Hondaの新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」発のスタートアップとして「PathAhead株式会社(パス アヘッド、以下PathAhead)」が設立され、本日発表会を開催しました。
PathAheadは、世界初となる、砂漠の砂を活用した人工骨材※1「Rising Sand(ライジング サンド)」を開発しています。今後は量産技術の確立と実証実験を通じて、アスファルト舗装を行う道路施工現場での施工性・耐久性などを検証した後、2028年にケニア共和国で設立予定の自社工場で量産を開始し、アフリカ地域の建設事業者向けに安定供給する体制の構築を目指します。
PathAhead株式会社 公式サイトURL:https://pathahead.jp/
近年、アフリカ地域の国々では、急速な人口増加に伴い経済の発展が進む一方で、道路などのインフラ整備が十分に進まず、経済成長の大きな足かせとなっています。現在のアフリカ地域での道路舗装率は約20%※2と低水準にとどまっており、加えて、舗装済み道路の劣化も進んでいることから、物流コスト上昇などの経済損失につながっています。また、道路舗装に用いられる骨材は、砂や砕石などの比較的安価な天然資源を原材料としており、産地や地層によって強度にばらつきが生じやすいため、舗装材として必要な品質を安定的に確保しにくいという課題があります。
PathAheadは、現地で調達可能な資源として砂漠の砂に着目し、高い経済性と耐久性を両立した人工骨材「Rising Sand」を開発しました。Rising Sandは、微細で不揃いな砂漠の砂を、独自の技術で均一に造粒した高硬度の人工骨材で、道路舗装やコンクリート、路盤材などさまざまな用途に活用が可能です。
PathAheadは、事業化に向けた最初のステップとして、2027年よりケニアを皮切りに、タンザニア連合共和国、南アフリカ共和国の順で、約3年間にわたり道路舗装に関する実証実験を行います。現地の気候や交通条件を踏まえ、施工性や耐久性、品質の再現性などを検証し、量産に向け、道路舗装の各種要件を満たす仕様の確立を目指します。この実証で得られた結果を踏まえ、2028年にはケニアに設立予定の自社工場にてRising Sandの量産を開始し、現地調達・現地生産による安定供給体制の構築に取り組みます。
Rising Sandの特長
Rising Sandは、100μm(マイクロメートル※3)程度の微細な球状の砂漠の砂を、特許出願中の独自の造粒技術により数十mm(ミリメートル)単位の粒径へと造粒した人工骨材です。粒度や形状のばらつきを抑えて骨材としての強度を高めることで、一般的な天然骨材を用いた道路の耐久年数が約10年とされる中、20年以上※4の耐久年数を実現しました。これにより、道路修繕の実施頻度を低減し、ライフサイクルコストを従来の約60%※4に抑えることができます。さらに、砂漠の砂や薬剤など、現地で調達できる資源を原材料とすることで、天然骨材と同等の価格での提供を目指します。世界的に深刻化している、山や河川からとれた砂や砕石などの天然資源の枯渇に対する持続可能な代替材料として、道路舗装用途にとどまらず、コンクリートや路盤材など幅広い建設分野でのニーズに応えていきます。
舗装などに用いる建設材料
米国中央情報局(CIA)「The World Factbook」をもとにPathAheadが独自に試算
1ミクロンは1mmの千分の一
PathAhead調べ
PathAhead株式会社 代表取締役CEO 伊賀 将之(いが まさゆき)のコメント
「Hondaでは、お客様が完成車に求める要件をベースに、四輪の材料研究開発やモビリティの基礎研究に取り組んできました。そうした経験を通じて培った技術と視点を、スピード感をもって社会課題の解決に直接つなげたいという思いから、PathAheadを創業しました。アフリカ地域では、道路の耐久性の低さが人々の移動、物流、経済活動の大きな制約となっています。道路は単なるインフラではありません。人と人をつなぎ、教育や医療、産業へのアクセスを広げ、地域の可能性そのものを支える基盤です。PathAheadは、高耐久な道路素材を提供することで、つくって終わりではなく、持続可能な道路網の構築に挑戦します。基礎研究から現地に根差した社会実装までやり切ることで、技術の力で『道』を起点に、人々と社会が持つ無限の可能性を解き放っていきます」
株式会社本田技術研究所 代表取締役社長
コーポレートベンチャリング審議会議長 大津 啓司のコメント
「Hondaは、モビリティを通じて世界中のお客様に『自由な移動の喜び』を提供するため、従業員一人ひとりが夢を持ち、強い想いをもってチャレンジを続けています。今回、モビリティの素材研究で培われた伊賀さんの技術とアイデアが、インフラという新たな発想へとつながり、社会課題の解決のためのソリューションとして形になりつつあることを心強く感じています。Hondaは、IGNITIONを通じて本取り組みを継続的に支援するとともに、社内外のパートナーとの共創をさらに加速させ、これからも新しい価値の創造と社会課題の解決に取り組んでいきます」
新事業創出プログラム IGNITIONとは
IGNITIONは、個人の持つ独創的なアイデア・技術・デザインを発掘し、社会課題の解決と新しい価値の創造につなげる新事業創出プログラムです。2017年に、従業員を対象に社内新事業を創出するプログラムとして開始し、2020年には、より早い社会実装を実現するために、起業の選択肢を追加しました。さらに2023年には対象を社外に拡大し、社外のアイデアとHondaの技術や知見を組み合わせることで革新的な価値創造を目指すプログラムへと進化しました。
IGNITION制度(Honda従業員向け)の特長
- 勤続年数や所属部門にかかわらず、日本国内の事業所に勤めるHonda正規従業員は誰でも応募可能
- 一次審査で採択された提案は約6カ月間の事業開発支援を実施し、期間中は専門スキルを持った社内人材によるタスクフォースチームを結成し、提案者をサポート
- 二次審査を通過したアイデアは、起業しスタートアップとして事業化、あるいは社内事業化
- 起業の場合は、二次審査後に実施されるコーポレートベンチャリング審議会にてHondaからの出資を検討
- 審査過程において、外部投資家がアドバイスを提供
- 起業したスタートアップの独立性を担保するため、Hondaの出資比率は20%未満とする
IGNITION公式ウェブサイト:https://global.honda/jp/ignition/