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2008年05月21日 ニュースリリース

2008年央社長会見 骨子

 Hondaは、2008年4月より、新たな3ヵ年計画である10次中期計画をスタートした。
 この3ヵ年の基本的な考え方は、「将来も、グローバルで成長していく力を持ち続けるために必要な体制を確立すること」と、「それをまず日本を中心として始めること」とした。
 具体的方向性は、「世界をリードする環境技術を作り出し、商品として具現化し、より多くのお客様に提供していくこと」「先進の商品を作る、ものづくりの体制を、次世代に向けて大きく進化させること」の2つに定めた。
 その中心となるのは日本であり、環境で先駆ける技術と商品を、日本で熟成させ、ものづくりの体制の進化と合わせて、日本から世界へ広げていくことを目標に取り組んでいく。
 そのために数多くの施策を展開していくが、「二輪事業の強化」「国内四輪車生産体制の革新」「本格普及に向けたハイブリッド戦略」の3点を核に、着実に取り組みを進めていく。

1. 二輪事業の強化

二輪事業の重要性・スーパーカブ50周年

  • Hondaは二輪車で始まり、グローバル展開においても二輪車で進出し、事業基盤を築き、その後の四輪事業進出へつなげてきた。
  • 二輪車はHondaの成長、拡大の推進力であり、他社にはないHondaが持つ大きな強みである。
  • 二輪事業では、現在、グローバルで年間1,300万台以上を販売し、毎日の欠かせない移動手段としてのコミューターや、趣味性の高い大型バイクの走る楽しみなどを提供している。
  • その中でもスーパーカブは、今年、誕生から50周年を迎え、Hondaを象徴するモデル。
  • 日本で誕生したスーパーカブは、その独創的なコンセプトや基本スタイルこそ変わらないものの、各地域の人々のニーズや好みに応じたモデルへと進化しながら、世界に広がり、カブシリーズとして、世界生産累計6,000万台(2008年4月末)を達成した。
  • 移動手段としての二輪車は、今後も、アジアや南米を中心に需要の拡大が見込まれるが、進展国だけでなく、世界的な原油高などを踏まえると、改めて二輪車が見直される可能性が高いと感じている。
  • 今後は、スーパーカブのような、二輪車の新しいカテゴリーとマーケットを作り出すモデルを目指し、お客様の期待を超えたHondaらしい商品を創造していく。

二輪車生産体制の強化

  • そのためには、商品を生み出す生産の強化が重要であり、2008年4月より稼働開始した熊本新二輪車工場が、中心的役割を担う。
  • 創業の地である浜松から熊本に、二輪車の生産を移管する目的は、集中生産による効率化と、新しい価値を持った商品を、より高い品質で作り出していく力を強化することにある。
  • そして、日本のものづくりの源流を、もう一度徹底的に強化し、競争力を大幅に高め、グローバル規模での二輪事業のさらなる成長発展につなげていく。
  • 熊本新二輪車工場は、2009年前半にフル生産体制となる。
  • コミューターから大型バイクまで、約60機種の生産を効率的に行うために、機種の特性に合わせた、効率の高い最適な生産ラインのあり方を、ゼロから発想し構築した。
  • 様々な最新鋭の設備を導入するとともに、生産量の多いモデルは、ショートプロセス化や自動化を図り、作業効率と柔軟性を高めた3本のメインラインで生産。付加価値の高い商品は、15基のセルラインを設置し、1台分の組み立て全てを、数人で行う体制とした。
  • セルラインは、高い商品魅力や品質を作り込むことが可能であると同時に、働く人の技術の向上、生産技術の伝承など、人材育成でも大きなメリットがある。
  • このような取り組みにより、既存工場に対して、要員効率を約2割向上するなど、1ドル90円台の為替環境下でも、高い競争力を持つ、盤石な体制を目指していく。
  • 自然エネルギーの活用など、既存工場と比較し、CO2排出量を約2割削減した、環境にやさしい生産工場としての性格も併せ持っている。
  • 熊本は、世界の二輪車のマザー工場として、各地域でお客様の期待を超える新しい商品を生み出す力とし、将来も二輪事業が成長し続ける原動力となる。

技術・商品力の強化

  • 環境技術では、国内で販売するスクーターへのフューエル・インジェクション(FI)の搭載が、ほぼ完了し、タイでも、2009年末までに全二輪車をFI化するなど、2010年までに世界の大半の二輪車にFIを搭載していく。
  • 安全技術では、二輪車用エアバッグやABSの適用拡大を進めていく。ABSについては、2010年末までにオフロード車を除く、全世界の250ccクラス以上のモデルに適用していく計画。
  • 商品では、進展国においては、主力の100ccクラスに、低燃費、高出力、低コストを実現した新モデルを、2008年夏、タイでの発売を皮切りに、順次アジア各国へ投入していく。
  • 先進国では、燃費を大幅に向上させる二輪車用可変シリンダーシステムや、制動時の安定性をより高める先進のブレーキシステム「電子制御式コンバインドABS(C-ABS)」などの独創的環境・安全技術を投入していくとともに、中・大型モデルの商品魅力の向上を図り、運転の楽しさを追求する領域を強化していく。
  • 研究開発力についても、次世代のスーパーカブを作り出す、意欲と想いで強化していく。

2. 国内四輪車生産体制の革新

国内の生産改革の考え方

  • 熊本新二輪車工場に続き、国内では、今後3年間に、浜松製作所のリノベーション、八千代工業の軽自動車新工場、小川エンジン工場、寄居四輪車工場など、いくつもの次世代の生産工場が稼働する。
  • 海外では、2008年後半に、米国インディアナ工場、カナダ新エンジン工場、タイ四輪車第二工場が稼働開始する。
  • 各地域のお客様の満足度や事業の効率を高めるため、地域の自立化を進めているが、より競争力、商品魅力を高めるためには、二輪車同様、日本で生産技術をさらに磨き、進化させ、それを海外へ展開する日本の力が必要である。
  • 2000年代前半には、需要に応じて柔軟に多機種を生産する体制を、鈴鹿、狭山へ導入。その後、海外拠点へと展開し、グローバルでの相互補完生産体制を構築してきた。
  • 今日、需要の変化に応じて、グローバルレベルで柔軟な生産が可能なのは、この生産体質改革を、日本がリードして進めてきたからである。
  • 今後さらに、世界のお客様へ、より質の高い魅力ある商品を提供し、Hondaが進化し、成長し続けるためには、新たな「ものづくりの改革」が必要であり、日本がイニシアチブを取って動き、チャレンジする時期が、また来たと認識している。
  • 一連の生産改革の目的は、より満足いただける商品を作り出すため、お客様に焦点を置いた「ものづくり技術、ものづくり体制の革新」であり、そのために、国内の生産拠点を、もう一度組み直し、先進創造に磨きをかけ、生産体質を強化していく。
  • それをグローバルへつなげていくことが、今後、日本の果たす大きな役割である。
  • 八千代工業 四日市製作所は、軽自動車の新工場を建設し、熊本製作所からエンジン生産を移管し、エンジンから完成車まで一貫した高効率な生産体制を構築する。
  • これは、日本で高まっている軽自動車のニーズに応えるため、商品力の強化とともに、商品を作り出す工場も大きく進化させ、商品と生産を強く結びつけた、軽自動車事業の改革を目的としている。
  • 単に、日本の軽自動車事業だけを視野に入れているのではなく、コストやお客様の期待の面で大変厳しい軽自動車分野で、抜本的改革に取り組み、この市場でコスト競争力をつけることが、今後、グローバルで激化する競争においても大きな力となる。

小川エンジン工場・寄居四輪車工場

  • 今回の生産改革の中心となるのが、2009年前半に稼働する小川エンジン工場と、2010年に稼働する寄居四輪車工場である。
  • 両工場の目的は、次世代のものづくりの工場として進化させ、Hondaのグローバルの成長へつなげていくことにある。
  • 小川エンジン工場は、より高度な生産技術を必要とする、次世代の高性能環境エンジン生産を担い、ガソリンエンジンとディーゼルエンジン、直列4気筒とV型エンジンなどの、生産工程の異なるエンジンを、フレキシブルに生産していく計画。
  • 寄居工場は、環境トップランナーとして、エネルギー効率を追求すると同時に、新しい価値を生み出す次世代工場を目指している。
  • 生産時のエネルギー使用量を、最適に制御する最新鋭のシステムの導入や、エネルギーの再利用などにより、例えば、狭山工場と寄居工場で、同じクルマを作った場合、1台あたりのエネルギー使用量を、3割以上削減できる、地球環境にやさしい先進の工場としていく計画。
  • 組み立て工程においては、ユニバーサルデザインを採用するなど、人にやさしいラインの実現を目指している。
  • さらに、部品単位から完成車、お客様までをトレースできる次世代生産システムを構築し、商品品質の向上とともに、お客様の満足度をより高めていく。
  • 寄居工場では、要員効率を2割向上させるとともに、新たに物流コントロールセンターを設置し、物流領域においても大幅な効率化を図り、競争力を一層高めていく。
  • Hondaの世界中の生産拠点をリードしていく次世代工場の実現を目指し、小川エンジン工場と寄居工場を合わせた関連投資額は、約1,580億円を見込んでいる。

3. 本格普及に向けたハイブリッド戦略

  • Hondaは、地球規模の環境保全であるCO2の低減を、最も重要な環境の課題と捉えており、業界に先駆けて、全世界の商品および生産活動における2010年のCO2低減目標を定め、様々な領域での取り組みを推進している。
  • CO2低減の方法は数多くあるが、商品においては、現在のところ、ハイブリッド技術の進化が最も現実的で、効果が大きいと考えている。
  • ハイブリッド車を、とかくイメージ先行で捉えられがちな現在のステージから、本格的な普及に向けた新しいステージに移行させていくことが重要である。
  • この目的に向け、Hondaの総力を挙げて発売するのが、「新型ハイブリッド専用車」である。
  • Hondaが作るハイブリッド車は、自動車としての新たな魅力を持つものとして、お客様に満足・喜んでいただくものとしなければならないと考え、環境性能に加え、クルマとしての魅力も大幅に向上した。
  • 5ドア5人乗りの、取り回しの良いコンパクトサイズとし、エクステリアデザインは、「FCXクラリティ」のコンセプトを採用し、ハイブリッド専用車としての個性と先進性を併せ持つものとした。
  • ハイブリッドシステムには、エンジンをメインとし、発進・加速など必要な時にモーターで助けるというコンセプトの、小型・軽量で高効率なインテグレーテッド・モーター・アシスト(IMA)を採用。
  • 「新型ハイブリッド専用車」は、荷室下に、制御ユニットやバッテリーを配置するプラットフォームを新開発し、Hondaらしい、軽快で気持ちの良い走りを実現しており、ガソリン車にはない、新しい走りの世界を創造するクルマに仕上がりつつある。
  • さらなる実用燃費の向上に向けて、エコ運転を支援する機能など、様々な技術を投入し、運転した時に、お客様に燃費の良さを実感していただけるクルマとした。
  • さらに、システムの基幹部品である制御ユニットやバッテリーの小型化、モーターの薄型化、モーターの生産設備や作り方を進化させ、軽量化とともに大幅なコストダウンを実現した。
  • 例えば、鈴鹿製作所にモーターの新しいラインを増設し、各生産工程の高速化や、自動化率の向上などにより、既存のラインに比べ、時間あたりの生産量を2倍以上に向上させていく。
  • 新ラインは、2008年末、稼働開始予定。既存ラインの7万台と合わせた年産能力は、25万台へと増強される。さらに、将来の需要拡大に対しても、増産が可能な体制としている。
  • このような総合的な取り組みにより、商品だけでなく、お客様に経済的メリットで合理的に選択していただけるような、よりお求めやすい価格を実現させていく。
  • 同時に、ハイブリッド車が、ビジネスとして健全に成立する体制の構築が可能になると考えている。
  • 「新型ハイブリッド専用車」は、2009年初めに日本、北米、欧州で発売し、全世界で年間20万台の販売を見込んでいる。
  • その後は、CR-Zをベースとした新型スポーツハイブリッド、シビック ハイブリッド、そしてフィットにもハイブリッドを追加し、スモールクラスでのハイブリッド車の販売を拡大していく。
  • これら4モデルを合わせると、年間の販売台数は50万台程度になると考えている。

次世代燃料電池車:FCXクラリティ

  • 走行中にCO2を全く排出せず、化石燃料を使わない燃料電池車は、地球のために必須な技術である。Hondaはその普及に向け、着実に取り組みを進めている。
  • 「FCXクラリティ」は、燃料電池車として、ゼロから専用設計し、世界をリードする次世代の燃料電池車。
  • 米国では2008年7月より、国内では2008年秋にリース販売を開始する。
  • 日米合わせた販売台数は、年間数十台、3年間で200台程度になるものと考えている。
  • また、環境先進技術のショーケースとなる北海道洞爺湖サミットに、「FCXクラリティ」を提供する予定。

 Hondaの強みである二輪事業の強化、競争力の源泉である日本のものづくりの革新、そして、本格普及に向けたハイブリッド戦略は、お客様の期待を超える商品や喜びを創り出し、将来もHondaがグローバル規模で成長するための力となる。
 この10次中期計画では、それを日本の力を中心として着実に進めていく。
 2008年5月29日に、新型ミニバン「フリード」を発表する。フィットに続き、この「フリード」で販売を加速させ、国内市場の活性化を図っていく。

以上