HFDP出身の角田裕毅が
アルファタウリから参戦
日本人初のデビューレースでの
ポイント獲得を果たす
アルファタウリの2021年型マシンAT02は、前年のAT01をベースに、レッドブルの2020年型RB16で実績のあるパーツを組み込み、独自開発の空力パーツを搭載し戦闘力を高めたものである。レッドブルがRB16のリヤサスペンションを大幅に改良したRB16Bを投入したのに対し、アルファタウリはギヤボックスやリヤサスペンションをほぼ踏襲し、フロントサスペンションを大幅に改良した仕様としている。空力効果を上げるナローなノーズを採用し、全体のフォルムはよりレッドブルデザインのマシンに近づいたものとなった。
パワーユニットは、ホンダがF1参戦最終年にすべてを注ぎ込んだRA621Hで、そのポテンシャルは高く、同じパワーユニットを搭載するレッドブルは熾烈なチャンピオン争いを展開し、最終的にマックス・フェルスタッペンがチャンピオンとなり、ホンダに30年ぶりのタイトルをもたらしている。そのトップレベルのパワーユニットを搭載するAT02のレースには大いに期待が高まった。
マシンの戦闘力は上がったことで、ピエール・ガスリーは予選Q3の常連となり、第6戦アゼルバイジャンでは3位表彰台を獲得する。しかしシーズンを通して、タイヤへのインパクトが比較的大きく、レースオペレーションが上手くいかないことが続き、コンストラクターズランキングは6位で終了した。
ホンダの参戦最終年に、2014年の小林可夢偉以来7年ぶりに日本人F1ドライバーが誕生した。Hondaフォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)の育成ドライバーである角田裕毅が、アルファタウリのレギュラードライバーに起用されたのだ。
2000年生まれの角田は4歳からレーシングカートを始め、才能の頭角を表した。16年鈴鹿サーキット・レーシングスクール フォーミュラ(SRS-Formula:現在のホンダ・レーシング・スクール・鈴鹿(HRS))でトレーニングを積み、成績優秀者としてスカラシップを得て2017年からFIA F4選手権に参戦し、2年目の2018年にはシーズン7勝を挙げチャンピオンとなった。2019年にはHFDPの育成ドライバーとして欧州に渡りFIA F3選手権に参戦。初優勝を成し遂げ、2020年にFIA F2選手権にステップアップを果たした。シーズン3勝を挙げて、日本人で初めてFIAルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞。シリーズランキング3位となりF1参戦に必要なスーパーライセンスを取得して、F1ドライバーへの道を切り開いた。
バーレーンでの開幕戦で、角田は鮮烈なF1デビューを果たした。予選Q1を2位で突破するという快挙を成し遂げ、Q3進出は叶わなかったが13番グリッドからデビューレースに挑み、9位入賞。日本人ドライバーのデビューレースでのポイント獲得は初めてのことだった。その後の活躍が期待されたが、第2戦エミリオ・ロマーニャGPでのアクシデントから歯車が狂ってしまった。角田にとってイモラは得意なコースだったが予選Q1で痛恨のクラッシュを喫し、この時モノコックに負ったダメージがシーズン前半の角田を不調に陥れた。この原因に気づきマシンを修復した後半戦、角田はダイナミックなドライビングを取り戻し、徐々に調子を上げていく。そして最終戦アブダビGP、予選Q3に進出して8番グリッドを得ると、決勝でも好走し自己ベストリザルトとなる4位でフィニッシュ。苦しみ悩んだデビューイヤーを最高の結果で締めくくった。
Spec
シャシー
- シャシー
- スクーデリア・アルファタウリ製カーボン・コンポジット・モノコック
- フロントサスペンション
- スクーデリア・アルファタウリ製カーボン・コンポジット・ウィッシュボーン、プッシュロッド、トラックロッド&アップライト・アッセンブリー、レッドブル・テクノロジー製サスペンション・ロッカー、トーションバー&ダンパー
- リヤサスペンション
- レッドブル・テクノロジー製カーボン・コンポジット・ウィッシュボーン、プルロッド式インボードトーションバー&ダンパー
- ブレーキダクト
- スクーデリア・アルファタウリ製(前後とも)
- ステアリング
- スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー製(パワーステアリング)
- ギヤボックス
- レッドブル・テクノロジー製カーボン・コンポジット・メインケース、縦置き、油圧式8速
- ディファレンシャル
- 油圧式マルチプレート
- クラッチ
- 油圧式カーボン・マルチプレート
- エキゾースト
- ホンダ製
- ブレーキシステム
- スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー製
- ドライバーズシート
- スクーデリア・アルファタウリ製カーボン・コンポジット
- タイヤ
- ピレリ
- 燃料システム
- スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー製
- 重量
- 752㎏
パワーユニット
- パワーユニット
- Honda RA621H
- シリンダー数
- 6(以下レギュレーションに準拠)
- 排気量
- 1,600cc
- 最高回転数
- 15,000rpm
- バルブ数
- 1シリンダー4バルブ(インレット2、アウトレット2)
- バンク角
- 90度
- エンジン重量
- 150㎏
- 最高出力
- 未公表
- エンジン製造
- ホンダ
- エンジンマネージメント
- ホンダ&標準ECU
- オイル
- モービル1
Detail
20年の活動終了発表から、ラストイヤーに間に合わせるべく短期間で作り上げられたRA621H。ほぼすべてが新設計の新骨格PUで、「すべての力を出し切る」というホンダ開発陣の執念が結実したものだった。
AT02は空力的に進化し、フロントノーズが流行のナロータイプに変わるなど洗練されたフォルムとなった。21年シーズンに向けて風洞施設をレッドブルの本拠地であるミルトンキーンズに移し、積極的な開発が形になりつつあった。
AT02は20年型レッドブルRB16の基本的骨格を踏襲したマシン。しかし、レッドブルが苦しんだリヤサスペンションは採用せず、リヤは従来のAT01を引き継ぎ、フロントサスペンションの改良に力を注いだ。