新事業創出プログラムIGNITION発のスタートアップ「株式会社UMIAILE」設立

~高速で自律航行する小型無人ボートを使い、海洋データを収集・提供~

 Hondaの新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」発のスタートアップとして「株式会社UMIAILE(ウミエル、以下UMIAILE)」が設立され、本日発表会を開催しました。
 UMIAILEは「“海の見える化”を通じて平和で豊かな地球を守る」ことを目指し、高速で水上を自律航行し海洋情報を収集する小型無人ボート「UMIAILE ASV※1」を販売するとともに、UMIAILE ASVを用いて海象や海洋生態系、海底地殻変動をはじめとする海洋地質などの海洋データを収集し、分析・提供する事業を2025年4月に開始します。

UMIAILE ASV(プロトタイプ)
UMIAILE ASV(プロトタイプ)
UMIAILE

動画URL:https://youtu.be/k8BiaIk8Xq0

株式会社UMIAILE公式サイトURL:https://umiaile.com

 従来の有人船舶による海洋観測は、船舶の建造や運航にかかるコストが膨大なために、観測頻度・密度を高めることが難しく、得られる情報量が限られていました。そこでUMIAILEは海洋観測の高頻度化・高密度化を目指し、UMIAILE ASVを開発しました。UMIAILE ASVは、独自の船体姿勢制御技術により、水上を高速で自律航行する小型無人ボートであり、目的に応じた観測機器を搭載することで、風・波浪・潮位などの海象情報や、海洋生態系、海洋地質などの海洋データを収集することができます。UMIAILEはUMIAILE ASVの機体販売に加え、2025年4月に日本国内の大学や研究機関向けのデータ提供事業を開始し、2030年以降は海外展開を視野に事業の拡大を目指します。

ASV(Autonomous Surface Vehicle)自律航行型無人船

小型無人ボート「UMIAILE ASV」

【UMIAILE ASVの特長】

1.潮の流れが速い海域でも長時間安定した観測が可能

 UMIAILE ASVは、水中翼を用いた独自の船体姿勢制御技術により、高速・高効率な航行を実現。日本近海のような潮の流れが速い海域においても安定して海洋観測が可能です。動力用パワーユニットには電動モーターを搭載しており、船体上面のソーラーパネルにより発電することで、長時間安定した観測を行うことができます。

2.目的に合わせて観測機器を搭載、幅広い観測ニーズに対応

 目的に合わせてUMIAILE ASVにセンサー・カメラ・ソナーなどの多様な観測機器を自在に組み合わせて搭載することで、幅広い観測ニーズに応えることができます。例えば、地震が多発する日本近海の海底地殻変動を高頻度に観測することで、地震のメカニズム解明および今後想定される南海トラフ巨大地震などに対する防災・減災に貢献します。また、防災・減災貢献に加え、海洋生態系の調査やブルーカーボン※2の定量化など、平和で豊かな地球の実現に向けてさらなる活用範囲の拡大を目指しています。

3.複数のUMIAILE ASVを連携させ、高頻度・高密度の海洋観測を実現

 UMIAILE ASVは、GNSS※3を活用し、海上でも自己位置を正確に測位しながら、事前にユーザーが設定したルートを自律航行します。また、多数のUMIAILE ASVを観測エリア一帯に配置することで、高頻度・高密度の海洋観測が可能です。

UMIAILE ASV通信イメージ
UMIAILE ASV通信イメージ
活用事例:海底地殻変動観測
活用事例:海底地殻変動観測

沿岸・海洋生態系が光合成によりCO₂を取り込み、その後海底や深海に蓄積される炭素

GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星測位システムの総称

【株式会社UMIAILE 代表取締役CEO 板井 亮佑のコメント】

「自身の技術やアイデアで地球を取り巻く社会課題を解決したいと思い、UMIAILEを起業しました。Hondaにおける電動モビリティやロボットの開発経験、自発研究テーマとして取り組んでいた船体姿勢制御技術から着想し、UMIAILE ASVを開発しました。海洋観測に課題を抱えるお客様に革新的なソリューションを提供することで、将来にわたって人々が安心して地球に住み続けることができるよう、UMIAILEは『海の見える化』に挑戦し続けます」

【本田技研工業株式会社 取締役 代表執行役副社長
コーポレートベンチャリング審議会議長 青山 真二のコメント】

「Hondaは、『自らの技術で人の役に立ちたい』という創業者の強い思いから始まり、今でもそのチャレンジ精神は従業員一人ひとりに脈々と息づいています。板井さんの『技術とアイデアで地球を取り巻く課題を解決したい』という夢の実現を、HondaはIGNITIONを通じて支援します。これからもHondaは独創的なアイデア・技術・デザインを大切に、オープンイノベーションを加速し、新しい価値の創造や社会課題の解決に取り組んでいきます」

【新事業創出プログラム IGNITIONとは】

 IGNITIONは、個人の持つ独創的なアイデア・技術・デザインを発掘し、社会課題の解決と新しい価値の創造につなげる新事業創出プログラムです。2017年に、従業員を対象に社内新事業を創出するプログラムとして開始し、2020年には、より早い社会実装を実現するために、起業の選択肢を追加しました。さらに2023年には対象を社外に拡大し、社外のアイデアとHondaの技術や知見を組み合わせることで革新的な価値創造を目指すプログラムへと進化しました。

IGNITION制度(Honda従業員向け)の特長

勤続年数や所属部門にかかわらず、日本国内の事業所に勤めるHonda正規従業員は誰でも応募可能
一次審査で採択された提案は約6か月間の事業開発支援を実施し、期間中は専門スキルを持った社内人材によるタスクフォースチームを結成し、提案者をサポート
二次審査を通過したアイデアは、起業しスタートアップとして事業化、あるいは社内事業化
起業の場合は、二次審査後に実施されるコーポレートベンチャリング審議会にてHondaからの出資を検討
審査過程において、外部投資家がアドバイスを提供
起業したスタートアップの独立性を担保するため、Hondaの出資比率は20%未満とする

IGNITION公募制度の特長

対象は起業を目指す個人
一次審査を通過したチームには、成果報告会までの約6か月間、専門スキルを持った社内人材タスクフォースチームによるサポートを実施
成果報告会の終了後はHondaの事業との連携・協業、Hondaからの出資など、案件に合わせて複数の選択肢を検討

IGNITION公式ウェブサイト:https://global.honda/jp/ignition/