製品 2024.03.29

時代が加速させたグラマラスなデザイン。革新の先駆けとなるAcura初のEV「ZDX」はどうやって生まれた?

時代が加速させたグラマラスなデザイン。革新の先駆けとなるAcura初のEV「ZDX」はどうやって生まれた?

Hondaは2040年までにEV・FCEV販売比率をグローバルで100%とする目標を掲げ、各地域の市場特性にあわせたEVの投入を進めています。「ZDX(ズィーディーエックス)」は、Acuraブランド初のEVとして、同じく2024年春に発売を予定しているHondaブランドの「PROLOGUE(プロローグ)」とともに、カーボンニュートラル実現に向けた北米の電動化戦略を力強く加速させる存在であり、ゼネラルモーターズ(GM)が開発したEVプラットフォームとバッテリーを搭載した、GMとの共同開発モデルです。同車はどのように生まれたのか? そこから見えてくるHondaのEV展開は? 開発に携わった3人のエンジニアに聞きました。

John Hwang(ジョン・ウォン)

ZDX 開発責任者 もっと見る 閉じる John Hwang(ジョン・ウォン)

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伊神肇(いがみ はじめ)

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Joe Riggsby(ジョー・リグスビー)

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Hondaが北米で展開するAcuraブランド

1986年に立ち上げられたAcuraブランドは、高級感と性能のバランスを重視し、グラマラス(魅力的)なフォルムとスポーティーな走りが特徴。ブランドのコアとなる価値としては 「PCP(Precision Crafted Performance)」を掲げています。

ブランドのデザイン全体を高品質に統一する「Precision(精密さ)」。材質やしつらえにも強くこだわる「Crafted(高度な技術)」。Hondaらしいスポーティーな走り心地を表現する「Performance(性能)」。これらがAcuraブランドの哲学と言えます。またAcuraでは、Hondaブランドの「TYPE R」のように、上位グレードとして走りを突き詰めた「TYPE S」をラインアップ。スポーツ性能に加え、快適性や高級感を高めています。

開発責任者を務めたジョン・ウォンは、ZDXを「PCPを体現しつつ、よりEV時代に即するかたちで強化したもの」だと表します。

ZDX 開発責任者のジョン・ウォン ZDX 開発責任者のジョン・ウォン

EVだからこそ際立ったAcuraのグラマラスなボディ

ZDXの開発プロジェクトは、PROLOGUEと同時に2020年初頭からスタートしました。開発拠点が日本と米国内に点在しながら、コロナ禍ということもあって最初の2年は完全にリモートでの進行。車体性能責任者を務めた伊神肇は、当時の苦労を次のように振り返ります。

ZDX の車体性能責任者である伊神肇 ZDX の車体性能責任者である伊神肇
伊神
伊神

ZDXとPROLOGUEの開発以前は、新たなモデルを開発する際には、競合メーカーのクルマを検証してベンチマークの設定をしていました。しかし、当時はコロナ禍で海外出張によるGM側の担当者との合同検証ができず、ベンチマーク設定は仮説に頼ることになりました。自分たちの感性を信じて進めていったのは苦労がありましたが、チャレンジでもありワクワクしました。

車体設計責任者を務めたジョー・リグスビーも、日米拠点間で時差があったことを「一緒に仕事をできる時間が限られていたので、いかに効率的にプロジェクトを進めるかは非常に苦労したポイント」と話します。

AcuraブランドのEV第1号が、SUVスタイルのZDX。今後の電動化時代におけるAcuraデザインの方向性を示す存在 AcuraブランドのEV第1号が、SUVスタイルのZDX。今後の電動化時代におけるAcuraデザインの方向性を示す存在

そんな環境下で生まれたZDXで大きく目を引くのが、これまで展開してきたAcuraシリーズで最大サイズだというフロントボンネットです。

この部分は、開け閉めの機能性や正面衝突してしまったときのドライバー保護能力、さらに衝撃が加わったときにへこまないような頑丈さなど、非常に多くの要件が存在。そしてそれらは背反するような非常に複雑なものです。そうした条件を満たしつつ、Acuraブランドらしいグラマラスなデザインの実現には非常に苦労したと、伊神は振り返ります。

伊神
伊神

Acuraブランドが表現するグラマラスなクルマというのは、ボンネット部分の長さがクールさにつながります。一方で性能周りの責任者として、強度、剛性、衝突性能、開閉機能といった両立させなければならないものが多く、それらが一つでもNGになると開発は終わりません。擦り合わせやせめぎ合いをすることで実現しました。

ZDXの魅力的なスタイリングは、3人が胸を張る部分です。電動化によって吸気・排気系が不要になり、ガソリン車だとエンジンルームにあたる部分に設計の自由度が生まれ、よりグラマラスなデザインを目指せるようになりました。

EVの強みを活かしたスポーティーな走り

デザイン以外に目を移すと、ウォンは「EVのメリットを活かしながら、スポーティーさを強調」している点を特徴に挙げ、モーター駆動の利点である走り出しの加速の良さや、高いブレーキング性能などをふんだんに活用していると胸を張ります。特に、EVにおける操る喜びを追求したTYPE Sは最高出力約500馬力を生み出す高出力モーターを搭載するなど、AcuraのSUV史上最も速くパワフルな走行性能を提供。

また、GMのプラットフォームを使用したことでアンダーフロアー(車両床下)の空力性能が向上したことも今回の開発の好材料に。さらにキャビン周りのスタイリングを最適化し、空力性能の高い仕上がりを実現しています。

「Acuraらしさ」という点では、3人ともがハンドリング性能を挙げました。Acuraブランドに求められる「洗練されつつ機敏な性能」を実現すべく、メンバーが一丸となって取り組みました。他にも、らしさを強調するために取り組んだのがサスペンションやパワーステアリングのチューニング、さらに加速サウンドの作り込み。これらは、ドライビングフィールを決める大切な要素であり、Acuraとしての味付けに満足するまでGMとともに開発を実施しました。Acuraブラントの譲れないものとしてエンジニアたちが掲げた多くは、やはり「走り」の部分でした。

EVで追求する「操る喜び」

GMとの共同開発で並行して開発されたPROLOGUE(左)とZDX(右)。ともに2024年春発売予定 GMとの共同開発で並行して開発されたPROLOGUE(左)とZDX(右)。ともに2024年春発売予定

EVシフトへの関心が高まる北米に、いよいよAcuraブランド初のEVとして登場するZDX。PROLOGUEとともに、Hondaの新たな時代を先導する役割が期待されています。3人は今後のHondaのEV展開をどう見据えているのか聞きました。

リグスビー
リグスビー

今回のZDXでは、まずAcuraブランドのコアとなる価値であるPCPを体現したようなスタイリングとなることを大切にしました。今後も、これまでAcuraやHondaに期待されていた要素をしっかりとEVというスタイルに落とし込み、「らしさ」を失わないことが重要だと考えています。

ZDX の車体設計責任者であるジョー・リグスビー ZDX の車体設計責任者であるジョー・リグスビー
伊神
伊神

リグスビーが話す通り、統一性をいかに出していけるかがポイントですよね。例えばPROLOGUEではHondaらしい、ZDXではAcuraらしいスポーティーさを表現するため、エンジンの回転数が上がっていくようなサウンドを再現する仕組みを用いて、モーターの加速サウンドを作り込んでいます。こうしたこだわりを、今後もしっかりとEVというフィールドでも届けていきたいと思います。

上質な素材を採用するなど、インテリアにもPCPのコンセプトが息づく 上質な素材を採用するなど、インテリアにもPCPのコンセプトが息づく
ウォン
ウォン

私が今乗っているのはハイブリッド車なのですが、日々運転する中で、騒音や振動の少なさなどEVのメリットを実感しています。そしてPROLOGUEやZDXの開発を通じて、EVならHondaが大切にするデザイン性や操る喜びを追求できると確信しました。まずは今回の2車種で、たくさんの人のライフスタイルが変わっていけばうれしいです。

※今回登場したのは北米専売モデルのみ ※今回登場したのは北米専売モデルのみ


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