二輪事業戦略

二輪車市場の新しい可能性を切りひらく

二輪車市場の新しい可能性を切りひらく

Hondaの祖業である二輪事業。各国や地域に根付いたものづくりを実践し、全世界での販売店は3万店を超え、35拠点で完成車製造を展開し、年間約2千万台を世界で販売するトップメーカーに成長しました。この世界最大のネットワークを活かした、プラットフォーム設計やグローバル供給補完体制により、Hondaらしい魅力を備えた商品と高いコスト競争力を両立し、事業の高収益体質を維持しています。
世界中のお客様の“移動のニーズ”に対応し、二輪車市場の新しい可能性を切りひらくことで、二輪車のリーディングカンパニーとして世界を牽引していきます。

二輪事業の収益ハイライト

二輪事業の収益ハイライト

新しい時代に即した事業へ

若年人口が増加する新興国を中心に、今後も二輪市場の拡大が見込まれます。また世界的に環境規制の強化が進み、先進国だけでなくインドや東南アジア諸国などの新興国でも政府による電動化目標が設定されるなど、環境意識の高まりが顕在化しています。
対応策としてモビリティの電動化が期待されていますが、その一方で、新興国の電動車需要は、政府のインセンティブによる影響が大きく、かつ電力の安定供給や充電ネットワークの整備など、インフラ面での課題が残ります。電動車へのシフトは、不透明な要素を踏まえ、ICE車へのニーズが継続する市場、電動化が進む市場を見極めながらリソースを最適配分し、電動新興メーカーに対してはHondaの強みを活かし差別化を図っていきます。

環境と安全をリードして「より便利に・より自由に」

二輪車は、アジア地域をはじめとした新興国において人々の生活を支える移動手段であり、社会インフラとしての重要な役割を果たしています。そのために、Hondaはお客様の手が届く価格帯で製品を提供していくことが重要であると考えます。生産効率を向上させるプラットフォーム設計やグローバル供給補完の展開による継続的なコスト削減を図り、高いコスト競争力を維持します。
さらにデジタル技術の活用によるお客様とのつながりを今まで以上に増やし、二輪車を通じて広がる生活の利便性や楽しみを積極的に訴求・拡大していきます。
また、安全・安心なモビリティ社会の実現に向けて、従来より取り組んできた安全運転教育はグローバルでの展開を継続し、さらに先進ブレーキ、LEDなど安全技術の適応機種を拡大することで、「より便利に・より自由に」をより多くのお客様にお届けしていきます。
環境課題解決に向けては、電動化に限ることなくICE領域での燃費向上、バイオエタノール燃料の対応技術など、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを、地域特性に合わせながら一層加速させていきます。

電動事業戦略の方向性

Hondaの二輪車は世界中のお客様の“移動のニーズ”に対応し、多くの方にご利用いただいています。これまでICE車のプラットフォーム展開で培った競争力あるものづくりの技術とノウハウを活かし、各国のお客様のニーズに適応する電動二輪プラットフォームを順次開発していきます。高効率なものづくりにより、電動車においてもICE車同様に「移動の喜び」をお求めやすい価格でお届けすることで、グローバルでの二輪車の電動化を牽引していきます。
電動商品では世界中のさまざまなニーズに応えていくために、ある程度限定された環境において利用されるビジネス向けに加え、さまざまな用途で使用される個人向けのモデルも展開していきます。個人向けモデルにおいては使用環境や使い勝手によって最適なバッテリー方式を選択できることが重要となります。お客様がそれぞれの環境にあわせて選択できるよう、交換式とプラグイン充電方式の2つの方式を用意して幅広い需要に応えていきます。

中長期目標

2026年には電動二輪車をグローバルで合計10モデル以上投入し、販売台数年間100万台を目指します。2030年にはラインナップをさらに拡充し、350万台の販売を目指します。

具体的な取り組み

・電動化商品の展開
・調達・生産戦略
・バッテリーシェアリングサービスの展開
・環境変化に柔軟に対応できる体質への強化

電動化商品の展開

SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)経営の観点から需要が高まっているビジネス向けモデルを足がかりに市場へ参入し、交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e(: モバイルパワーパック イー)」を搭載した「BENLY e: 」「GYRO e: 」「GYRO CANOPY e: 」のビジネス向けモデル3機種を展開しています。「BENLY e: 」については、日本だけでなくタイでも生産を開始し、タイ国内での販売のみならずベトナムへの輸出も行っています。

BENLY e:

BENLY e:

GYRO e:

GYRO e:

GYRO CANOPY e:

GYRO CANOPY e:

これらビジネス向けモデルに加え、2023年より個人向けモデル「EM1 e:( イーエムワン イー)」を日本で販売開始し、欧州・インドネシアへの展開を図るとともにインドにおいては新モデルの投入も予定しています。電動二輪車の需要が顕在化しているアジア地域を中心に今後も個人向け電動二輪車の開発・市場投入を加速させていきます。

EM1 e:

EM1 e:

EM1 e:

また、より多くのお客様の用途や市場環境を想定し、固定バッテリーによるプラグイン充電方式の商品開発も進めています。グローバルのお客様の多様なニーズやライフスタイルに応え、バッテリーや充電方式に複数の選択肢を提供するために技術開発を継続していきます。

調達・生産戦略

需要に合わせ、電動3部品(バッテリー、PCU、モーター)の最適生産アロケーションを検討し、主要な市場であるアジアのなかでも、インド、インドネシアを中心として展開していきます。
また主要部品のバッテリーについては、安全性を確保しながら、高出力・高密度化・高寿命化を達成する電動二輪車に適した次世代バッテリーの採用を検討しています。
さまざまな商品で地域のニーズに応えるために、NCM系(ニッケル・コバルト・マンガン)、LFP系(リン酸鉄リチウムイオン)などそれぞれの使い勝手に適したバッテリーシステムの提供に向けて開発を加速させていきます。

バッテリーシェアリングサービスの展開

電動二輪車の普及に向けた課題に、バッテリーのコスト、充電環境と航続距離が挙げられます。これらの問題を解決する手段の一つとして、交換式バッテリーの「Honda Mobile Power Pack e(: モバイルパワーパック イー)」を開発しました。この交換式バッテリーを用いたバッテリーシェアリングサービス事業を2022年より開始しており、インド、インドネシアでは現地子会社を設立しました。日本においても同年4月にENEOSホールディングス株式会社と国内二輪車4メーカー(Honda、カワサキモータース株式会社、スズキ株式会社、ヤマハ発動機株式会社)で株式会社 Gachaco(ガチャコ)を設立し、今後のさらなる拡大展開を図っていきます。

Honda Mobile Power Pack e
Honda Mobile Power Pack e

環境変化に柔軟に対応できる体質への強化

原材料やエネルギー価格の高騰、環境や安全に対する社会的要請の高まりなど市場環境が大きく変化する中で、Hondaは環境変化に柔軟に対応できる体質を目指し競争力を強化していきます。具体的には、部品共用化、量産開発のスピード向上、高価格素材を使わない触媒の使用などによるコストイノベーション、リスクを分散した強靭なサプライチェーン構築など、バリューチェーン全体の効率向上を通じて、高収益体質を継続することで、電動領域のリーディングに向けた基盤強化を図っていきます。