高品質な電力と、使いやすさを追求お客様のニーズに応じて進化する「正弦波インバーター発電機」
発電機に求められるニーズに応え続ける
必要な場所に持ち運び、様々な場面で良質な電気を供給する。Hondaのポータブル発電機で初めて市販されたのは1965年の「E300」でした。
Hondaのポータブル発電機は主にガソリンエンジンを動力源としています。ガソリンでエンジンを回転させ、その運動エネルギーを電気エネルギーに変換させますが、こうした発電行程を小さな箱に収めているために、原理上どうしても熱や音が生じます。それらを低減させ、さらに安定した歪みの少ない高品質な電気が供給できる発電機を目指し、Hondaは様々な技術開発に取り組んでいます。
業務用の力強さと家庭用の使いやすさを追求
発売当初のポータブル発電機は屋外のレジャーユースでしたが、さらに工事現場などで使われる業務用としての支持も集め、よりパワフルな発電性能が求められたことから大型化が進みました。
一方、時代と共に家庭用電源が整備され多種多様な電化製品が暮らしに浸透するに従い業務用の他にも、停電時のバックアップ電源として暮らしにおける家電や通信機器に利用するなど、発電機を使う機会が増えてきました。
そのため、電子機器にも対応できる高品質な電気はもちろん、小型・軽量で静か、また燃費が良いなどの要望も高まってきました。
世界に先駆けたインバーター技術の導入
そうしたニーズに応えるべく、Hondaは技術開発を進めていますが、その成果の1つが「正弦波インバーター」と呼ばれる制御システムです。最大の機能は「正弦波(せいげんは)」と呼ばれる滑らかな波形の電気をつくること。Hondaは段階的ながら独自に制御機能を進化させ、エンジン発電機でも周波数がエンジン回転数に影響を受けず、安定的な電気を供給することを可能としました。
さらに1998年に開発した「マイコン制御式正弦波インバーター」によりパソコンなど精密電子機器でも使える波形の滑らかな高品質な電気を、負荷に応じて供給できるようになりました。
Hondaは、安心安全にお使い頂ける発電機を目指し時代によって変化するニーズに応えながら、様々な課題に地道に取り組んでいます。
良質な電気をつくる「正弦波インバーター」への道のり
ポータブル発電機は、小型でシンプルな機構であるがゆえにエンジンの状態や電気を供給する際に生じる負荷に、電圧や周波数が影響を受けてしまうという特性があります。しかし多くの電化製品は、家庭用電源のような巨大な発電システムから供給される正確で歪みの少ない電気を想定して作られています。
そのため初期の発電機では、照明のちらつきや機器が動かないといった事象が生じることがありました。そうした問題を解決するために、Hondaはインバーター技術に挑戦。ポータブル発電機における電気の質の進化に取り組み、段階的ながら課題を解決してきました。
安定した周波数を出す「EX300」
インバーター回路を採用した初めての発電機は、1987年発表の「EX300」でした。不安定な周波数を安定化させ発電効率をあげるため、この発電機には、ローターを高速回転させ三相交流を発電させる「三相多極高速発電方式」を採用しました。
この方式により発電効率を高め、整流回路で直流をつくり、インバーター回路で安定した周波数を維持するいう一連の技術により、高効率で使いやすい発電機へと前進させました。しかしその一方、波形が「矩形波(くけいは)」のため一部対応できない機器がある、という課題も残りました。
正弦波を実現した「EX500」
1996年に発売した「EX500」では、専用のIC(集積回路)によって商用電源と同等の「正弦波」を実現しました。
当時のマイクロプロセッサ(マイコン)技術は、パソコンなど高額な機器類などで使用される限定的なものでした。インバーターの制御部は多数のデジタル処理にICを組み合わせる電子回路による構成としたもののあまりにも複雑化したため、集積化したカスタムICを製作しました。
この正弦波インバーター発電システムにより、波形の乱れが原因で家電製品が正常に機能しないなどの事象を解消しました。さらに2台の発電機を自動的に同期させる「並列運転」が可能になりました。
並列運転はユーザーニーズに応え実現した機能です。これにより大きな発電機を持ち運ぶのではなく、小型発電機2台に分けて持ち運べるようになりました。またそれまでエンジンの回転数に依存していた従来式発電機とは異なりエンジンの高回転化が可能となり、エンジン性能を最大限に引きだすことでエンジンのサイズを従来型の約1/2へとダウンサイジングさせ、「小型・軽量・低燃費化」へと商品性を向上させました。しかし発電機を使うユーザー層の広がりから考えれば、波形の他にも、小型軽量化など更なる商品性向上は必要でした。
世界初のマイコン制御式正弦波インバーターシステムを搭載
2000年前後にはコンピュータ技術の急速な進歩に伴い、ポータブル発電機にもマイコンが搭載されるようになりました。
CPUの情報処理制御によって、家電製品ごとにきめ細やかな制御が可能となったのが1998年発表の「EU9i/EU24i/EU28is」です。採用した「正弦波インバーターシステム」により、パソコンや精密な電気機器でも使用できる程の高品質な電力を出力できるようになりました。
さらにシステム搭載により、発電機を使用するシーンに応じてエンジン回転数をコントロールする「エコスロットル」など、より身近で使いやすい発電機と進化していきました。安定した周波数、商用電源並の正弦波、小型・軽量化などの使い勝手の良さを兼ね備えたHondaインバーター発電機の基礎となる形がここに誕生しました。
省エネと低騒音を実現した「エコスロットル」
インバーターシステム誕生により、「エコスロットル」という機能が生まれました。エコスロットルは、発電機の出力の大きさ(使用負荷)に合わせてエンジン回転を自動制御する技術で、これにより必要な時に必要なだけの出力が得られる「負荷連動型の運転」が可能になりました。
その結果、使い方によっては低負荷運転であれば運転時間の延長や、低燃費、低騒音などが実現できます。
以前のポータブル発電機は出力がエンジン回転数に依存してしまうため「高出力」と「低燃費・低騒音」の両立は困難でしたが、エコスロットルという高度なインバーター制御によって、相反する性能の両立が実現しました。
使いやすさに見合った「小型・軽量化」の追求
ポータブル発電機にとって、電気性能の高さはもちろん、「小型・軽量」「低騒音」「低燃費」であることは大変重要です。1998年発表のEUシリーズではその両立を目指し、クラス初のマイコン制御式正弦波インバーターシステムを搭載すると共に、 「重量は従来機種の約1/2(13㎏)」という目標を掲げ、設計も一新しました。
様々な技術の組み合わせにより目標を達成し、Hondaインバーター発電機のスタンダードが誕生しました。
主な搭載技術
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高速多極アウターローター式
オルタネーター発電部では、三相の高周波の交流を発生させ、整流器とインバーターを経て正弦波を出力させます。
EUシリーズでは従来型の発電方式(オルタネーター+フライホイール)とは異なる「専用高速多極オルタネーター」を開発しました。
さらに、オルタネーターにフライホイールの機能を持たせ、エンジン部に組み込むことで従来型の発電機と比較しても約1/3の軽量化を実現しました。
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マイコン制御式インバーターユニット
インバーターユニットでは、オルタネーターからの高周波交流を一度整流し、波形歪の少ない正弦波の交流を出力すると共に、
エンジン部にある負荷連動回転制御式電子ガバナの制御の両方を行います。またマイコンの採用により正確で高速
な制御が可能となり、発電機が小型でより身近な製品になりました。 -
効率のよい冷却構造
インバーター、オルタネーター、エンジン、マフラーを熱量と温度の低いものから順番に配置し、効率のよい冷却構造を採用しました。
こうした工夫によりエンジンとオルタネーターそれぞれに装備していた冷却ファンがあわせて1つになり容積・重量が削減されました。
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二重防音構造
エンジン部を覆う防音ボックスと防音ボディーとの「二重防音構造」で実用域での超低騒音を実現しました。
さらに、従来は鋼板だったアウターカバーなどに耐久性のある樹脂を採用したことが軽量化にも寄与しました。
21世紀のスタンダードに
EUシリーズをはじめとする2000年前後の技術革新は、従来機種と比較して約25%〜30%の低燃費化を実現した他、大幅な小型・軽量化、低騒音化も大きく押し進めました。「21世紀の発電機のスタンダード」を目指して開発されたEUシリーズは、現在ではラインナップも広がりより多くのお客様にお使い頂ける発電機となりました。
Hondaはお客様の声や使われ方に応えながら積み重ねてきたノウハウを活かして、これからも時代のニーズを反映したより良い発電機を目指し、開発を続けていきます。
さらに身近な発電機を目指した進化
暮らしや仕事の中で「電気」を必要とする機会は広がり、ポータブル発電機の用途もかつては工事現場など一部の仕事で使われるケースが主体でしたが、今では暮らしやレジャーの他、災害時の非常用電源として照明やテレビ等のバックアップ電源として使われる他、スマートフォンなどの情報機器の充電等、幅広い用途で使われるようになりました。
特に大型の設置型発電機と比べ、ポータブル発電機はお客様の用途(お使いになるシーン、使用環境、使用電気機器etc)に応じた進化が求められます。そのため良質な波形はもちろん、「小型・軽量」、「低燃費・低騒音」といった商品性にもつながる基本技術の更なる磨き上げが必要です。例えば、停電時のバックアップ電源として使われる大型発電機は、夜間から朝まで給油なしで連続運転されるケースも少なくありません。そうした使われ方がされる機種にはエンジンにFI(フューエルインジェクション)を採用しました。
燃費向上と長期保管性及びメンテナンス性の向上、またタンク容量を増やすことと相まって更なる長時間運転を可能にしました。
また燃料に購入・使用・保管が容易な家庭用カセットガスを採用した機種もあります。燃料のみならず、操作性や保管性も追求し、エンジン発電機がより身近なものとしてお使い頂けるような仕様としました。
他にも発電機の技術を応用して、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)といった車と家庭や学校などの暮らしを電気でつなぐ給電器・充電器の開発も進んでいます。
発電機市場全体においては、環境意識の高まりから各国における騒音や排出ガス規制は今まで以上に更に厳しいものとなってきます。またガソリンのみならずガスなどの多種燃料化への対応も必要です。
Hondaの発電機技術はお客様のニーズやフィールド、また社会の変化に応えながらこれからも進化を続けていきます。
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