社会貢献 2026.10.27

マレーシアの太陽を、Hondaの力に。ワイガヤから始まった太陽光発電への挑戦

マレーシアの太陽を、Hondaの力に。ワイガヤから始まった太陽光発電への挑戦

 POINTこの記事でわかること

  • 現場の従業員による「ワイガヤ」から、マレーシアの地域資源(豊富な日照量)を活かす太陽光発電プロジェクトが始まった。
  • 相次ぐ行政のルール変更を乗り越え、太陽光発電パネルを設置、蓄電池システム(BESS)を導入し、CO2排出量の削減に加え、電気料金の削減を実現した。
  • 廃棄物削減などの工場内の活動に加え、地域住民参加型の環境活動も行われるなど、地域とともに歩むサステナビリティを体現している

一年を通して豊かな日差しに恵まれるマレーシア。この地で四輪車の生産を続けてきたHonda Malaysiaでは、大規模な太陽光発電と国内製造業で先駆けとなる蓄電池システム(BESS)の運用が進んでいます。きっかけは、現地の従業員たちによる「ワイガヤ」でした。「地域に根ざしたカーボンニュートラル」の舞台裏を紹介します。

マレーシアで25年以上──地域とともに歩んできたHonda Malaysia

マレーシア南西部、首都クアラルンプールから約100kmに位置するマラッカ州。緑豊かなこの地に、ホンダ・マレーシア・エスディーエヌ・ビーエイチディー(Honda Malaysia Sdn. Bhd. 以下、ホンダマレーシア)の四輪車生産工場があります。

2002年に生産を開始したこの工場では、現在6車種を生産し、マレーシアのお客様にお届けしています。マレーシア現地で生産し、現地のお客様に寄り添いながら、2022年には累計生産100万台を達成。2014年以降、マレーシア国外で創業したメーカーとしては12年連続乗用車部門の販売台数ナンバーワンを達成しています。

プロジェクトの全体サポートを担うShimaは、マレーシアにおけるHondaの存在感について語ります。

太陽光パネルプロジェクトを推進したメンバー Shamsul Hassan、Mohd Firdauzaman Hamzah、Maizathul Shima Othman 太陽光パネルプロジェクトを推進したメンバー Shamsul Hassan、Mohd Firdauzaman Hamzah、Maizathul Shima Othman
Shima
Shima

ホンダマレーシアは約25年にわたり、地域とともに成長してきました。マレーシアのお客様にとって、Hondaは『信頼性が高く、憧れであり、親しみを感じられるブランド』です。

地域に根ざしてものづくりを続ける企業として、地域の雇用や産業の発展に貢献するとともに、日々の事業活動が環境に与える影響にも向き合う責任が大きくなっています。

マレーシア政府は「国家エネルギー転換ロードマップ(NETR)」を掲げ、2050年までに再生可能エネルギーの設備容量比率を70%に高め、ネットゼロ排出を目指す方針を打ち出しています。ホンダマレーシアではこれまでも、工場の省エネルギー活動として、圧縮空気設備の改善やLED照明の導入などに取り組んできました。しかし、環境負荷低減の取り組みをさらに前へ進めるには、既存設備の効率化にとどまらない、新しい発想が必要でした。

その出発点にあったのは、「この地域だからこそできる環境活動はないだろうか」という現場からの問いでした。

ワイガヤから生まれた太陽光発電プロジェクト──導入までの試行錯誤

Hondaには、立場や部門を越えて自由に意見を出し合う「ワイガヤ※」の文化があります。ホンダマレーシアの太陽光発電プロジェクトも、このワイガヤの中から具体化していきました。

アシスタントプロジェクトリーダーのShamsulは検討時を振り返ります。

※自由闊達な議論を通じて、独創的な考え方や解決方法などを見つけ出すHonda独自の企業文化

Shamsul
Shamsul

当初、再生可能エネルギーの導入に向けて検討された選択肢は太陽光発電だけでなく、風力発電などの可能性も議論していました。しかし、マレーシアの気候や地理的な優位性を踏まえたとき、一年を通じて豊富な日照量を活かした太陽光発電こそ、地域の特性に合った選択肢ではないかという結論に至り、太陽光パネル導入の検討が始まりました。

知見を深めるため、すでに太陽光発電を導入している他社工場へ直接足を運び、設備や運用ノウハウを調査したうえで、一般的な再生可能エネルギーの導入事例をそのまま当てはめるのではなく、ホンダマレーシアの工場にとって本当に有効な形を探りました。どの建屋の屋根に設置すれば最も効率よく日射を受けられるのか。屋根の強度や将来の建屋利用計画に支障はないか。煙突や排気設備などによる影の影響をどう抑えるか。現場では、技術、財務、購買、法務など、部門を横断したメンバーで、工場の実態に即した検討を重ねました。

太陽光パネル導入プロジェクトメンバーのワイガヤの様子 太陽光パネル導入プロジェクトメンバーのワイガヤの様子

太陽光発電施設の導入検討にあたり、最大の難所となったのが「最適な発電容量」の算出でした。マレーシアの自家消費型太陽光発電制度「SELCO(Self-Consumption)」では、発電した余剰電力を電力会社へ売電することが認められていません。

Shamsul
Shamsul

せっかく発電した電力が無駄になってしまうことを防ぐため、工場が稼働していない休日の『最低消費電力量』まで細かく算出し、発電した電力を工場内で使い切れる設備容量の上限を慎重に算出しました。

通常の設備投資であれば、社内の技術検討と投資判断を中心に進められる部分も多くあります。しかし、今回のプロジェクトでは、行政の制度や電力会社との条件、消防・安全面のガイドラインなど、外部環境の変化にも対応しなければなりませんでした。

環境投資への税制支援「GITA」の申請要件に蓄電池システム(BESS)の設置が追加されたことに加え、行政の消防安全部門のガイドライン変更も重なったのです。

プロジェクトリーダーのFirdauzamanは、当時の苦労について振り返りました。

Firdauzaman
Firdauzaman

ルールが変わるたびに仕様を見直し、コストやスケジュールを再計算して承認を取り直す作業は、チームにとってハードなプロセスでした。しかし、チームはこのBESS導入が工場のエネルギーマネジメントをより効果的かつ効率的にするチャンスと捉えました。    

マレーシアにはピーク時の使用量で料金が決まる「最大需要電力料金(デマンド料金)」があり、同工場では14時〜22時が対象です。発電した電力を蓄え、夕方以降の操業時間帯にも活用できれば、太陽光発電の価値をさらに高めることができます。また、電力使用のピークを抑えることで、電力料金の低減にもつながります。こうしてホンダマレーシアは、太陽光発電と蓄電池システムの組み合わせに取り組みました。

Shamsul
Shamsul

太陽光だけでは、太陽が沈んだ夕方以降のピーク電力に対処できません。そこで、BESSを活用し、日中の余剰電力を蓄えておき、必要に応じて夕方から夜10時の2勤(夜間シフト)の時間帯に活用することで、発電した再生可能エネルギーをより無駄なく使える仕組みを構築したことで、デマンド料金を約20〜30%削減できたのです。

こうして約6カ月の建設期間を経て、合計5.6MWの太陽光発電パネル(約8,960枚)と、5.8MWhの蓄電池システム(BESS)が完成。2026年4月に稼働を開始しました。8月には月間592MWhを発電し、月364トン相当(年間換算で約4,584トン・工場全体の約10%に相当)のCO2排出削減を達成するなど、チームが試行錯誤して試算した通りの成果を上げています。

導入された太陽光パネルとBESSシステム 導入された太陽光パネルとBESSシステム

工場の枠を超え、地域コミュニティとともに創る持続可能な未来

太陽光発電と蓄電池システムの導入は、工場で働く従業員たちの意識にも変化をもたらしました。 環境活動を特別な取り組みとして捉えるのではなく、日々の業務における一つひとつの判断にも、環境への配慮を取り入れるようになったのです。

Shamsul
Shamsul

今では日々の業務の中で『自分のこの判断が、サステナビリティにどう貢献できるか』を自然と意識するようになりました。

マレーシア国内の産業界をリードする今回の取り組みは、マラッカ州政府の視察を受けるなど、行政や地域社会からも高い評価を獲得。官民のパートナーシップはより強固なものになっています。

また、マラッカの生産工場での取り組みをさらに広げるべく、次のステップに向けた挑戦も始まっています。現在、アフターセールスのチームが中心となり、セランゴール州シャーアラムに保有する部品倉庫へのソーラーパネル設置に向けて検討を開始。2027年の設置に向け、従業員 一丸となって新たな挑戦を続けています。

そして現在、ホンダマレーシアの環境への挑戦は、エネルギーの枠を超えて「循環型社会の形成」へと広がっています。工場では指定廃棄物である「金属水酸化物を含む汚泥」の再資源化に着手。さらに、「Trash to Cash(ゴミをお金に)」プログラムを実施。従業員が家庭の廃油や電子機器などの再利用可能な資源を工場に持ち寄るリサイクル活動も盛んになりました。このプログラムは周辺地域やサプライヤーとも連携しながら、地域全体の活動に拡がっています。

「Trash To Cash」プログラムの様子 「Trash To Cash」プログラムの様子
Firdauzaman
Firdauzaman

今後は太陽光発電とBESS運用の効果をさらに高めるとともに、廃棄物削減や水使用量の削減にも徹底して取り組んでいきます。政府やサプライヤー、近隣工場、そして地域の皆さんと手を取り合いながら、コミュニティ全体で持続可能な未来を創っていきたいですね。

「マレーシアの太陽を、どうすれば自分たちの力に変えられるか」──。

現場のワイガヤから生まれた問いは、太陽光発電と蓄電池システムの導入を実現し、今では工場の枠を超えた環境活動へと広がっています。地域の特性を活かし、自分たちにできることを考え、行動する。そんな従業員たちの一歩一歩が、ホンダマレーシアの新たな挑戦につながっています。

Index