本田技研工業(株)は、2サイクルエンジンの燃費の大幅な向上と、排出ガス中のHCの提言及び、出力特性の向上を図った画期的な「AR (Activated Radical)*燃焼エンジン」をスリムな車体に搭載し、不整地走行から郊外のツーリングまで幅広い用途で力強く、軽快な走りが楽しめるランドスポーツバイク「ホンダ CRM250AR」を’97年1月24日よ り発売します。
CRM250ARに搭載の「AR燃焼エンジン」は、2サイクルエンジンの省エネルギーや環境問題に対応する技術として開発したもので、常用域ともいえるアクセル開度が小さい低負荷域での不整燃焼を克服することで、燃費を32%向上(当社製品比較値、60km/h定地走行テスト値)させ、スムーズでレスポンスに優れた出力特性を実現するなど、2サイクルエンジンの総合性能を一段と高めたものです。
車体は、新形状のヘッドライトバイザーやツートーンのシートの採用で、より精悍さを高めるとともに、前・後のサスペンションのセッティング変更を施すなど、細部の熟成を図り不整地での走破性を一段と高めている。
- *ARとは、活性された遊離基で化学的に反応が起こり易い状態の分子構造。
販売計画台数(国内・年間)
4,000台
メーカー希望小売価格
479,000円
(地域希望小売価格の一例:北海道は15,000円高。沖縄は9,000円高。その他一部の地域を除く。)
(参考価格。消費税を含まず。)
CRM250ARの主な特徴
総合性能を一段と高めた新開発のAR燃焼エンジン
軽量・コンパクトな水冷・2サイクル・単気筒・AR燃焼エンジンは、ボア(内径)を従来モデルのCRM250Rに比べ0.4mm拡大し、排気量を249cc(従来モデル246cc)にアップしている。また、AR燃焼をコントロールするスロットル開度センサーを備えた新採用の「PGMピストンタイプキャブレター」は、サブリードバルブの装着によって、低速域から高速域まで優れたレスポンスを発揮させています。
画期的なAR燃焼システムの採用や、細部の熟成を図ることで、次の効果を得ています。
- 1.燃費性能の大幅な向上
従来モデル(CRM250R)に比べ32%の向上を実現。
27.3km/l → 36.0km/l (60km/h定地走行テスト値) - 2.エミッション性能の向上
排気ガス中のHC(炭化水素)を約50%低減させています。 - 3.ドライバビリティの向上
主に低・中回転域における出力特性の向上によって、不整感の無いスムーズでレスポンスに優れたドライバビリティを実現しています。
その他の変更点
- ・ディスク材の変更とプレートの肉厚のアップにより耐久性を高めたクラッチ。
- ・軽量のアルミキックアームを採用。
- ・メイン/カウンターシャフトのスプラインの変更で、よりスムーズなシフトフィーリングを 実現。
不整地での走破性を一段と高めた車体構成
フレームの剛性を高めるとともに、前・後のサスペンションは、減衰力特性の変更や細部の熟成を図っています。
フロンとサスペンションは、エアバルブを新たに装着。リアサスペンションは、ストロークをアップ(98mm → 101mm)することで、悪路での様々な走行に対応できるものとしています。
使い勝手の向上とともに精悍さを高めたデザイン
ヘッドライトの光量をアップ(35/36.5W → 55/60W)することで、夜間などでの視認性を高めるとともに、新形状のヘッドライトバイザーが精悍なフロントマスクを演出しています。
車体色は、ワークスモトクロスマシンをイメージさせたロスホワイトと、アグレッシブなイメージをもたせたリノバイオレットの2色を設定。車体色にマッチしたツートーンカラーのシートがより精悍さを際立たせています。
価格は、AR燃焼エンジンの採用や各部の熟成を図りながら、従来モデルに比べ1万円高に押さえることで、幅広いユーザーの要望に応えられるものとしています。
AR燃焼の原理
2サイクルエンジンの常用域ともいえる低負荷域(アクセル開度が小さい)での不整燃焼改善の研究をすすめた結果、シリンダー内の残留ガスと新混合気を積極的に混ぜ、残留ガス中の遊離基(Radical)を利用して自己着火を発生させることが最も効果的な手法であるとの結論を得ました。
従来から2サイクルエンジンの自己着火現象(点火プラグによらない着火)は、イグニッションスイッチを切ってもエンジンが回り続ける「ラン・オン現象」等として知られていましたが、これまでは、この自己着火現象を止めるための研究が行われてきました。
AR燃焼は、この自己着火現象を出来るだけ幅広い範囲で発生させ、かつ自己着火の着火タイミングを制御することで、不整燃焼を克服する革新的な燃焼方法です。
AR燃焼の状態では、燃焼室内の無数の点で自己着火が発生するため、燃焼効率が高く、また通常不整燃焼が問題となる低負荷域でも失火は発生しなくなります。
自己着火の着火タイミングの制御は、排気ポートに設けた「ARCバルブ」で行われます。
このARCバルブは前のサイクルの残留ガスをシリンダー内にとどめて、開始時のシリンダー内圧力を制御して、着火タイミングを変えています。
主要諸元
通称名 | CRM250AR | |
車名・型式 | ホンダ MD32 | |
全長×全幅×全高 | (m) | 2.195 × 0.825 × 1.215 |
軸距 | (m) | 1.460 |
最低地上高 | (m) | 0.320 |
シート高 | (m) | 0.895 |
車両重量/乾燥重量 | (kg) | 127 / 114 |
乗車定員 | (人) | 2 |
燃料消費率(km/l)60km/h定地走行テスト値 | 36.0 | |
最小回転半径 | (m) | 2.3 |
エンジン型式 | MD32E(水冷・2サイクル・単気筒・クランクケースリードバルブ) | |
総排気量 | (cm3) | 249 |
内径 × 行程 | (mm) | 66.4 × 72.0 |
圧縮比 | 6.7 | |
最高出力 | (PS/rpm) | 40 / 8,000 |
最大トルク | (kgm/rpm) | 4.0 / 6,500 |
キャブレター形式 | PE1A | |
始動方法 | キック式 | |
点火装置形式 | CDI式マグネット点火 | |
潤滑方式 | 分離潤滑式 | |
潤滑油容量 | (L) | 1.2 |
燃料タンク容量 | (L) | 11 |
クラッチ形式 | 湿式多板コイル・スプリング | |
変速機形式 | 常時噛合式6段リターン | |
変速比 | 1 速 | 2.538 |
2 速 | 1.764 | |
3 速 | 1.400 | |
4 速 | 1.090 | |
5 速 | 0.909 | |
6 速 | 0.807 | |
減速比(1次/2次) | 2.600 / 3.000 | |
キャスター(度)/トレール(mm) | 27°35' / 113 | |
タイヤサイズ | 前 | 3.00-21 51P |
後 | 4.60-18 63P | |
ブレーキ形式 | 前 | 油圧式ディスク |
後 | 油圧式ディスク | |
懸架方式 | 前 | テレスコピック式(倒立タイプ) |
後 | スイングアーム式(プロリンク) | |
フレーム形式 | セミダブルクレードル |