四輪事業戦略

魅力ある四輪商品・サービスを全世界へ

魅力ある四輪商品・サービスを全世界へ

「四輪の地図を塗り替えようじゃないか」。1963年、そんな掛け声のもと始まったHondaの四輪事業は現在、グローバルでさまざまな地域のお客様に商品を提供するまでに成長しました。これまでHondaが培ってきた「あやつる喜び」を時代の変化に合わせて進化させるとともに、「 5つのキーファクター」における独創的な技術の創出を追求することで、「移動に伴う制約からの解放と人の可能性の拡張」という提供価値の実現を目指していきます。

四輪事業の収益ハイライト

四輪事業の収益ハイライト

■ 外部環境認識/課題

BEV市場では、自動車会社のみならず異業種からさまざまなメーカーが参入し、低価格帯から高価格帯まで多種多様なBEVが投入されています。これまでHondaが強みとしてきたエンジン等のデバイス性能による差別化が難しくなっていることに加え、顧客のニーズや価値観が多様化しているため、提供価値やUXによってHondaらしいBEVのアイデンティティを確立することが急務であると認識しています。
今後、電動化の加速により、バッテリーに用いられるニッケル、リチウム、コバルトの需要が急拡大するとともに、鉱物など原材料の供給不足によるバッテリー価格の高騰が懸念されます。バッテリーをはじめとする部品調達のあらゆるリスクに備え、リサイクルやリユースなどの再資源化やサステナブルマテリアルの活用を推進することで、リソースサーキュレーションの実現を目指していきます。
また、事業形態を電動化へ迅速にシフトチェンジさせていくために、よりスピーディーな意思決定を行うための柔軟かつ強固な組織体制を構築することが課題であると認識しています。

電動事業戦略の方向性

電動事業の推進は、「すべての人々が自由な移動の喜びを享受できる社会を実現すること」というミッションの軸となる取り組みです。移動に対する不安を払拭するための「環境負荷ゼロ・交通事故死者ゼロ」の取り組みは加速していくものの、これまでHondaが培ってきた「あやつる喜び」は変わることなく追求していきます。これに加えて、時代の変化に合わせて進化するコネクティビティと知能化によって「つかう喜び」・「つながる喜び」という新たな移動体験を提供することで、お客様一人ひとりに“驚き・感動・信頼”をお届けしていきます。

中長期目標

2030年にはグローバルで年間200万台を超えるBEV生産体制を構築し、2040年までにEV・FCV販売比率をグローバルで100%とすることを目標としています。

商品ラインナップの方向性と今後の商品展開計画

BEV時代の事業構造・提供価値・生産工程の変化をチャンスと捉え、多様化する顧客価値に寄り添ったUXを実現することで新しい価値を提供することを目指します。電動車の新しい価値を提案しながら、HondaのDNAである「スポーティなクルマづくりのスピリット」を具現化する製品づくりに取り組んでいきます。また、商品ラインナップのグローバル化により強いブランドメッセージを持った商品展開を推進していきます。

地域 投入する商品
北米 ・2024年にGMとの共同開発モデルである「PROLOGUE」をHondaから、「ZDX」をAcuraからそれぞれ発売。
・2025年にHonda独自のEV専用プラットフォームをベースとした、新たなE&Eアーキテクチャーを採用した中大型EVを発売。
中国 ・「e:NS2」「e:NP2」を2024年初頭に発売。
・2023年4月に上海モーターショーで公開したコンセプトモデル「e:N SUV 序」をベースとした量産モデルを2024年中に発売。
・上記3モデルを含め、2027年までに10機種のEVを投入。
日本 ・2024年前半に「N-VAN」ベースの軽商用EVを発売。
・2025年に「N-ONE」ベースのEV、2026年にSUVタイプを含む小型EV2機種を発売。
欧州 ・「e:N(イーエヌ)」シリーズの欧州市場向けモデルとして「e:Ny1」を 2023年秋から欧州各国で順次販売開始。
  • ※ E&Eアーキテクチャー:電動化と電子技術の統合(Electrification&Electronics Architecture)

電動事業の早期自立化に向けて

BEV事業の早期自立化を実現するために、以下のテーマに全力で取り組んでいきます。
・バッテリーを起点にしたアロケーション(経営資源配分) 戦略と事業体質の強化
・お客様の価値観の多様化に対応するUXの進化
・ライフサイクル視点での顧客接点・サービス提供の拡充
・ デジタルサービスの基盤構築をはじめとしたソフトウェア・ハードウェアの融合による新たなブランド価値の確立
・グローバルモデルの展開による生産効率化と提供価値の向上
・持続可能な社会を実現する情報基盤の整備と技術準備

バッテリー領域における取り組み

バッテリー領域における取り組み

具体的な取り組み

・バッテリー戦略
・充電・インフラ戦略
・ソフトウェア戦略
・BEV生産体制

バッテリー戦略

足元から将来まで複数のバッテリー調達手法を準備し、電動化の加速に対応していきます。
液体リチウムイオン電池の調達に加えて、新たなバリューチェーンを構築するため、北米ではLGエナジーソリューションとの合弁会社で2025年からバッテリーの量産を開始予定です。重要鉱物の調達については、阪和興業株式会社・POSCOホールディングスと、リサイクル観点ではアセンド・エレメンツやサーバ・ソリューションズとパートナーシップを締結しています。
2020年代後半からは、液体リチウムイオン電池の進化に加え、半固体電池・全固体電池などの次世代電池を開発・投入していきます。液体リチウムイオン電池の性能進化に向けては、株式会社GSユアサと高容量・高出力なEV用液体リチウムイオン電池の開発に着手し、日本国内における電動化の加速に貢献していきます。また、次世代電池の技術進化に向けて、半固体電池については、SESへの出資を通じて、安全で高い耐久性を持つ大容量バッテリーの実現を目指し、共同開発を推進していきます。全固体電池については、2024年に栃木県さくら市での実証ラインを立ち上げ、2020年代後半の市場投入を目指し、取り組みを加速させていきます。

充電・インフラ戦略

BEVの拡充にあわせた充電サービスの拡大に取り組んでいます。公共充電については、北米でのEVの普及加速を目指し、Hondaの米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーターと、BMWグループ、GM、ヒョンデ、キア、メルセデス・ベンツグループ、ステランティスN.V.の計7社が、米国とカナダでEV用高出力充電網を新たに構築する合弁会社の設立に合意しました。同社は、2024年夏に米国で初となる充電ステーションの開設を計画しており、大都市圏や主要幹線道路沿いから順次充電網を拡大していきます。
ステーション内には高出力のDC充電器を複数設置し、充電規格であるCCS※1やNACS※2に対応した、あらゆる自動車メーカーのEVが充電可能となります。また消費電力は、環境に配慮し再生可能エネルギーのみでまかなう予定です。今後、米国とカナダで少なくとも3万基の充電器を設置することで、EVユーザーが利用しやすい高出力充電網の展開を目指します。家庭充電は、北米ですでに展開しているEV向け充電サービス「Honda Smart Charge」をベースとし、EVの電力供給能力を活用したスマートエネルギーサービスを順次、展開予定です。

  • ※1 CCS:コンバインド充電システム(Combined Charging System)
  • ※2 NACS:北米充電標準規格(North American Charging Standard)

ソフトウェア戦略

ソフトウェアがハードウェアやサービスの価値を定義する「ソフトウェアデファインドモビリティ」の発想に基づき、ソフトウェアの開発を加速させます。具体的には2025年に北米で投入する中大型EVからの採用を目指して、E&Eアーキテクチャーをさらに進化させるとともに、Honda独自のビークルOSの開発を進めています。このビークルOSを基盤として、車載ソフトウェアを常に進化させることで、車両販売後も機能やサービスを進化させていきます。また、BEVと親和性の高いデジタルサービスを、安心・快適・信頼をベースとしつつ、一元管理で分かりやすい充電案内などUX起点の魅力的なサービスとしてスピーディーに提供していきます。
ビークルOSやAD/ADAS、UX・デジタルサービス領域におけるソフトウェアの独自開発に向けては、高度ソフトウェアに関する開発人材の採用計画数を倍増させるとともに、協業先との連携強化を積極的に図っていきます。SCSK株式会社とのパートナーシップにおいては、Hondaが持つシステム制御技術や安全制御技術と、 SCSKが持つIT技術といった互いの強みを持ち寄り、両社のエンジニア同士のシナジーを最大化させ、ソフトウェアエンジニアの継続的な育成に取り組みます。また、KPIT TechnologiesLimitedをはじめとした開発パートナーとの提携強化、日立Astemo 株式会社との電動化やADAS 領域など先進分野への取り組みを通して、Hondaの強みである制御技術や安全技術と、パートナーの強みであるソフトウェア開発力を組み合わせ、ソフトウェアがもたらす新たな価値の実現を目指します。
なお、デジタルサービス領域においては、新設したグローバルUXオフィサーにドライブモード社のCEOを迎え、意思決定の権限を集約することで、顧客観点での魅力的なUXをスピーディーに提供し続けるソフトウェア開発に取り組んでいきます。

ソフトウェア領域の進化

ソフトウェア領域の進化
  • ※1 PT:パワートレイン
  • ※2 IVI:車載インフォテインメント(In-Vehicle Infotainment)

BEV生産体制

世界的な電動化加速にともない、グローバルHondaにおける電動車生産体制の構築を推進しています。
北米では、米国オハイオ州内の3つの既存工場(四輪車を生産するメアリズビル工場とイーストリバティ工場、四輪車用パワートレインを生産するアンナ・エンジン工場)をEV生産のハブ拠点と位置づけ、既存工場を活用しながら、高効率かつフレキシビリティの高いEV生産ラインを構築しています。
さらに、2020年代後半に発売予定のEVをターゲットとして、「次世代BEVものづくり工場」への生産システム改革に着手しており、以下の3つの観点で取り組みを行っていきます。

1) 高い商品魅力を有した製品を高効率かつフレキシブルに生産できる工場への進化とサプライチェーンの構築
2) 将来の労働力変化に対応できる、自動化・知能化を追求した生産ラインの構築
3) CO2排出を極限まで抑えるとともに、リソースサーキュレーションを前提とした生産プロセスへの転換

生産台数が増加する2030年以降に向けては、「次世代BEVものづくり工場」のグローバル展開によって、商品力・価格競争力の高いBEVをお届けします。

EV生産体制の強化

EV生産体制の強化

ICE事業 “ハイブリッドの進化”

電動化の加速と並行して、ICE製品を選ばれるお客様にも魅力ある商品をお届けするために、手を緩めずに開発を推進していきます。
「部品の共用領域」と「車種ごとの独自領域」を棲み分けるHondaアーキテクチャーを適用して「CR-V」「ACCORD」をフルモデルチェンジしましたが、この取り組みをもう1段階進化させます。具体的には、「部品・配置を統一したモジュラーアーキ」に「BEV先進技術の共用化」を掛け合わせることで、先進安全技術など最新の価値をICE製品でも提供します。具体的には、2026年からグローバル展開する基幹モデル群にこれらを反映し、さらに、軽量プラットフォームと新世代パワーユニット、電動AWDの採用により、これまで以上の環境性能と高いダイナミクス性能をお届けします。
事業観点では、ラインナップ及びパワートレインのグローバル共通化を加速し、事業効率の向上と地域間の生産を含めた相互補完体制を強固なものとしていきます。
今後のお客様のニーズの変化に素早く対応するために、開発期間の短縮化、派生シリーズの活用などの施策を実施し、これからも魅力的な商品をお届けしていきます。

CR-V

CR-V

ACCORD(北米向け)

ACCORD(北米向け)