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【5分で読み解く】Honda 0シリーズが切り開く移動の新たな可能性

「移動体」をゼロから再定義した「Honda 0(ゼロ)シリーズ」プロトタイプを公開
2025年1月7日(日本時間1月8日)、米国ネバダ州ラスベガス市で世界最大規模のテクノロジーの祭典「CES (Consumer Electronics Show) 2025」が開幕し、全世界160の国と地域から約14万人以上が参加し、「AI」「半導体」「ソフトウェアデファインドビークル(SDV)」などの最先端テクノロジーが展示されました。
その中でHondaは、Honda 0(ゼロ)シリーズ「Honda 0 SALOON(サルーン)」、「Honda 0 SUV(エスユーブイ)」の2車種のプロトタイプ、並びに同シリーズに搭載する独自のビークルOS「ASIMO OS(アシモ オーエス)」を世界初公開しました。

「Honda 0シリーズ」とは、「原点に⽴ち返り、移動体を0から考え直す。」というコンセプトのもとHondaが開発を進めるEV(電気自動車)のこと。「厚くて重い」という従来のEVのイメージを覆し、「デザインの可能性を拡張し高い空力性能を実現する(Thin)」「EVの定説を覆す軽快な走りと電費性能を実現する(Light)」「知能化技術によりクルマそのものが賢くなる(Wise)」という開発アプローチを用いています。
昨年10月のHonda 0 Tech Meeting 2024にて「Thin」、「Light」を具現化する生産技術を紹介したHondaは、CES 2025にて「Wise」にフォーカスを当てたプレゼンテーションを実施。Wiseは知能化されたクルマがユーザーのことを考え尽くし、ユーザーに「超個人最適化(ultra-personal optimization)」された体験価値を指しています。
本記事ではそのWiseの体験価値がどのようなものかを解説していきます。
●Honda 0 SALOON

Honda 0 SALOONは量産を前提としたプロトタイプモデルです。昨年のCES 2024で世界初公開し、その低全高かつスポーティーなスタイルと広い室内空間を両立させたことで話題になったコンセプトモデル「SALOON」をさらに進化させています。
●Honda 0 SUV

Honda 0 SUVは、Honda 0シリーズの第1弾として、2026年前半より北米市場を皮切りに、日本や欧州などグローバル各地域で発売する中型SUVのプロトタイプモデルです。昨年のCES 2024で公開したコンセプトモデル「SPACE-HUB(スペース ハブ)」のコンセプトを踏襲し自由度の高い広々とした居住空間を実現しました。
Hondaの「世界初」と「最新」を詰め込んだ、知能化されたクルマ
Honda 0シリーズの開発アプローチ「Thin, Light, and Wise.(薄い、軽い、賢い)」の中で、今回のプレスカンファレンスで登壇者の井上勝史(執行役専務、電動事業開発本部長)が強調したのは「Wise」。
Honda 本田技研工業 公式Instagramより
1月7日に開催されたプレスカンファレンスでは登壇者の井上がHonda 0 SALOONに乗って登場。
SDVとして、車両全体を制御するために欠かせない基本ソフトウェアとしての役割を担うビークルOSの名前は「ASIMO OS」。ASIMOの名前を採用した理由について井上はこう語ります。
ソフトウェアの提供価値はユーザーそれぞれにパーソナライズしていくことにあります。その人中心という考え方と人に寄り添う考え方で開発を行っていたASIMOとはコンセプトでの共通点が多くありました。ASIMOは世界中の皆様から愛され、ロボティクスの象徴的存在となりました。
ASIMOは約20年前にCESで初登場しました。それ以来培ってきた外界認識技術や、人の意図を汲み取って行動する自立行動制御技術といったロボティクス技術を進化させ、先進知能化技術と融合させていきます。

Honda 0シリーズでは、3つのドメインElectronic Control Unit(ECU:電子制御ユニット)に機能を集約するドメインセントラル型E&Eアーキテクチャーを採用します。さらに次世代モデルからは、ドメイン毎に個人認証、感情・意図推定、シーン理解など様々な領域を束ねるセントラル型に進化します。ASIMO OSとAIが連携することで、ドメイン毎にソフトウェア管理を行っていたものが今後はクロスドメイン(複数領域)でソフトウェアが個人最適化された価値を提案できるようになります。
具体的には、車内外のカメラ・センサーなどから得たさまざまなデータを活用することで、乗員の感情や意図を汲み取り、車内演出、音楽の提案に加え、周辺スポットの情報提供などを行います。
Honda 0シリーズは、スマートフォンのように購入後もさまざまな機能が進化し、使えば使うほどパーソナライズされていくでしょう。
ASIMOは世界中の皆様から愛され、ロボティクスの象徴的存在となりました。Honda 0シリーズも同様に、世界中の皆様に驚きと感動を与え、次世代EVの象徴となることを目指します。

周囲の状況を理解し、不測の事態にも対応できるAD/ADAS
Hondaは、2021年に一定条件下でのアイズオフ(進行方向から目を離すこと)を可能とするAD(自動運転)レベル3を世界で初めて実用化しました。
運転自動化レベル | 概要 | 運転操作の主体 |
---|---|---|
運転者が一部またはすべての運転操作を実行 | ||
レベル0 | 運転者がすべての運転操作を実行 | 運転者 |
レベル1 | システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作のいずれかを条件下で部分的に実行 | 運転者 |
レベル2 | システムがアクセル・ブレーキ操作またはハンドル操作の両方を条件下で部分的に実行 | 運転者 |
自動運転システムが(作動時は)すべての運転操作を実行 | ||
レベル3 | システムがすべての運転操作を一定の条件下で実行 作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に運転者が適切に対応 |
システム (作動継続が困難な場合は運転者) |
レベル4 | システムがすべての運転操作及び作動継続が困難な場合への対応を一定の条件下で実行 | システム |
レベル5 | システムがすべての運転操作及び作動継続が困難な場合への対応を条件なしで実行 | システム |
出典:政府広報オンライン
※自動運転レベル3:一定の条件下ですべての運転操作をシステムが実行できる自動運転技術のこと。2021年、Hondaは運転自動化レベル3技術を搭載した「LEGEND(レジェンド)」を発売し、世界ではじめて実用化に成功した。
Honda 0シリーズは、これまで蓄積した基盤技術やノウハウをベースに、AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)の提供価値をAI画像認識技術を手掛けるHelm.ai社の教師なし学習(機械に正解を与えずに学習させ、自力でデータの規則性や特徴を導き出す学習方法)でさらに高めています。
例をあげて紹介します。人は道路上の白線やロードマークだけを見て運転しているわけではなく、周囲の建物や街路樹、さらには、空のひらけ方なども見ながら道の形を認識しています。
しかしながら、道以外の周りのものは無数のパターンがあるため、すべてを学習することは不可能です。信頼性の高い自動運転を実現するためには、いかなる走行環境においてもクルマが周囲の状況を認識・理解し、想定外の事象が発生しても、人のように適切に対処できなければなりません。これを実現するため、Honda 0シリーズでは、例えば、無数に種類があり季節により姿が変わるような木も、一律に「街路樹」と抽象的に認識することで、自動運転で必要な無数の外界情報を効率良く学習します。これにより、走行中の外界情報を人のように認識し推定することで、初めて走る道でも、白線が見えなくても、ADが可能となるのです。

POINTHonda 0シリーズの開発アプローチの1つ「Wise」の特徴は?
- 交通事情が異なる場所で周囲の状況をリアルタイムに認識・理解して運転できる
- 購入後もさまざまな機能が進化し、Honda 0シリーズはスマートフォンのように使えば使うほどパーソナライズされる
Hondaは、これらのHonda 0シリーズが提供する価値を「超・個人最適化した走行体験」と位置づけ、まずは2026年前半に「Honda 0 SUV」を、そして2026年中には「Honda 0 SALOON」を北米、そして日本・欧州などグローバルで順次販売をスタートしていきます。
来年には、この2台を世界でお届けできるようになります。
Honda 0シリーズでは、今回ご紹介した”Wise”の力で、皆さんがワクワクするような、もっともっと移動したくなるような、エキサイティングな新価値を創出していきたいと思います。ご期待ください。

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Index
自動車メーカー各社がいわゆる”SDV”としての価値を競う今、我々が 0シリーズの価値を”Smart“ではなく、”Wise”と謳う意図。それは「Intelligent Vehicle Technology(知能化)」という点にあります。
我々のものづくりの基本思想である「人間中心」はHonda 0シリーズにおいても不変です。移動のあらゆるシーンでクルマがユーザーのことを考え尽くし、「超個人最適化」された価値を提供します。