborg Hochmair、オーストリアの電気工学者、MED-EL<メドエル>共同創業者兼CEO)に贈呈することを決定しました。
人工内耳は、補聴器を使用しても言葉を十分に聞き取ることが難しい高度・重度の難聴者のための医療機器です。音を電気信号に変換し、内耳の「蝸牛(かぎゅう)※」内に挿入した電極から聴神経を直接刺激することで音を脳へ伝えます。
両氏は1970年代、オーストラリアとオーストリアでそれぞれ研究に取り組み、音の有無や強弱、リズムの把握にとどまっていた従来の「単チャンネル型」人工内耳に対し、より複雑な音の情報を脳に届けることが可能な「多チャンネル型」人工内耳を開発。音を複数の周波数帯に分け、それぞれの情報を異なる電極から聴神経へ伝えることで、音を「言葉」として聞き取ることが可能となり、難聴者の音声によるコミュニケーションの実現に大きく貢献しました。
人工内耳は、1980年代より製品として提供を開始し、これまでに世界で100万人を超える方々に使用され、乳幼児から高齢者まで幅広い世代の「聞こえ」を支えています。子どもの言語習得や教育、成人の就労や社会参加、高齢者の生活の質(QOL)向上に至るまで、多くの人々に生活の新たな可能性をもたらしています。
内耳にあるカタツムリの殻のような形をした器官。音を電気信号に変換して脳へ伝える役割を担う
授賞理由
グレアム・M・クラーク教授とインゲボルグ・ホフマイヤー博士は、電極設計、信号変換、神経刺激、手術方法、安全性など、人工内耳の実用化に必要な課題に科学・医学・工学の各側面から取り組み、改良を重ねました。さらに、クラーク教授は産業界と連携し、製品化や各国での認可・普及に努めたほか、ホフマイヤー博士は電気工学者である夫と共同で人工内耳に関する企業を設立し、継続的な技術開発と世界展開を主導しました。
人工内耳は、外界の情報を電気信号に変換し、脳の神経経路へ伝達することで、人と機械を結ぶ先駆的な技術であり、その知見はHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)の基盤として他の医療機器の発展の礎となっています。こうした両氏の功績が本田賞にふさわしい成果であると認められ、今回の受賞が決定しました。
本田賞の贈呈式は、2026年11月16日(月)に帝国ホテル 東京にて開催される予定であり、両氏にはメダル・賞状とともに、副賞として総額1000万円が贈呈されます。
※詳しくは下記URLをご覧ください。
本田財団プレスリリース
https://www.hondafoundation.jp/news/view/1890
本田財団ホームページ「業績解説」
https://www.hondafoundation.jp/commemoration/index/285/year:2026