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第78回 都市対抗野球大会 Honda 鈴鹿硬式野球部

1回戦

第78回都市対抗野球大会

8月26日(日) 10:00
試合会場:東京ドーム

チーム名 1 2 3 4 5 6 7 8 9
Honda鈴鹿硬式野球部 0 0 0 1 0 0 2 0 0 3
富士重工業 0 0 0 0 1 0 0 3 X 4

Honda鈴鹿に魔の8回 一瞬のスキに逆転食らう
好投児玉から、藤本への継投が結果として裏目

 魔の8回一瞬のスキに逆転食らう。代打攻勢も及ばず1点に涙を呑む。

 本田技研鈴鹿製作所岩田秀信所長のナイスボールの始球式で始まった試合は、8回表まで、Honda鈴鹿にとっては非常にいい流れで来ていた試合だった。ところがその裏、わずかなスキからほころびが生じて逆転を許していまい、十中八九手にしていた勝利が零れ落ちた。改めて、東京ドームの都市対抗本大会の怖さを思い知らされることになってしまった。

 Honda鈴鹿は、組み合わせが決まっていたときから決めていたという児玉(光星学院→東北福祉大→ローソンから移籍)が先発。富士重工は17年目のベテラン阿部(利根商)で、両投手が立ち上がりから好投を見せ、前半はテンポのある好投手戦となり、見ごたえがあった。児玉は、135km/h前後のストレートと切れ味のいいスライダーで相手打線をかわしていく。3回には、大槻中堅手(鉾田一→國學院大)の好守備も出て、Honda鈴鹿はいいムードだった。しかし、打線はコントロールのいい阿部投手に手こずり、3回を終わってパーフェクトに抑え込まれていた。何とか突破口を開きたい4回、2死から亀山(三菱重工名古屋から補強=大垣商)、上出(高野山)、中原(日高高津分校→八戸大)というクリーンアップの3連打で、一気に先制点を奪う。守っても、その裏、遊撃手渡邉(日高高津分校→大阪体育大)の好フィールディングなどでいいリズムで切り抜け、流れを引き寄せる。
 5回に、富士重工の八番松尾に同点ソロを打たれるものの、児玉投手は変化球のキレも鋭く安定感十分だった。

 同点で迎えた7回、Honda鈴鹿は1死から六番村田(三菱重工名古屋から補強=萩→大阪経済大)が中前打すると、中東(広島工→近大)もしぶとく三遊間を破って続き、八番西崎が、初球あわや3ランかという大きなファウルを放った後の3球目、左中間を深々と破る二塁打で二者を迎え入れて突き放す。これで、相手のエース阿部をマウンドから引きずりおろし、ここまではまさに、少ないチャンスを確実にものにするという、予選から続いた勝ちパターンで、與本敏弘監督の意図したとおりの展開となった。
 その裏も、児玉投手がピシャリと3人で抑える安定した投球で、まったく危なげなかった。
 ただ、一つだけ懸念があったとすれば、代わった平井投手(香川中央→国士館大)に対して、タイミングが合っておらず、打者5人で4三振という内容で、少しリズムが悪くなっているのかなというところだった。しかし、あと2イニング、逃げ切り体勢に入って、何とか抑えてくれるだろうという期待感が支配していた。応援席も、少し余裕のある空気が漂い始めていた。

 しかし、「好事魔多し」とはこのことか。
 8回、1死後九番岡本(横浜商→関東学院大)に中前打されると、相手の最も注意すべき打者鬼崎(佐賀工→関東学院大)にも中前打されて一三塁。ここでベンチはすぐに、予選で好投した新人の左腕藤本(今治南→徳山大)を送り込んだ。藤本投手は続く打者を二飛に打ち取る。さらに、三番岩元も中飛でチェンジかと思われたが、これが長打を警戒して後ろに守っていた大槻中堅手の前に落ちた。1点差だ。さらに、続く四番林(土浦日大→立正大)に左翼線二塁打を許し2点が入り逆転された。「あそこは、抑えなくてはいけないと、やはり力みがあったと思います。その前の中前打もそうなのでしょうが、少しでもコースが甘いと、社会人ではつかまってしまいます」と藤本は試合後振り返っていた。
 一転、追う立場になったHonda鈴鹿は、9回1イニングの反撃にかけたが、代打攻勢も及ばず1点に涙を呑んだ。

 試合後は、ショックでしばらくロッカールームから出られないくらいだった。 
 それでも、與本監督は重い口を開いて試合を反省してくれた。「中盤までは、接戦の中で何とか点を取って、ウチのペースだったと思います。バッテリーを中心としてリズムを作っていかれたと思います。ただ、継投のポイントは、ワンポイント遅かったかなとも思います。この試合に限っていえば、選手はよくやってくれました。継投を含めて、すべては監督の私の責任です。改めて、もっと野球を勉強しなくてはいけないと思っています」と、無念さをこらえきれない様子だった。 
 藤本投手に関しては、今季オープン戦を含めて3度富士重工と対戦して、登板をした2度とも好投をしており、相性のよさもあったという。藤本は予選から、ここというポイントで好投してきて、ここまで来る原動力となった。ただ、ルーキーにとって初めての都市対抗の本大会マウンドは、想像以上に目に見えないプレッシャーもあったようだ。同じストライクでも、ボール1個、わずかなコントロールミスが致命傷となるのが都市対抗の怖さなのであろうか。

 春の東京スポニチ大会でHonda鈴鹿が準優勝、狭山市Hondaがベスト4、好スタートを切った今季だったが、Hondaの夏の球宴はあまりに短かく終焉を迎えてしまった。