ホンダコライドンプロジェクト
Hondaは2024年夏、株式会社ポケモンの監修のもと、ゲーム『ポケットモンスター スカーレット』の中で出会うことができる「コライドン」の形をしたミライモビリティを製作する「ホンダコライドンプロジェクト」をキックオフさせました。メンバーは社内公募で集まった約40名。みな、「HondaならHondaらしいコライドンが作れる」という思いと自信を持っていました。バイク製品で培ってきた設計思想やシミュレーション技術。発電機やモバイルパワーパックなどのパワープロダクツで蓄積してきた電動パワーユニットのノウハウ。そして、人間型二足歩行ロボット「ASIMO」などを開発したHonda Robotics（ホンダロボティクス）のバランス制御技術。これらを結集すれば、未来へ向けた夢のあるモビリティを表現することができる、子供たちに驚きや感動を持ってもらえるはずです。そしてHondaは、夢のあるモビリティにうってつけの技術を、すでに開発していました。
人間型二足歩行ロボット「ASIMO」
コライドンを自立走行させるホンダ・ライディング・アシスト
2017年に発表したホンダ・ライディング・アシストは、転倒不安のないバイクを目指してHondaが開発を進める二輪姿勢制御技術です。低速走行時や停止時、ライダーが乗っていても乗っていなくても、バイクを自立して走行させることができます。この技術をホンダコライドンに投入すれば、ホンダコライドン自身がバランスを保って静止し続けることも、子供を乗せて低速走行することも可能。コライドンらしさが格段に高まります。課題は、重さと大きさをゲームのコライドンとほぼ同じにしながら、ホンダ・ライディング・アシストの技術を組み込むことでした。
ホンダ・ライディング・アシスト搭載バイク
ロボット開発で培ったバランス制御技術
ホンダ・ライディング・アシストは、ロボット開発で培ったバランス制御技術を応用しています。ベースとなるのは、支点よりも重心が高い位置にある物体を倒さないようにする技術。てのひらに傘を乗せてバランスをとる遊びと同じです。
てのひらでバランスを取るイメージ
開発のなかでHondaは、前輪の角度を変える方法や、後輪を左右に倒す方法など、いくつものアイデアをカタチにしてきました。そのなかから、ホンダコライドンのフォルムを損なうことなくバランスをとることができる方法として、垂直に立てた後輪を左右に回す技術を選びました。
ホンダコライドンがバランスを取るイメージ。停止時は後輪のタイヤが真横に向く。
停止時は後輪が左右に動きバランスを取り、走行時は後輪の自動操舵でバランスを取る。
前輪は停止時、走行時共に操舵でバランスを取る。
しかし、ホンダ・ライディング・アシストの技術を組み込んだからといって、簡単にホンダコライドンが自立するわけではありません。屋内の平らなフロアならまだしも、傾きや凹凸のある屋外のアスファルト路や石畳でも、軽く路面を蹴ったり手足を動かしたりしながら、安定して自立走行させる必要があるのです。それは、Hondaがこれまでに行ってきた二輪開発ともロボット開発とも異なる、まったく新しい試みでした。
夢をカタチに
Hondaの二輪開発の拠点にあるプロジェクトルームには、さまざまなメンバーが事業の垣根を越えて専門知識を持ち寄ります。課題は一つひとつ解決され、“しっそうけいたい”で自立走行する「ホンダコライドン」が完成。自立走行するばかりか、まばたきをしたり、手足を動かしたり、未来のモビリティにつながる進化を示しました。
左：ホンダコライドンのフレーム 右：ホンダコライドン
ホンダコライドンのフレーム
ホンダコライドン
一人では困難な旅も、相棒と一緒なら目的地へたどり着ける。「それって、ポケモンと一緒じゃないか」、と思うのは手前勝手すぎるでしょうか。子供たちに驚きや感動を持ってもらいたいと願った取り組みは、大人たち自身に夢をカタチにする喜びを思い出させてくれました。夢を原動力に人や社会に喜びを提供する。いつまでもHondaは、そんな大人たちの集団であり続けたいと思います。
