Hondaが総合モビリティカンパニーとして、幅広いモビリティやサービスをお客様に提供していくための大きな柱の一つとなるのがDX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組みです。今回は、HondaのDXの取り組みについて紹介していきます。
自動車業界は100年に一度の大変革期であり、Hondaは第二の創業期であると位置づけています。Hondaは今年5月に発表した「2024 ビジネスアップデート」で、2050年を見据えた総合モビリティカンパニーとして存在を期待される企業であり続けるための取り組みを紹介しました。
その一つが、Hondaが提供する「二輪」「四輪」「パワープロダクツ」「船外機」「航空機」などの多岐にわたる製品とデジタル技術を組み合わせることで新たなサービスや価値提供を行うビジネスモデルの変革です。
この変革に向けては、商品・調達・生産をはじめとする商品の企画からアフターサービスにいたるまでの各オペレーションにデジタル技術とデータを活用することで事業効率を上げ、より競争力のある「もの」「こと」づくりができる体質へと進化する必要があります。
そのためにデジタル・ソフトウェアスキルの獲得など、ITを活用した業務改革もやりきらなければいけません。Hondaでは従業員全員が自分ごととしてデジタルとデータの価値を深く理解し、日常業務で活用することが不可欠です。
Hondaはこれらの改革を実現するために、DXビジョンを策定し、DXへの取り組みを本格化しています。
●どうやるのか?:HondaのDXビジョンは?
執行職 デジタル統括部長 もっと見る 閉じる 河合泰郎
グローバル製造業の情報戦略実行部門一筋にキャリアを積み、現在はHondaのデジタル戦略全体を管轄。日々の事業・業務基盤となるITオペレーションの持続的最適化と将来に向けたコーポレートDXを推進して企業価値向上を図る部門の統括部長を務める。
閉じるHondaは「デジタル技術を活用した業務プロセスの改革を通じて、ビジネスモデル変革のスピードと事業効率を高め、競争優位性を確立する」ことをDXビジョンとして掲げ、様々な取り組みを進めています。
DX推進の動きが高まったのは、2020年頃のこと。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー(循環経済)への意識の高まりを受けて拡大してきた電動化事業に対して、既存業務の効率化による体質改革が重要と捉えました。Hondaが「2030年ビジョン」で掲げる「すべての人に、『生活の可能性が拡がる喜び』を提供する」というステートメント実現に向けてもデータの活用が欠かせません。
事業部やサービスごとのシステム化・効率化だけでは対応できない、全体が連鎖した価値創出のスピードが求められる現代にあって「データを集める」「データを作る」「データを使う」を縦横無尽に組み合わせる仕組みを整えます。
※電動化事業の取り組みについては以下をチェック→
(https://global.honda/jp/stories/068.html)
デジタルプラットフォームの構築と既存事業の効率的実行を実現
●何をやるのか?:HondaのDX戦略①
DXビジョンにあるビジネスモデル変革のスピードアップを実現するため、まずは事業オペレーションを支える基幹システムの刷新と、データの価値を最大化するデジタルプラットフォームの構築に取り組んでいきます。
●何をやるのか?:HondaのDX戦略②
既存業務の効率化を実現するため、従業員の日々のルーティンワークの自動化にも力を入れています。ペーパーレスや自動化など、目的に応じた24のツールを用意。文書作成やナレッジ活用などの分野で生成AIもいち早く取り入れ、社内で活用しています。
また、2024年3月には全社生成AI基盤の構築を完了。開発の領域から順次過去の社内文書データの蓄積を進め、既存の知識やノウハウが失われない環境を整備しました。
開発・生産・販売など社内外の様々な領域から幅広くデータを集めて、品質領域をはじめとした事業活動にも生かしています。
●何をやるのか?:HondaのDX戦略③
DX推進のためには、従業員一人ひとりの生産性の向上・効率化とともに、Hondaの力をいかに集結させてより大きなことをしていくかという組織面での体制構築が必要となってきます。
前者においては、全従業員向けのIT・デジタルリテラシー教育や業務の効率化を牽引する部門DX推進リーダー(トップガン)の育成、従業員参加型の社内オンラインイベント「Honda DX Expo」などを通じてDX推進のための風土醸成・体制構築を図っています。
「Hondaの強みは従業員一人ひとりの志が強いこと」と語る河合。
AIの使い方やプログラミングなどに関して理解を深めて技術を高め合うオンラインコミュニティにおいては、トップガンやAIエキスパートなど、デジタル活用を推進する人材が主体となって日々さまざまな講座が開かれ、多くの従業員が参加しています。
トップダウンで推進していくだけでなく、従業員一人ひとりの『やりたいと思う気持ち』をいかに共鳴させていくかという点は重要だと考えています。その意味で、コミュニティの存在は非常にうまく機能していると感じますね。
一方で、組織全体を俯瞰した体制構築も急務です。全体を俯瞰した上で、より効率的に、より標準・共通になる基盤を作り、グローバルで一気に展開していきます。
具体的には電動化事業を加速させるための取り組みであり、EVの包括的バリューチェーンの構築などがこれに当たりますが、これらにどのように取り組み、構築していくのかは次なる課題となっています。
POINT
- 全社生成AI基盤の構築、生成AIツールの活用を推進
- リーダーの育成、コミュニティ運営といったDX推進体制の構築
Honda第二の創業期をDXで加速させる
今までできなかったことをできるようにする。そのための仕組みはどのようなものなのか、デジタルの力で加速させ、形にしていく。新しく何かができるようになることは誰でも面白いと感じますよね。大事なのはそこだと思ってるんですよ。
第二の創業期を乗り越えていくDX推進の人材も育ち、目標に向かっての意識が統一され、経営層から現場のリーダーまで足並みはそろいつつあります。どこに向かうかは見えてきているという今、次はそのためのマイルストーンの解像度を上げていく段階に入っています。
目指すところが明確になり、第二の創業期を大きく加速させるためのやり方は見えてきました。今後はこれをさらに実行可能な領域に落とし込み、やり切るという段階。Hondaとしても今までにやったことがないやり方・領域に挑戦しているところであり、乗り越えるためにはこれからも挑戦は続いていくでしょう。
DXは事業成長のための手法であり、電動化事業を加速させるためにみんなで力を合わせてやっているところですし、ここが本当に楽しいところだと思っています。これからどうなっていくのか、どんな世界を実現していけるのか、今とてもわくわくしています。
HondaのDXへの挑戦はまだまだ続きます。
<参考資料>
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実はHondaはグローバルで見てもトップレベルの生成AIツールを提供しています。幅広く活用できるツールを提供することによって、こんなに楽しいことができるんだ、こんな面白いやり方もあるんだ、という驚きと喜びを従業員一人ひとりの仕事の中に反映していきたいと考えています。