POINTこの記事でわかること
- クルマづくりは今、ハードウェア先行からソフトウェア先行に変わりつつある
- ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)により、人、社会、自動車開発に大きな変化
- モビリティのSDV開発にはAI、組み込み/制御、クラウドなど様々なソフトウェア人材の活躍が欠かせない
自動車3社がソフトウェア・デファインドの世界を考える
変革期を迎える自動車業界において注目を集めるソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)。SDVとは「ソフトウェアによって定義されるクルマ」を意味し、クルマを制御するソフトウェアの領域が拡大したことにより、クルマづくりがハードウェア先行からソフトウェア先行に変わりつつあるというクルマづくりの新常識です。
クルマを制御するソフトウェアをアップデートし続けることで、販売後も機能を増やしたり性能を高めたりすることができる新しいクルマづくりが、いま注目されています。
これによってクルマづくり、そして人々の生活はどのように変化するのでしょうか。
2024年2月、トヨタ自動車、日産自動車、Hondaの3社が一堂に会し、「Japan Mobility Tech Day」と題して「これからのモビリティの世界観と実現」に向けたソフトウェア戦略について語り合うオンラインイベントを開催。各社の描くモビリティの世界観と展望、ソフトウェア技術戦略を紹介しました。
本記事ではHondaの考えるSDVが人、社会、技術進化にもたらすインパクトや、モビリティ業界が必要とするソフトウェア人材について紹介します。
本田技研工業株式会社
電動事業開発本部 BEV開発センター
ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部 統括部長
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四竈真人(しかま・まひと)
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SDVが人の生活と社会にもたらすインパクト
Hondaは自動車、バイク、パワープロダクツ、小型ジェット機など、さまざまなパワーユニット製品を世に送り出しており、その販売台数は年間2,800万台を超えます。
ハードウェアであるこれらのパワーユニット製品は、設計・構築後に変更を加えることが難しい一方、ソフトウェアの世界においては、例えばOTAアップデート(Over The Air;スマホやクルマなどのデバイスのソフトウェアをデータ通信で更新、変更すること)により、状況に応じた変化を与えることが可能になります。つまり「その人・その時」の状況に応じた最適な状態を構築することができるようになります。
例えば、購入時には手動運転しかできなかった車にOTAで自動運転機能が追加できれば、運転に要していた時間から開放され、その時間を使ってさまざまな楽しみ方ができるようになります。
ソフトウェアで連携させることにより、さまざまなモビリティをつないでシナジーを生かせる好機が到来したことを受け、「モビリティ同士がぶつからない世界」、「移動の効率化」など、夢を膨らませながらHondaは開発に取り組んでいます。
POINTSDVで「人」の生活はどう変わる?
- その人・その時に応じて、「楽しみ」が最大化
- 自動運転の実現により、これまでの運転時間が自由時間へ
POINTSDVで「社会」はどう変わる?
- 交通量管理により渋滞の軽減を行うなど、交通問題を解決
- 自動運転、エンタメ、シェアリング等、新しいビジネスモデルの創出
自動車開発における、SDVによる4つのインパクト
自動車開発においては、SDVにより4つのインパクトと変化があると考えます。1つ目は、顧客と企業の関係性。OTAによるソフトウェアのアップデートがあるため、販売後も長きにわたり関係性が続くようになります。
2つ目は製品・サービスの変化です。企業起点でのプロダクトの提供から顧客起点に変わることが予想されます。
3つ目は開発スコープです。ローンチに向けた「終わりのある開発」からソフトウェアのアップデートによる「終わりの無い開発」へと変化します。それに伴う開発の仕組みやプロセス、組織体制の見直しも必要です。
そして4つ目はハードウェアをソフトウェアに合わせる開発への変化です。従来であればコストを抑えてハードウェアを開発することが求められ、そこが競争力の原点でもありました。しかし、SDVの開発では、発売後のソフトウェアのアップデートを踏まえ、柔軟性を持ってハードウェアを設計しておく必要があります。
POINTSDVで「自動車開発」はどう変わる?
- 「終わりのある開発」からOTAで更新し続ける「終わりの無い開発」へとスコープが変化
- ソフトウェアの開発を前提としたハードウェアの定義が必要
Hondaの最初のプロダクトは、創業者の本田宗一郎が奥さまに少しでも楽をしてもらいたいと思って自転車にエンジンをつけたものです。このような世のため人のための純粋な気持ちこそが会社の出発点であり、この気持ちこそ、我々が創業以来変わらずに持ち続けている思いです。
PICK UP 技術者トークセッションより一問一答
自動車におけるソフトウェア開発の面白さは?
求めるエンジニア像のイメージは?
AIやクラウドに特化している、組み込み設計スキルをもっているなど強みをもっている方にはぜひチャレンジ頂きたいと思います。
モビリティ業界に関心をもつITエンジニアに伝えたいことは?
いろいろなタイプのソフトウェアにまつわる仕事があります。組み込みからクラウドまで多種多様なエンジニアのコラボレーションが価値を生むと考えているので、モビリティ業界で経験の幅を広げて頂きたいです。
*本記事の情報は2024年2月28日に開催された「Japan Mobility Tech Day」イベント取材当時のものです。
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