イノベーション 2023.09.28

「運転の気持ちよさ」。実用性検証でヤマト運輸のドライバーが感じた「N-VAN e:」の乗り心地とは?

「運転の気持ちよさ」。実用性検証でヤマト運輸のドライバーが感じた「N-VAN e:」の乗り心地とは?

2024年春の市販車デビューに向け、最終調整に入った新型軽商用EV(電気自動車) 「N-VAN e:」。実際に仕事で車両を使うドライバーは使い勝手をどう感じたのか、N-VAN e:の実用性検証に参加し、そのプロトタイプのハンドルを握ったドライバーに話を聞きました。

※ 実用性の検証には、Hondaの軽バン「N-VAN(エヌバン)」をベースとしたテスト用車両を使用しています。

清水裕貴(しみず ひろき)

ヤマト運輸 ドライバー
清水裕貴(しみず ひろき)

2019年6月16日入社。中野南台・中野弥生町のグループ長を経験し、現在は中野営業所所属。業務内容は、配達・集荷・営業で、中でも営業が得意(好き)。普段からお客様とのコミュニケーションを大切にしており、お困りごとの解決につながったときにやりがいを感じるそう。今年の4月に2人目の子どもが生まれ、休みの日に一緒に遊ぶのが今の楽しみ。

ヤマト運輸は同じ未来を見据えるパートナー

「トルクが豊かでキビキビ走るのに音は静か。周辺地域のお客さまに配慮することができました」。東京都にあるヤマト運輸の中野営業所でドライバーを務める清水裕貴さんは、2024年春に発売を控えるN-VAN e:の実用性検証のドライバーとして、プロトタイプで初めて集配業務を行った日のことをこう振り返ります。

Hondaは2030年までにグローバルでのEV年間生産台数200万台を目指すなど、カーボンニュートラルの実現に向け様々な施策を行っています。一方のヤマト運輸も「2050年温室効果ガス(GHG)自社排出量実質ゼロ」および「2030年GHG自社排出量48%削減(2020年度比)」の実現に向け、EV導入とその運用オペレーションの構築やエネルギーマネジメントなどサステナブルな物流の実現に積極的に取り組むなど、業種は違えど脱炭素社会を目指す同志ともいえる存在です。

量産に向け最終段階に入ったN-VAN e:ですが、お客様の要求を満たしているのか確認をしたかったHondaと、集配業務において実用性のあるEV配送車を求めるヤマト運輸とのニーズが合致。N-VAN e:(プロトタイプ)に専用ドライブレコーダーや冷蔵・冷凍庫などを架装した“ヤマト仕様車”を、実際の業務でドライバーに使用してもらい、商用の最前線でどのような振る舞いを見せるのかをチェックする実用性検証を行いました。

中野営業所での実用性検証のドライバーを務めた清水裕貴さん。「最初は少し不安でしたが、乗ってみるととても運転しやすく、街中の集配に適していると思いました」と、笑顔を見せてくれた 中野営業所での実用性検証のドライバーを務めた清水裕貴さん。「最初は少し不安でしたが、乗ってみるととても運転しやすく、街中の集配に適していると思いました」と、笑顔を見せてくれた
清水裕貴さん
(以下、清水さん)

今回の実用性検証に参加した中野営業所(東京都)は、荷物が多く乗り降りが頻繁なエリアです。中野営業所のほかにも、1回あたりの配送距離が長い宇都宮の清原営業所(栃木県)、そして坂道が多い神戸の須磨営業所(兵庫県)の3カ所で、期間は2023年の6月から行われています。

清水さんが所属する中野営業所は、入り組んだ細い路地に住宅が密集して立ち並ぶエリア。クルマを停める機会が多く、走行速度もエリアによって様々で、EVがどのような働きをするのかが実証のポイントの一つでした。そんな中、EVを初めて運転したという清水さんは、その走り心地の良さに驚いたそうです。

清水さん

荷物を満載したディーゼル車で急な坂道を登ると、負荷が掛かるせいかエンジンが唸るような大きい音がしますが、N-VAN e:の場合は静かに軽々と加速してくれました。慣れるまではあまりの軽さにきちんと荷物を積んだかどうか荷室を気にしてしまったほど。「乗りやすく頼りになるクルマだな」というのが第一印象です。

実用性検証で使用された N-VAN e:(プロトタイプ)。人気のNシリーズをベースにした電動車第1号となる 実用性検証で使用された N-VAN e:(プロトタイプ)。人気のNシリーズをベースにした電動車第1号となる

そして、気になるのが1回の充電で走ることのできる航続距離。走りが良くても航続距離が短くては働くクルマのドライバーとしては不安が残ります。

清水さん

中野営業所が担当する集配エリアは半径約3kmです。ドライバーは1日に平均で30kmほど走行しながら100個以上の荷物を集配することもありますが、充電は2日に一度で十分でした。1日の走行距離が30kmは短いと思われるかもしれませんが、頻繁に停車するので燃費には厳しい環境です。

さらに、EVにおいては当たり前のことですが、集配業務中にガソリンスタンドに寄って給油しないで済むのは、時間の効率化にもつながります。

清水さん

ディーゼル車は営業所に戻る際に給油しますが、そのためにルートを考えるのも含めて、意外と時間を取られます。ドライバーにとって時間は大切なので、配達を終えて営業所に戻った後、充電プラグにつなぐだけで次の日には使えるようになるのは、かなり助かりました。

ストレス&トラブルともにゼロ

清水さんは実用性検証が始まってから3ヶ月、N-VAN e:(プロトタイプ)で配送に従事していますが、車両のトラブルはゼロだったそうです。

清水さん

中野営業所の集配エリアは、走っている時間より停まっている時間の方が長いので、ディーゼル車ではバッテリーが上がってしまうことがあります。ですが、今回の実用性検証ではバッテリー上がりを含め、大きな不具合は一度もなかったので安心して集配業務に集中できました。

荷物を積んだN-VAN e:(プロトタイプ)が営業所から街へ。驚くほど静かに、スムーズに出ていく 荷物を積んだN-VAN e:(プロトタイプ)が営業所から街へ。驚くほど静かに、スムーズに出ていく

また、体調管理はドライバーにとって、安全運転のために欠かせない大切な仕事の一つ。配送車の空調性能は、EVの方が圧倒的に高かったそうです。

清水さん

もう一つすごいと感じたのが、エアコンの効きの良さです。実用性検証を始めて、3ヶ月が過ぎますが、中には真夏日や猛暑日がありました。集配からクルマに戻ってエアコンのスイッチを押すと、車内が一気に冷える。エアコンを全開にしても走りのパフォーマンスに影響しないのが好印象でした。

ここ数年の酷暑では冷房をかけないと体調を崩しかねないので、エアコンは走行時にはもちろん、休憩するときにも欠かすことができません。

清水さん

ディーゼル車の場合は冷えるまで時間がかかる上、エアコンのためにエンジンをかけたままにするとCO2を排出してしまいます。また「周辺地域の方にエンジン音でご迷惑をかけていないか?」と常に気を配っているので、その心配を感じることなく車内作業や一時休憩ができるのはメリットです。

加えて、乗り降りのしやすさもドライバーからは好評でした。

清水さん

業務量の繁閑や集配エリアなどにより変動はありますが、1日に100件以上集配することもあるので、クルマからの乗り降りは単純計算でその倍になります。その際、シートの座面が高いと全身を使うので、小さな疲労が蓄積されていきます。そういった身体面でも、ヒップポイントの低いN-VAN e:は、ドライバーフレンドリーだと感じました。

ヤマトグループは、2030年までにEV 20,000台の導入を目標に掲げている。将来、たくさんのN-VAN e:が街を行き交うかもしれない ヤマトグループは、2030年までにEV 20,000台の導入を目標に掲げている。将来、たくさんのN-VAN e:が街を行き交うかもしれない

空間を無駄にしない積載性が集配業務の常識を変える?

ディーゼル車と同じく、広々とした車内空間を確保しているN-VAN e:。「これまでと積み方が変わってしまうほど便利だった」と清水さんが話すのが、その積載性です。

清水さん

ユーティリティー面で特に良かったのが、ゴルフバッグを縦に積み込めること。これまでの軽自動車では、天井に当たってしまうので横に倒して積載していました。また、助手席部分までフロアをフラット化できるので、170cm以上ある長い物干し竿などもまっすぐ積めます。これにはかなり助けられました。

床は低く、天井は高く。N-VANが備える荷室の広さを損なわないようにするのが、電動化にあたって苦戦した部分の一つだった 床は低く、天井は高く。N-VANが備える荷室の広さを損なわないようにするのが、電動化にあたって苦戦した部分の一つだった

ヤマトグループのコーポレートカラーを使ったデザインを活かすシンプルな白のボディーに、バッテリーのアイコンを描いたN-VAN e:(プロトタイプ)。公道で走らせることで、世の中の変化も肌で感じたと話す清水さん。

清水さん

実証期間中、集配中にお客様から「これってバッテリーで動くの?」と興味深い様子で質問されたり、担当地域の学生さんからは「電動の『N-VAN』ってもう完成したんですね!」などと声をかけられたりすることがありました。社会全体がEVに期待しているんだと強く実感させられました。

充電口がフロント部分にあるのもN-VAN e:の特徴の一つ。側面にあるとスライドドアを開閉しづらくなるかもしれないということで考案された 充電口がフロント部分にあるのもN-VAN e:の特徴の一つ。側面にあるとスライドドアを開閉しづらくなるかもしれないということで考案された

インターネットでショッピングをする機会が増え、暮らしはとても便利になりました。一方で、商品などを我々に届けてくれる運送業界における需要が急激に変化、拡大しています。Hondaは今回の実証により、新型軽商用EVがその課題に対しても、運送業界をサポートできる存在となり得ると考えます。

充電設備などEVを取り巻く課題はまだまだ山積みですが、環境に負荷をかけずキビキビと働くN-VAN e:の姿は、カーボンニュートラルの世界観をより広く身近なこととして認知させる可能性を秘めています。

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