2021年06月11日 ニュースリリース
新事業創出プログラム「IGNITION」発のベンチャー企業「株式会社Ashirase」設立
~視覚障がい者向けナビゲーションシステム「あしらせ」の発売を目指して始動~
Hondaは、新事業創出プログラム「IGNITION(イグニッション)」発のベンチャー企業第1号となる「株式会社Ashirase(あしらせ)」が設立されたことを本日発表しました。株式会社Ashiraseは、視覚障がい者の歩行をサポートするシューズイン型のナビゲーションシステム「あしらせ」を開発しており、2022年度中の発売を目指します。
「あしらせ」は靴の中に取り付ける立体型のモーションセンサー付き振動デバイスと、スマートフォンアプリで構成されたナビゲーションシステムです。
アプリで移動ルートを設定し、靴の中に取り付けたデバイスが振動してナビゲーションを行います。直進時は足の前方の振動子が振動、右左折地点が近づくと、右側あるいは左側の振動子が振動して知らせます。進行方向を直感的に理解できるため、ルートを常に気にする必要がなくなり、より安全に、気持ちに余裕を持って歩行することが可能になります。
「あしらせ」の特長
・GNSS※1測位情報と、ユーザーの足元の動作データから、視覚障がい者向けの誘導情報を生成
・白杖を持つ手、周囲の音を聞く耳を邪魔せず、足への振動でナビゲーションを行う
・足の神経層に合わせた振動子の配置とし、振動を感じやすい
・本体には柔らかく、形状を保てる素材を採用し、靴の中に入れても違和感が少ない
視覚障がい者の歩行課題
ロービジョン※2を含めた日本の視覚障がい者数は、2007年時点で164万人と推定されており、2030年には200万人近くまで増加すると予測されています※3。
視覚障がい者は一人で外出する際、安全とルートの確認を繰り返し行っています。しかし、情報取得は限られた感覚機能で行うため、どうしても注意が行き届かずに「道に迷う」、「不安全に陥る」などの機能的課題が発生する場合があります。また、これらの課題により「視力に問題がなく、自由に歩いていた時のことを思い出して悔しい」(ロービジョン、中途失明者)、「道に迷った時、周囲の人に話しかけても無反応なことがあり、なぜ無反応なのか理由がわからず怖い」(全盲、中途失明者)といった心理的な課題にもつながっていることが、開発者によるヒアリングで見えてきました。
「あしらせ」は、「視覚障がい者がより安全に、気持ちに余裕が持てるナビゲーション」をコンセプトに、目的地までより安全に移動でき、自立に繋がるプロダクトを目指します。
株式会社Ashirase 代表取締役 千野 歩(ちの わたる)のコメント
「身内の事故をきっかけに、視覚障がい者のより安全で自由な移動を実現したいと活動を始めました。『あしらせ』を開発し、Hondaの新事業創出プログラム『IGNITION』に挑戦して、今回(株)Ashiraseの起業に至りました。『あしらせ』の発売に向けて、これからたくさんの壁にぶつかることになると思いますが、一つひとつ乗り越え、視覚障がい者の自由な移動の実現に向けて、全力でチャレンジしていきます」
株式会社Ashirase公式ウェブサイト:
新事業創出プログラム IGNITIONとは
Honda従業員の持つ独創的な技術・アイデア・デザインを形にし、既存事業の枠を超えて、社会課題の解決と、新しい価値の創造につなげる新事業創出プログラムです。
IGNITIONの特長
- ・勤続年数や所属部門に関わらず、日本のHonda正規従業員は誰でも応募可能
- ・最終審査を通過したアイデアは、社内で事業化、あるいは起業しベンチャーとして事業化
- ・事業化判断までの期間は6ヵ月間を基本とし、期間中は専門スキルを持った社内人材によるタスクフォースチームが結成され、提案者をサポート
- ・審査過程において、ベンチャーキャピタルがアドバイスや支援を実施
- ・起業したベンチャーの独立性を担保するため、Hondaの出資比率は20%未満
- ※1GNSSはGlobal Navigation Satellite Systemを指し、衛星測位システムの総称となります
- ※2「【日本眼科医会研究班報告 2006~2008】日本における視覚障害の社会的コスト」において、「よく見える方の眼で、矯正視力が0.1を超えるが、0.5未満」と定義されています
- ※3出展:【日本眼科医会研究班報告 2006~2008】日本における視覚障害の社会的コスト
URL: https://www.gankaikai.or.jp/info/kenkyu/2006-2008kenkyu.pdf