経営 2026.04.10

Hondaらしさが詰まった「FUNなEV」を目指して。日常をBOOSTする「Super-ONE」開発秘話

Hondaらしさが詰まった「FUNなEV」を目指して。日常をBOOSTする「Super-ONE」開発秘話

 POINTこの記事でわかること

  • Super-ONEは、Hondaの小型EVとして「FUNなEV」を目指した。
  • 開発におけるこだわりは、BOOSTモードに代表される走行中のクルマの状態を“メイカイ(直感的)”に感じられる仕様。
  • イギリスで行われたイベントGoodwood Festival of Speedでの好意的な反応を受け、EVの面白さを世界に伝えるべく、グローバル展開も目指していく。

Hondaは、小型EV「Super-ONE」を日本で2026年5月に発売します。軽EVの開発で積み上げてきた経験と、磨いてきた実用性を土台に、あえて“FUN”=「走りの楽しさ」を掲げ、「運転する高揚感」をEVで実現するための挑戦ともいえます。本記事では、Super-ONEが生まれた経緯、グランドコンセプトの「e: Dash BOOSTER」に込めた価値、そしてHondaらしさへの試行錯誤について、開発責任者の堀田英智と、車体・パワートレインを担った赤峰宏平、渡邊伸一郎に話を聞きました。

堀田 英智

Super-ONE開発責任者(LPL) もっと見る 閉じる 堀田 英智

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赤峰 宏平

Super-ONE車体研究開発責任者 もっと見る 閉じる 赤峰 宏平

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渡邊 伸一郎

Super-ONEパワーユニット研究開発責任者 もっと見る 閉じる 渡邊 伸一郎

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気持ちが高揚する乗車体験で、日常をBOOSTするSuper-ONE

Hondaの小型EVが、軽商用モデルのN-VAN e:、軽乗用EVのN-ONE e:に続き、今回のモデルは軽自動車規格を超えた 「FUNなEV」となった理由を教えてください。また、ベースモデルのN-ONE e:とは開発がリンクしていたのでしょうか。

堀田
堀田

N-VAN e:は「地球にもやさしいはたらくクルマ」、N-ONE e:は「ホンダが考える手の届くEV」という日常で使っていただける軽EVがコンセプトにありました。この2つのモデルの開発を行ううちに、パワーユニットが持っている高いポテンシャルを解放すれば、ユニークで誰かにものすごく響くような、Hondaらしい商品がつくれるのではないか、と思うようになりました。

 

N-ONE e:は、クルマの素性がとても良く、走行性能が安定しています。そこでこれをベースにしたらもっと面白いクルマができるんじゃないかな? という話は、N-ONE e:の開発中に出ていました。

 

ところが、最高出力に自主規制があり、車体幅にも制限がある軽自動車枠のままでは、面白いクルマをつくりたくとも限界がある。そこで開発の早い段階で、軽自動車の枠に収まらない「自分たちが乗りたいと思えるワクワクするような楽しいクルマ」をつくろうと決めました。

2026年5月に発売予定の小型EV「Super-ONE」 2026年5月に発売予定の小型EV「Super-ONE」

「Super-ONE」という車名の由来について教えてください。

堀田
堀田

Hondaの軽自動車であるNシリーズには、ホンダイズムであるM・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想)思想というもともと持っているパッケージの良さがあります。N-ONE e:は、そのパッケージを最大限継承しながらEV化しました。

 

Super-ONEも、N-ONE e:の特徴やEVの特性を活かしつつ、唯一無二といえるHondaらしい“FUN”なEVを目指して開発しました。Super-ONEという車名には、N-ONEを超えていくという思いと、期待を超える唯一無二の存在という意味が込められています。

※マン・マキシマム/メカ・ミニマム思想。人間のためのスペースは最大に、機械のためのスペースは最小限にして、クルマのスペース効率を高めようとする、Hondaのクルマづくりの基本的な考え方

Super-ONE開発責任者の堀田英智 Super-ONE開発責任者の堀田英智

グランドコンセプト「e: Dash BOOSTER」が生まれた経緯や思いを載せたポイントを教えてください。

堀田
堀田

Super-ONEはスポーティな走りと走行性能を大切にするクルマということで、若いころに走りを楽しんできた親世代と、その子ども世代の双方に響く存在を目指しました。前者は子育ても一段落してそろそろ環境にもやさしいクルマに乗ろうという観点があり、EVのような新しい商品を好むイノベーター志向の方ですね。一方の後者は加速感やガジェット感、非日常感といった遊び感覚を求め、ゲームの世界から飛び出してリアルワールドでクルマを運転するような世界観を持つ世代です。

 

どちらの世代も、日常の中で得られる達成感や刺激を持ってほしいと考え、「ユカイ・ツウカイ・メイカイ(愉快・痛快・明快)」「気持ち高ぶる乗車体験で日常をBOOSTする」というキーワードを重ねながら、グランドコンセプトを「e: Dash BOOSTER」と設定しました。

 

普段は広い車内で使い勝手の良いEVとして使用できるSuper-ONEですが、「BOOSTモード」では出力を引き上げ、アクセル操作に対する反応をよりダイレクトに感じられるようにしています。あたかもガソリン車を操っているような仮想有段シフト制御、排気サウンドを演出するアクティブサウンドコントロールシステムによって“FUN”な走行を楽しめるようにしました。見るからに走りを予感させるワイド&ローな外観、スポーツシートといった気持ちが高揚する内外装も、日常を解放する=「日常をBOOSTする」アイテムです。

Super-ONEのハンドルと運転席からの視点

「クルマとの対話」にこだわったHondaらしいFUNなEV

開発には若手メンバーも携わったと聞いています。ベテラン世代には懐かしい「ブルドッグ」と呼ばれたシティ ターボIIの雰囲気もありますが、若手メンバーとはどのようにコンセプトや価値観を共有したのでしょうか。

堀田
堀田

開発陣には私たちのようなベテランから若手までいましたので、ディスカッションを重ねながら進めました。育ってきた時代が異なるため価値観に相違があり、時には意見がぶつかることもありました。

赤峰
赤峰

その例がエクステリアデザインです。当初は丸くしたほうがいい、押し出したほうがいい、など議論がありましたが、最終的には「メイカイ」というキーワードに沿って、見るからにわかりやすいオーバーフェンダーにして、しっかりと地に足がついたデザインに決まりました。

ロー&ワイドなスタンスを際立たせ、力強さを表現したエクステリアデザイン ロー&ワイドなスタンスを際立たせ、力強さを表現したエクステリアデザイン
赤峰
赤峰

若いデザイナーが最初に出してきたスケッチは、デジタル的でアイコニックな、思いもよらないアイデアに溢れたものでした。それを、ユーザーがクルマの性能を見て感じられる形にするために、一緒にレーシングカーを見に行って、速いクルマがなぜそのような形状になっているのかを学びながら、若手のセンスを生かしてブラッシュアップしていきました。

Super-ONE車体研究開発責任者の赤峰宏平 Super-ONE車体研究開発責任者の赤峰宏平
渡邊
渡邊

走りの面でも、速いクルマに対してお客様が求める「普遍的な法則」があると思うのですが、若手のメンバーにも「こんなフィーリングが好まれるよ」と、ベテランの知見を共有して、共に開発を進めました。

Super-ONEパワーユニット研究開発責任者の渡邊伸一郎 Super-ONEパワーユニット研究開発責任者の渡邊伸一郎

「e: Dash BOOSTER」の要である「BOOSTモード」について、こだわりや開発秘話などを教えてください。

赤峰
赤峰

BOOSTモードでは、パワーアップおよび走行中にクルマから感じられるフィードバックの最大化を行っています。EVの運転はあまり面白くない、と感じている人が多いのも事実ですが、その理由は、走行中のクルマの状態がわからず、クルマと対話しながら走れないことにあります。しかしSuper-ONEのBOOSTモードでは、走行中のクルマの状態をドライバーが直感的に感じることができます。そこにはとてもこだわりました。

 

軽量であることも大きなポイントです。車重は、このクラスとしては極めて軽量な設計ですし、バッテリーが車体センターの低い位置にあるため重心も低く、車体も拡幅しているので素晴らしいハンドリングを楽しむことができます。

 

まさにベテランドライバーからするとエンジン車のような運転感覚が楽しめて、子ども世代からするとゲーム感覚的な面白さが両方味わえるということですね。非日常感を盛り上げようといった議論はどのように行われたのでしょうか。

堀田
堀田

もともとは出力を開放することを目標に進めていましたが、次第にこんな仕様が入れられそう、あんなこともできそうというアイデアがどんどん出てきまして。だったらいろいろ取り込んで面白いものをつくろうということになりました。

 

開発メンバーもさまざまなジャンルのプロばかりなので、ガソリン車らしいギヤ段制御や変速ショックの再現などを開発していきました。それは、正直にいえば別にやらなくてよいことではあるのですが(笑)、思いついて実装するのが実にHondaらしいところだと思います。皆ノリノリで一生懸命につくり込んでくれました。

Super-ONEがグローバルにもたらす新しい価値

軽自動車は海外で販売していませんが、Super-ONEは海外にも目を向けていると聞いています。開発当初からグローバル展開の予定はあったのでしょうか。

堀田
堀田

軽自動車規格を超えた車体ということが決まり、海外で販売する可能性については初期の頃から議論していました。まずはアジア圏、続いてヨーロッパでも、という話が進んでいたところ、イギリスの現地法人であるHonda Motor Europe Ltd.から「Super-ONEを売りたい」という声がかかり、左側通行・右ハンドルの市場でグローバル展開することになりました。

ヨーロッパでは、ハンドリングや足回りに高い性能や評価が求められると思いますが、現地での走り込みなどは行ったのでしょうか。

赤峰
赤峰

軽自動車ベースのクルマを海外で販売するのは、Hondaにとってチャレンジともいえましたので、現地にクルマを送り、何度も走り込みを行っています。イギリスのメンバーもたいへん興味を持ってくれました。

 

イギリス人はSuper-ONEのような小粋なクルマをとても好むので、2025年7月にイギリスで行われたイベント「Goodwood Festival of Speed」に「スーパーEVコンセプト」として展示したときも、多くの来場者が足を止め、写真を撮る姿が見られました。

小さくエキセントリックなクルマは、イギリスでも好反応で迎えられた 小さくエキセントリックなクルマは、イギリスでも好反応で迎えられた
堀田
堀田

イベントには私たちも説明員として参加しました。周囲は歴史あるレーシングカーやスポーツカーばかりの中、小さいエキセントリックなクルマが置いてあるので、皆さん「何だろう、これ?」と笑顔で写真を撮っていきました。このサイズ感のスポーティなハッチバック車は世界的にも少なくなっているので、たいへん好意的に受け止められました。

FUNなクルマを突き詰めたSuper-ONEなら、海外市場を含め、今まであまりEVに興味がなかった層にもリーチする可能性があるのではないでしょうか?

赤峰
赤峰

長年クルマに乗ってきた世代なら、実はEVは面白い乗り物なのだ、ということに気づくはずなので、ぜひEVに乗っていただきたいと考えています。その感覚が少しずつ広がっていけば、EVの良さに気づく人は増えていくと思います。Super-ONEがそのきっかけになれば、少しでも世界を変えられるのかなと。

渡邊
渡邊

優れた特性を持つEVのパワーユニットに対して、Hondaが長年にわたり培った膨大なノウハウでFUNな味付けを加えたことで、軽自動車や従来のEVのイメージを超える運動性能を目指しました。ガソリン車の感覚をよく知っている自分から見ても、Super-ONEの運転はかなり楽しく感じられます。

堀田
堀田

このクルマはEVですよ、と推すのではなく、これは楽しいクルマですよ、それがたまたまEVだったのです、というイメージで捉えていただければ嬉しいですね。2025年のジャパンモビリティショーでも、EVですよとは言わず、FUNなクルマですよ、というところをアピールしました。Super-ONEのような面白い商品をどんどんつくっていけば、「EVの世界って面白い」と感じるお客様が増えていくと思っています。

Super-ONEと開発関係者の3人

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