POINTこの記事でわかること
- 「技術で世の中の役に立ちたい」という有志の想いを原点に、ATV(All-Terrain Vehicle、全地形対応車)を活用したビーチクリーナーの開発が始まった。
- 2006年の公認化を機に活動は全国へ拡大。「技術は人を支えるもの」という信念のもと、砂浜清掃活動を通じて次世代の環境意識を育んでいる。
- 誰もが安心して素足で歩ける砂浜を目指し、人と技術の力で美しい環境を次世代へつないでいく。
1999年、ATV(All-Terrain Vehicle、全地形対応車)の市場調査で訪れた海岸で、Hondaの開発者たちは漂着ゴミに覆われた砂浜を目にしました。
「ATVで何かできないか」。
技術で世の中の役に立ちたいという想いを原点に始まったHondaのビーチクリーン活動は、2006年に社会貢献活動として本格始動し、2026年で20周年を迎えました。これまでに全国222カ所で計484回実施され、延べ8万人が参加。592トンのゴミを回収してきました。
“素足で歩ける砂浜を次世代へ”。Hondaがこの活動を続けてきた理由を、社会貢献推進室と機材開発に携わるエンジニアへの取材から紐解きます。
社会貢献推進室 もっと見る 閉じる 渡部 寛太(わたなべ かんた)
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二輪・パワープロダクツ開発生産統括部 第二商品開発部 完成車開発課 チーフエンジニア もっと見る 閉じる 井上 雅洋(いのうえ まさひろ)
さらに表示ATV開発の現場から生まれたビーチクリーン活動の原点
Hondaのビーチクリーン活動は、1999年にATVの市場調査で訪れた海岸が活動の原点です。大量の漂着ゴミで汚れた砂浜を前に衝撃を受けたと振り返ります。
当初は朝霞研究所のATVを使った機材開発テストの一環としてスタート。有志メンバーで議論を重ね、ATVと独自開発した周辺機器(サンドレーキやサンドクリーナーなど)を組み合わせ、機材をけん引してゴミを回収するスタイルにたどり着きました。
Hondaの『技術で役に立つ』という信念のもと、人の手では拾うのが大変な小さなゴミを回収できるかたちを目指しました。
しかし、試作機によるテストは失敗の連続でした。
先輩方は全国の砂浜でトライ&エラーを重ね、2003年頃にようやく、砂の中から小さなゴミをすくい上げる現在の機材(ビーチクリーンセット)の原型が完成しました。
こうした活動の積み重ねが、現在のビーチクリーン活動の原点となりました。
公認化を契機に広がったHondaビーチクリーンの取り組みの輪
活動を続ける中で、地域から「また来てほしい」という声が増え、有志メンバーだけでは対応が難しくなっていきました。大きな転機となったのが2006年。これまでの活動が「Hondaビーチクリーン活動」として、Honda公認の社会貢献活動に認定されたのです。
最初は従業員やOBで“キャラバン隊”を組み、全国を回っていました。その後、製作所や部品メーカーの方々にも協力いただくようになり、現在では全国のHonda Carsが主体となって活動を支えてくれています。
活動に対する反響が大きく、開催回数も増えました。最近は学校授業の一環として参加いただくケースもあり、地域とのつながりも広がっています。活動が環境について考えるきっかけになればうれしいです。
20年にわたり続いてきたHondaビーチクリーン活動。その背景には、『技術で世の中の役に立ちたい』という想いと、それを支える多くの人々の熱意がありました。
「主役は人」技術で行動を支えるHondaらしい環境活動
20年にわたり、Hondaが一貫して大切にしているのは、技術はあくまで“人のサポート役”であるという考え方です。
私たちの活動は“人の力が主役”です。本来の目的は、ゴミを捨てない・見つけたら拾うという意識を育むこと。人の力を中心に、ATVやビーチクリーナーといったHondaの製品・技術を活用し、地域課題の解決につなげていくことが、この活動の考え方です。参加した子どもたちが、家に帰ってから自らゴミの分別をするようになるなど、行動の変化にもつながっています。“砂浜をきれいにする”体験を通じて、自然との向き合い方や環境への意識が少しずつ変わっていく。そのきっかけをつくることが、この活動の大きな役割だと思っています。
一方で、この活動を20年継続できた背景には、安全への徹底した取り組みがあります。
Hondaのエンジニアとして“安全”は最も大切にしていることです。事前研修や独自のライセンス制度など、安全な環境づくりを徹底しています。また、機材に興味を持った子どもから『こうすればもっと良くなる』とアイデアが出ることもあり、この体験が未来のエンジニアを目指すきっかけになればうれしいです。
Hondaは子どもたちの環境を守る意識をさらに育てようと、既存の大人用ビーチクリーナーに加え、子ども用ビーチクリーナーの独自開発にも取り組んでいます。TRX90でミニサンドレーキをけん引することで、これまで手拾いによるゴミ拾いにしか参加できなかった子どもたちもモビリティに乗る楽しさやワクワク感を味わいながら、ゴミを回収することができます。
ビーチクリーンの先へ。Hondaが描く“素足で歩ける砂浜”の未来
この先、Hondaが目指すのは、“企業がリードしてビーチクリーン活動をしなくてもいい世界”。誰もが安心して素足で歩ける砂浜をゴールに据えています。
ビーチクリーン活動を通じて環境意識が高まり、ゴミを見つけたら拾い、正しく分別する行動が広がっていけば、素足で歩ける砂浜につながっていくと考えています。参加した子どもたちが大人になり、また次の世代へと想いが受け継がれていく。その循環を生み出せることに、この活動の価値があります。
また、井上は開発の立場として、変化する環境への対応を見据えています。
マイクロプラスチックへの対応や、気候変動による環境の変化など、課題は年々変わっています。それに対して技術でどう貢献できるかを、これからも考え続けていきたいです。
Hondaビーチクリーン活動は、技術で人を支え、人が行動を生み、未来を考えるきっかけをつくること。そこに、この活動の本当の価値があります。“素足で歩ける砂浜を次世代へ”。20年続いてきたHondaの挑戦は、これからも人と技術の力で、未来へとつなげていきます。
当時同じATV開発を行っていた先輩方の『砂浜を走れるATVで何か役に立てないか』という想いから、ビーチクリーンのアイデアが生まれました。