アルファタウリ・ホンダが歓喜の勝利

Scuderia AlphaTauri Honda AT01

スクーデリア・アルファタウリ・ホンダ AT01

Scuderia AlphaTauri Honda AT01
AT01

波乱を制してガスリーが初優勝
アルファタウリ&ホンダの50戦目を飾る

2020年新型コロナウィルスの世界的な蔓延により開催が危ぶまれたF1は、存続をかけて7月にシーズン開幕戦を敢行。スケジュールを大幅に組み替え、無観客でのレースとし、シリーズの継続を果たした。コロナの影響はマシン開発にも大きな影響を及ぼし、FIAは開発に制限をかけるレギュレーションを多々発し、公平性を保ちチームの負担を減らす施策を行なっている。
2006年からF1に参戦してきたスクーデリア・トロ・ロッソは2020年からスクーデリア・アルファタウリとチーム名称を変え、2018年からホンダのパワーユニットを使用するワークス体制を継続する。
新生チームの最初のマシンであるAT01は、外観こそ前年トロ・ロッソでデビューしたSTR14の正常進化版であったが、ギヤボックス、リヤサスペンション、フロントサスペンションのコンポーネントの一部が2019年型レッドブルRB15からそのまま流用され、マシンコンセプトはRB15とほぼ同じもので、ポテンシャル向上に期待がかかった。
ホンダのパワーユニット開発もコロナ禍の影響を大きく受けた。HRD Sakuraは一時閉鎖され、緊急対策レギューレーションによりパワーユニットのアップデートも禁止された。RA620Hは前年に投入した新たな高効率燃焼システム「スペック4」を踏襲し、燃焼室の形状はそのままにピストン冠面の形状を変えて圧縮比を上げる進化が施されている。そして7月の開幕までの間に「熊製メッキ」と呼ばれる新技術の表面処理をシリンダーに採用し、ハイパワーでの摩擦に耐え得るものとした。ちなみに「熊製」とはホンダ熊本製作所との連携で開発されたことによる呼称である。

Scuderia AlphaTauri Honda AT01

ピエール・ガスリーとダニエル・クビアトを擁する新生アルファタウリは、シーズン序盤、なかなか結果を残せない戦いが続いた。シーズン前半は7位が最高で、ポイントは獲得するもののコンストラクターズ選手権では6位に大きく離された7位というポジションだった。マシンのポテンシャルの高さはドライバーも認めるところだったが、その力を発揮できない状態が続く。
第8戦イタリアG Pはアルファタウリにとってシーズン最大の見せ場となった。モンツァを舞台に行われたレースは波乱の展開となり、上位陣の脱落とタイミング良いタイヤ交換が功を奏し、10番手スタートのガスリーはレース中盤の赤旗再スタート時には3番手という好位置を得ていた。スタンディングスタートでのレース再開後、トップのルイス・ハミルトンはペナルティ消化のため脱落し、ガスリーは果敢に攻めて首位の座を得てホームストレートに戻ってきた。そこから残り25周、ガスリーは背後にせまるかつてのチームメイト、フェラーリのカルロス・サインツjrの攻撃をかわしトップを死守し、チェッカーフラッグをコンマ4秒先に受けて優勝を飾ったのだ。
ガスリーのF1初優勝は、アルファタウリにとってはトロ・ロッソ時代の2008年以来12年ぶりの優勝となった。そして、2018年トロロッソとホンダのパートナーシップが始まってから50戦目というメモリアルレースでの勝利は、F1活動継続に尽力してくれたチームへの感謝を心にもつホンダにとっても大きな喜びであった。

Scuderia AlphaTauri Honda AT01
AT01

Spec

シャシー

モノコック
スクーデリア・アルファタウリ製コンポジットモノコック
フロントサスペンション
スクーデリア・アルファタウリ製カーボンコンポジットウィッシュボーン&アップライトアセンブリー、レッドブル・テクノロジー製プッシュロッド式トーションバー&ダンパー
リヤサスペンション
レッドブル・テクノロジー製
カーボンコンポジットウィッシュボーン、プルロッド式トーションバー&ダンパー
ブレーキダクト
スクーデリア・アルファタウリ製(フロント&リヤ)
ステアリング
スクーデリア・アルファタウリ製パワーアシスト
ギヤボックス
レッドブル・テクノロジー製
縦置きカーボンコンポジットメインケース、油圧式8速
ディファレンシャル
油圧式マルチプレート
クラッチ
油圧式カーボンマルチプレート
エキゾースト
ホンダ製
ブレーキシステム
スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー製
ドライバーシート
スクーデリア・アルファタウリ製カーボンコンポジット
タイヤ
ピレリ製
燃料システム
スクーデリア・アルファタウリ/レッドブル・テクノロジー製
車重
746㎏

パワーユニット

パワーユニット
Honda RA620H
排気量
1.6ℓ
形式
V型6気筒

Detail

Scuderia AlphaTauri Honda AT01

チーム名の変更に伴いマシン名も新たにAT01としたが、前年までのSTR14をベースにし,エアロ関係も大幅な変更はない。コロナ禍の影響もあり、基本的に19年型レッドブルのRB15の遺伝子を引き継いだマシンで、エアロや細部にオリジナルのパーツを使用している。

Scuderia AlphaTauri Honda AT01

新チーム名のアルファタウリはレッドブルが展開するファッションブランドで、マシンのカラーリングも一新。ホワイトとダークブルーのデザインに唯一レッドの「HONDA HYBRID」が際立つ。

Scuderia AlphaTauri Honda AT01

AT01にセットされたRA620H。新型コロナの影響により、PU開発にも開発停止や急遽発せられた新たな規制などさまざまな困難が襲った。しかし、17戦に短縮された20年シーズン、ほぼトラブルなく乗り切ることに成功した。