POINTこの記事でわかること
- 「CB400 SUPER FOUR E-Clutch」は、歴代モデルや特定モデルの再現ではなく、“直列4気筒の新たなスタンダード”としてゼロから開発。
- デザインや軽さ、走り、音、操作感まで、あらゆる瞬間がライダーの楽しさにつながることを目指して徹底的に磨き上げた。
- 誰もが安心して楽しめるスタンダードがあるからこそ、多様な個性が育つ。その思想を体現するバイクとして、日本をはじめアジアを中心に展開されていく。
1992年の誕生以来、CB400 SUPER FOURは日本を起源とするスタンダードネイキッドスポーツとして多くのライダーに愛されてきたバイクです。「CB400 SUPER FOUR E-Clutch」はその名を受け継ぎますが、決して復刻や後継モデルとして開発されたのではありません。目指したのは、歴代の系譜を受け継ぎながらも、現代のライダーにふさわしい“直列4気筒の新基準”をつくること。そこに込めた想いを、開発責任者に聞きました。
二輪・パワープロダクツ開発生産統括部 第一商品開発部 商品企画課 アシスタントチーフエンジニア
CB400 SUPER FOUR E-Clutch開発責任者
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中村 拓郎(なかむら たくろう)
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現代のスタンダードネイキッドを具現化
2022年、長年愛され続けたCB400 SUPER FOURの生産が終了。そのころHonda社内では、「新たな直列4気筒のミドルクラス(400〜500cc)エンジンを搭載したモデルをつくろう」というプロジェクトが動き始めていました。しかし、それは「新しいCB400 SUPER FOUR」ではありませんでした。開発チームが目指していたのは、今の時代に求められる「これからのスタンダードネイキッド」を、一からつくり上げることでした。
世界の市場では日々、数多くの新興メーカーが頭角を現しています。市場ニーズに応えられなければ新興メーカーに存在感を奪われかねない。そうした危機感を背景として、Hondaならではの価値とは何か、その問いに真正面から向き合った結果たどり着いたのが、トータルバランスを徹底的に磨き上げた“現代のスタンダードネイキッド”という答えでした。
現代のお客様は、ミドルクラスのスタンダードネイキッドに何を求めているのか。それを常にチームで意識しながら開発を進めていました。その結果完成したモデルは、見ても走っても『これはまぎれもなく現代のスーパーフォアだよね』という認識が広まり、最終的に「CB400 SUPER FOUR」の名前を受け継ぐことに決まりました。
開発チームの手応えは、500ccのコンセプトモデルとして世界初披露となった中国・重慶モーターサイクルショーでも確かなものになりました。アンベールの瞬間、会場は大きな拍手に包まれたと言います。
中国では価格発表で拍手が巻き起こることはあっても、コンセプトモデルのお披露目だけで会場が沸くのは非常に稀だと現地のスタッフから聞きました。なので、会場の反応はとてもうれしかったですし、同時に強い手応えも感じました。
2025年9月、重慶モーターサイクルショーで「CB500 SUPER FOUR」として世界初披露
「すべての瞬間が、楽しさにつながる」モーターサイクルとは
開発チームが掲げたテーマは、「すべての瞬間が、楽しさにつながる」。その言葉の裏には、中村が一貫して抱き続けた「楽しいバイクをつくりたい」というシンプルで揺るがない想いがありました。
まずは、見た瞬間に『かっこいい』と思えること。またがった瞬間に『軽い』と感じられること。そして走り出したら、思わずニヤッとしてしまう『気持ちよさ』があること。バイクライフのあらゆる瞬間で『楽しさ』を感じてもらいたいと思っていました。
開発チームは個別の性能を突き詰めるだけでなく、完成車全体のバランスを徹底的に磨き上げました。フレームから足回りまでの徹底的な見直しにより先代から約14kgの軽量化を実現。車体の取り回しやすさや軽快なハンドリングなど、運動性能向上に大きく寄与しています。
新しいエンジンの開発にはやはり力が入りました。つくり上げたのは王道の直4エンジンです。軽量・コンパクト化という最新トレンドを取り込み、低中回転域の力強さと直4らしくパワーピークまで一気に駆け上がる胸のすくような回転上昇を感じていただけると思います。
4本のエキゾーストパイプは、見た目としてはとても綺麗ですが、最新の排出ガス規制に対応するには難しい形状なんです。4本それぞれ長さも違いますし、制御も複雑になる。それをクリアしながら、4本の並びの美しさも実現しました。諦めずにチームでアイデアを出し合った成果がこのカタチになっています。
また、ライダーのスロットル操作を電気信号に変換し、スロットルバルブの開閉を制御するスロットルバイワイヤシステム(TBW)に、クラッチ操作を電子制御するHonda E-Clutchを組み合わせることも、“新しいスタンダードネイキッド”を構成する上で重要な要素となりました。
ライダー自身のクラッチ操作が不要になることでエンストの不安が大幅に軽減されますし、コーナリングなどのライディングにも集中できます。また、クラッチレバーを握るだけでマニュアル操作に切り替えることができるため、上質なシフトフィールも相まって、バイク操作に慣れていない方には安心感を、ベテランライダーにはシチュエーションに応じて自分好みの操作ができる新しい走行体験を提供できると考えています。
さらに、「楽しさ」への注力は「サウンド」にも及びます。
バイクを運転しているあいだ、排気音はもちろん吸気音も聞こえてきます。今回、吸気系にダウンドラフトレイアウトを採用し、タンク下に配置されたファンネルから聞こえてくる吸気音が気持ちを高揚させワクワクにつながるようにつくり込みました。
軽く取り扱いやすい車体、直4らしいスムーズで力強いエンジン、安心感をもたらす操作系、そしてライダーの心に響くサウンド。そのすべてが調和することで、「すべての瞬間が、楽しさにつながる」モデルが誕生しました。
「オールマイティな優等生」が備える、新しい基準
歴代のCB400 SUPER FOURは、日本では教習車としても採用されるなど、「オールマイティな優等生」に例えられることも多い、バランスのよいモデルです。バイクは趣味性も強く求められる商品だからこそ、“優等生”であることは、ときに無個性と受け取られることもあります。しかし中村は、そこにこそ存在意義があると言います。
すごいパワーがあっても、お客様が実際に使うのは実はその一部。その限られた領域でいかに気持ちよく、楽しく使えるか。今回の開発でも、試験データとして挙がってくる情報がライダーにとってどういった体験価値につながるのか、あるいは困りごととして発生しうるのか、具体的なシーンに置き換えて一つひとつ愚直に検討してきました。そうやって完成した、誰もが安心して乗れる最新のスタンダードがあるからこそ、その先により趣味性の高い個性的なモデルへ挑戦する楽しさも生まれる。
その上で、「いろいろなバイクに乗ってきたけど、またCB400 SUPER FOURに戻ってきたくなる」ような存在になれたらうれしいですね。
開発チームで行った試乗会。試験データがどのようなユーザー体験に現れるのか、三現主義にのっとり確認を繰り返した
今後、この新型CB400シリーズは同じエンジンのCBRモデルと併せて、中国や東南アジア地域では上級モデルとして、ヨーロッパではエントリークラスの直列4気筒モデルとして、それぞれ異なる役割を担いながら世界へ展開されていきます。担う役割は違っても、届けたい価値は変わりません。
その「楽しさ」への想いの背景には、大学時代にバイクで日本を縦断した中村自身の原体験があります。
私にとってバイクは、自分の可能性を広げてくれる存在です。大学時代に北海道の端から九州の端までバイクで走った経験は、自分の世界を広げてくれました。今の時代のみなさんにも、そういう体験をしてほしいと思っています。どれだけ社会が変化しても、バイクの普遍的な価値はあまり変わらないと思うんです。乗って楽しいこと。そして乗ることで世界が広がること。そこは昔も今も変わらない。
一方で、環境性能や安心・安全などの技術手段は時代に合わせてアップデートさせていく。そうした進化を取り入れながら、普遍的な楽しさを届けられるバイクをこれからも世界中のライダーに届けていきたいです。
“基準”となるCBがあるからこそ、その先には多様な個性が生まれる。そしてその基準は、時代とともに進化し続けなければならない。
受け継ぐだけではなく、新しいスタンダードをつくる。
「すべての瞬間が、楽しさにつながる」という想いには、Hondaがこれからも変わらず挑戦を続けていく意思が込められていました。
CB400 SUPER FOURを検討するきっかけとなった中国では、スポーツバイク文化そのものの急速な広がりとともに、多気筒のミドルクラスモデルの需要が高まっています。また、Z世代を中心に、バイクに乗るだけでなくSNSで「いかに魅せるか」も重視する、これまでとは違った楽しみ方が加速的に広がっています。