大学時代からエネルギー課題に着目し、水素と酸素の化学反応でエネルギーを生み出す「燃料電池」を研究してきた望月。Honda入社後は、水素燃料電池「FCスタック」の研究・開発を行なっています。「地球環境を改善したい」という幼少期からの夢を、Hondaの製品を通じてどのように実現していくのか。燃料電池にかける想いやHondaで働くやりがい、今後の展望についても、話を聞きました。
本田技術研究所先進パワーユニット・エネルギー研究所
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望月 崇史(もちづき たかし)
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Honda製品を通じて叶える、地球環境改善の夢
まず、望月さんがHondaに入社したきっかけを教えてください。
入社されたときはどのような夢を持っていましたか?
小学生の頃から環境問題に興味があり、地球環境を改善したいという想いがありました。地球温暖化防止にはエネルギー課題の解決が重要だと強く認識していたので、大学では、水素と酸素の化学反応でエネルギーを生み出す「燃料電池」に興味を持ち、研究を行なっていました。そうした研究経験を活かし、Hondaの製品を通じて環境負荷軽減に貢献していくことが、入社時から現在までずっと変わらない夢です。
水素燃料電池「FCスタック」を研究・開発されているとのことでしたが、所属している「先進パワーユニット・エネルギー研究所」にはどのようなミッションがあるのでしょうか?
まず、Hondaが掲げている「2050年にカーボンニュートラルを実現する」という目標を達成するためには、電気自動車だけではなく燃料電池自動車も普及させていく必要があります。
しかしながら、ただ目標を達成するだけでなく、新しい技術を製品として成り立たせることも、Hondaが今後生き残っていくためには重要です。商品として販売するにあたっては、コストを抑える必要もあります。そのため、プロジェクトを進める際は、「開発による進化」と「コスト抑制」の両立を意識しています。また、これまで生産してきたモビリティだけではなく、定置用蓄電池などの燃料電池を活用するアプリケーションを含め、プロダクトをさらに生み出していくことでお客様の満足度を高めていくことも、重要なミッションだと考えています。
「新しい技術」だけでは終わらせない
望月さんから見て、Hondaの魅力はどういったところにあると思いますか?
やりたいことを自由にやらせてもらえるところが一番の魅力だと思います。モチベーションが高ければ若手でも活躍できますし、上下関係を問わずフランクに話せる環境はHondaならではの風土です。また、専門分野に造詣が深い個性的な社員が多く、日々刺激を受けています。社員一人ひとりの個性や意見を受け止めて、一つの製品に集約していくところもまた、Hondaの特徴でもあり、魅力ですね。
社員の個性こそがHondaのパワーということですね。仕事をする上で、どういったときにやりがいを感じますか?
研究中に新しい結果が出てきたときは、それが良い結果でも悪い結果でも心躍ってしまいますね(笑)。研究やテストを重ねていると、やはり予期せぬ結果も出てくるんです。プロジェクトとしてはあまり良くない結果でも、技術的には面白いこともありますし、失敗を踏まえてメンバー間で議論する時間は、いち技術者として非常に有意義で楽しいですね。
では、反対に研究や開発を進める上で課題や壁はありますか?
まず、市場ニーズに合致した製品をつくり上げることですね。お客様に選んでいただくには、製品の性能だけでなく使い勝手や法規対応など幅広い要求に応えていく必要があります。Hondaとしてどのような燃料電池をつくっていくのかを決めていくために、海外の駐在メンバーと連携しながら情報収集を進めています。
また、現在開発している燃料電池を、社会で広く使ってもらえるのかという不安もあります。水素インフラ会社の方と話をしていても、「ニーズがなければインフラ投資に踏み込めない」という意見もよく出るんです。そのため、燃料電池の社会実装を成し遂げるには、水素インフラの整備と燃料電池プロダクトの開発を同時並行で行う必要性も感じています。そのためには、業界全体で連携していなかければなりません。私たちも水素製造、貯蔵、供給の最新技術の動向をしっかり意識しつつ、「Hondaとして何ができるのか」を考えているところです。
燃料電池分野で世界をリードする
Hondaでの研究・開発を通じて、あらためて環境問題について考えていることはありますか?
新しい技術を開発し、それらを製品に落とし込み、普及させることで世界の環境負荷低減に貢献するという大きな役割をHondaは担っています。自分が研究したものがプロダクトとなって、地球環境改善に貢献できる今の仕事は、小学生の頃から環境問題を意識していた私にとって、非常に有意義で感慨深いものです。
それから、燃料電池を使うことのメリットには環境負荷の低減以外にも、水素を効率的に貯蓄・運搬できる「エネルギーキャリア」としてのメリットもあるんです。例えば、夜間の余剰電力で発電したものを水素に変換しておけば、それを貯めておくことができる。これは、特に石油などの第一次エネルギー資源が少ない日本のような国にとっては、非常に有益なエネルギーになると思うんです。そうしたエネルギーマネジメントの部分でも、我々は大きな役割を果たせると考えています。
今でこそ、燃料電池は様々なところで使われていますが、私が大学で研究していた当時は、世間ではそれほど使われてはいませんでした。それが今、多くの人々の生活に欠かせない自動車の業界で、研究できていることが本当に嬉しいんです。「自分が行なっている研究で人々の生活の役に立ちたい」というのは入社当時からの夢だったので、これからもHondaの製品を通して環境負荷低減に貢献していきたいです。
ずっと取り組んできたものが形になるというのは、やはり何物にも代えがたいことですよね。では、最後に望月さんの今後のビジョンを教えてください。
大学時代からずっと燃料電池についての研究をしてきたこともあり、他社が使っていないような材料や部品を使って、Hondaらしい水素燃料電池をつくりたいというのが今後のビジョンです。すべてのバランスが整った製品を開発することもやはり大事なんですが、お客様に「Hondaの燃料電池がほしい」と思っていただくためには、何か大きな個性がないといけないと思うんです。現在参加しているプロジェクトの中でも、そういった「Hondaらしさ」となるようなものを探って、製品に活かしていきたいです。
Hondaには世界をリードしていく会社であり続けてほしいと思っています。そのためにも、これからの地球の未来を考える上で欠かせない燃料電池の分野で、世界一を目指していきたいです。
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大学時代、燃料電池の研究をしていたのですが、所属していた研究室にHondaの社員の方が参加されていたんです。その方が、燃料電池の研究やHondaでの仕事について、熱意を持って楽しそうに話していた姿が印象的で。「Hondaってこんなに自由に楽しく仕事ができる会社なんだ」と感銘を受けたのが、入社のきっかけです。